大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
NVIDIAのMellanox買収とインターコネクトをめぐる動向(2/2 ページ)
余談だが、Starboard Value LPは2017年に同社の株を10.3%ほど買い占め、その後に企業価値を損ねているとして取締役の刷新を主張。6月に和解に至るものの、この騒ぎはかなり同社の体力を奪ったようで、それもあってWaldman氏は安定した買収先があれば、それでも良しという判断に傾いたようだ。
NVIDIAの思惑は……
さて一方のNVIDIA。同社はGPUが主軸であり、PC Gamingのマーケットではトップシェアとなるほか、HPC向けのアクセラレータと、特にAIにおけるTraining(学習)の分野では支配的なポジションを確保している。問題はそのAIの今後である。
上に示す図1は2018年3月のNVIDIA Investor Dayにおけるスライドからの抜粋で、今後もTraining/Inferenceのマーケットがどんどん増加しているように読み取れるのだが、2018年5月にBarclays Researchの出した予測がこちらの図2だ。
Inference、つまり推論については順調にマーケットが拡大しているが、NVIDIAの独擅場ともいえるTrainingは売り上げが頭打ちになるとしている。実は図1も、実際には毎年のようにGPUの演算性能が上がる(今年のGTCにおける基調講演の中で、2020年にローレンス・バークレー国立研究所に納入されるPerlmutterと呼ばれる新しいスーパーコンピュータに、現行のVoltaの4倍の性能のGPUが搭載されることが明らかにされている)事を考えると、演算性能そのものは上がっても売り上げとしては横ばいに近くなるのは理にかなっている。
もちろんTrainingだけでおおよそ7億ドル近いマーケットは確保されているわけだが、Inferenceの方は市場も伸びるがTrainingほどNVIDIAが独占できるわけではない(というか、競合が山の様に存在する)わけで、ビジネス的に言えばちょっと頭打ちになることが予測される。こうなってくると、NVIDIAがMellanoxを傘下に置くことで売り上げをさらに増やしたい、と考えるのも無理はない。しかもMellanoxのInfiniBand事業は、NVIDIAのサーバ向けGPUとターゲットが非常に近い(というか、かなりかぶる)から、相乗効果も期待できる。
そんなわけで今回の買収はNVIDIAとMellanoxの両社にとってはWin-Winな関係であったが、問題はこれまでMellanoxをシステムのインターコネクトとして利用してきたメーカーだ。この中にはNVIDIAの競合メーカーであるAMDとか、競合はしていないにしても別に仲は良くないArmベースのSoCを開発しているメーカー、それとIntelのプロセッサをベースにシステムを構築していたベンダーが含まれる。実は特定ベンダーに依存しないインターコネクトとしてGen-Zと呼ばれるものがあり、これを進めるGen-Z Consortiumが2016年に設立されている。この設立メンバーにMellanoxも含まれており、実際Gen-ZのベースがInfiniBandになるのは事実上の既定路線だったわけだが、今回の買収でこの当たりの未来が突如不明瞭になってしまったのが最大の問題といえる。
NVIDIAはMellanoxの買収に当たり、既存の経営チームと製品ラインアップはそのまま維持するとしているが、今後の動向まで変わらないと保証しているわけではない。それもあって、今後方針が変わった場合に備えて、水面下でInfiniBandに代わるソリューションを関係各社が慌てて探し始めているのが昨今の動向である。
ちなみにインターコネクトでいえば、InfiniBandはいわばラック間、あるいはラック内のシャーシ間のインターコネクトであるが、シャーシ内のインターコネクトとしては、やはりオープンスタンダードなCCIXという規格がある。こちらは2016年にCCIX Consortiumが設立され、ここが仕様策定に努めてきた。既に昨年からCCIXを実装したシリコンも出荷されており、今年あたりから本格的に普及を開始する予定であるが、ここにIntelが突如としてCXL(Compute Express Link)なる「よく似た別の規格」をぶち当ててきた。この3月にはCXL Consortiumも設立されている。幸いというか不幸にもというか、CXLの方はPCI Express Gen5をベースとしているので、早くても来年(2020年)までこれを利用できるシリコンが存在しない(CCIXはPCI Express Gen4ベースなので、今年出荷の量産製品に実装される予定)ので、直接対決はちょっと先の事になるが、何というかこの手の争いの種は消えないものである。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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