製造現場のIoT活用を成功に導く5つのポイント(4)
工作機械とクラウドをどうつなぐ? 製造業IoTで考慮すべき「通信」について(1/2 ページ)
IoTコンサルタントとして、主に製造業でのIoT導入を支援してきた筆者の経験を踏まえ、工場(製造現場)におけるIoT導入を進める上で「まず考えておくべきこと」や「気を付けておきたいポイント」などを詳しく解説する。連載第4回は、工場内の各機器とクラウドサービスなどをつなぐ「通信」について取り上げる。
前回は、IoT(Internet of Things)の取り組みの中で、データ処理のキーとなる「クラウドサービス」と「エッジデバイス」にフォーカスし、解説しました。
今回は、工場現場の各機器とクラウドサービスなどをつなぐ「通信」について取り上げたいと思います。
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通信方法をどのように選定すべきか?
工場内の工作機械などとクラウドサービスをネットワークでつなげようとした場合、どのように通信方法を選定すべきでしょうか。
取り得る手段もさまざまありますし、会社や現場によって環境なども異なるため、“ベストプラクティス”は決められませんが、基本的には以下の3点について把握および検討し、総合的に選定することになります(図1)。
- 通信経路
- 通信プロトコル
- 制約条件
以下、IoTシステムでよく利用される経路やプロトコル、そして選定に際しての考慮すべき事項について詳しく紹介していきます。
通信経路
工作機械やエッジデバイスがクラウドサービスと通信するには、通常、工場内のネットワークを介し、工場から先のネットワークに接続することになります。
この通信経路に関して、工場内のネットワーク(LAN側)と工場から先のネットワーク(WAN側)に分けて解説したいと思います(図2)。
LAN側
工場内の機器を有線または無線で接続してLANを構築、利用することが考えられます。
新規に有線LANを敷設する場合、工作機械の設置場所までイーサネットケーブルを引き回す必要があります。無線LANであれば配線はかなり削減できますが、周辺で発生する電波による通信ノイズがあるかどうかを、あらかじめ確認すべきでしょう。
既に有線/無線LANが敷設されている場合でも、確認すべきことがあります。それは、工作機械などを接続することにより、これまでそのLANで行われていた正常な通信を阻害しないか? という点です(逆にいえば、新たに接続する工作機械などが必要とする通信帯域を十分に確保できるか? という点です)。
WAN側
工場から先のネットワークとしては、インターネット網か、あるいは専用線サービスによる閉域網を利用することになります。
日本の製造業企業では、工場からインターネット網への接続がセキュリティポリシー上許可されないケースが多く見られます。その場合は、専用線による閉域網を介して(インターネット網を介さずに)クラウドサービスに接続する方法を検討する必要があります。
LANに接続せず、WANに接続する
工場内にLANを構築せず、工作機械を直接WANに接続する方法もあります。
1.携帯通信網を経由させる
3GやLTEに対応した通信アダプターなどを利用し、携帯キャリアが提供する通信網を介して、インターネット網または閉域網に接続する方法です。
昨今のエッジデバイスの中には、データ通信用のSIMを用い、携帯キャリアの通信網を介してクラウドサービスと通信できるものもあります。
3GやLTEの電波が工場内に届いていれば通信できるため、LANの敷設が不要です。ただし、通信アダプター単位で携帯通信の契約が必要となります。また、IoT向けのSIMは、通信量に応じた従量課金で、通信帯域が狭い(通信速度が遅く、大きなデータを送るのに時間がかかる)ことが多いため、SIMの選定には注意しなければなりません。
2.LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク通信を利用する
電源や有線LANの配線が難しく、電池駆動させたいセンサーのデータを収集するような場合、無線LANや携帯通信網による通信では電力消費量が大きく、適していません。また、そのようなセンサーを数多く設置するとなると、携帯通信網を使うにはコストの問題が出てきます。
そのような用途向けとして、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク通信が昨今注目を集めています。LPWA通信は、送信可能なデータ容量は小さいのですが、省電力(低消費電力)で広範囲通信が可能です。2017年ごろから、商用サービスが国内で提供され始めました。
LPWA通信と呼ばれるものにはさまざまな規格/サービスがありますが、アンライセンスバンドの電波を利用するものと、ライセンスバンドの電波を利用するものに大別されます(以下、枠内参照)。
(a)アンライセンスバンドを利用する規格
特定の出力以下であれば、無線局免許が不要な周波数帯を利用できます。Wi-FiやBluetoothで利用される電波の周波数帯もアンライセンスバンドですが、LPWAでは俗にサブギガヘルツ帯(日本では920MHz)の周波数を利用するものが多くあります。
無線局免許が不要であるため、通信キャリアでなくても屋内外に自由に無線機器を設置できる点が魅力です(※注1)。
※注1:無線局免許は不要でも、電波を発する機器は技術基準適合証明(通称:技適)を取得しておく必要があるのでご注意ください。
アンライセンスバンドのLPWA通信として代表的な規格には、LoRaアライアンスが推進する「LoRaWAN」や、Sigfoxが提供する「Sigfox」があります。
(b)ライセンスバンドを利用する規格
総務省の認可が必要な周波数帯域の電波を利用します。基地局の設置などは、認可された通信キャリアしかできません。
現在、LTE通信をIoT向けの仕様に拡張した規格が幾つか登場しています(3GPPという標準化団体が仕様を策定しています)。日本でサービス提供されている規格としては、「NB-IoT」(Narrow Band-IoT)や「LTE-M」(LTE Cat.M1)などがあります。
(参考)LPWA通信の注意点
LPWAの特長として、消費電力が少ないという点が挙げられます。乾電池で数カ月から数年間動作可能だとうたわれています。あくまで、通信による消費電力が少ないというだけで、接続するセンサー側の消費電力も気にする必要があります。また、通信頻度が多ければ、おのずと電池寿命も短くなります。
消費電力を少なくするために、1日の送信回数やダウンリンク通信(上位側から機器側への通信)に制限が設けられている規格もあります。通信頻度が多い場合や、クラウドサービス側から何かしらデータを送信する必要がある場合は、LPWAネットワーク通信を採用できない可能性があります。
また、LPWA通信は数~十数キロ離れていても通信が可能だとされています。現在、さまざまな環境で実証実験が行われ、実質的な通信距離の評価が進んでいます。
見通しの良い環境であれば、上記のような長距離通信が可能なようです。ただし、特にアンライセンスバンドのLPWA通信では出力を低く抑えているため、工場内でも四方が壁に囲まれたような環境では適さないかもしれません。実環境での通信距離および通信電波強度の確認を行うことをオススメします。リピーターといった機材を使用して、電波を中継する必要があるかも確認しましょう。
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