「つながらない」「遅い」は過去の話
パナソニックがB2Bで再び脚光を浴びる「HD-PLC」の利点を100周年イベントで解説(1/2 ページ)
創業100周年を記念して開催されたパナソニックの全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(会期:2018年10月30日~11月3日)の技術セミナーから、「工場がビルが今すぐネットにつながるマルチホップ通信対応『HD-PLC』」の講演内容をお届けする。
IoT時代のネットワークとして存在感を強める「HD-PLC」
「過去、家庭向けでは苦戦したPLC(電力線通信:Power Line Communication)だが、今日ではB2B向けの通信技術として生まれ変わり、IoT(Internet of Things)時代のネットワークとして“使える技術”になった」
そう強調するのは、パナソニックの全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日~11月3日)の技術セミナーに登壇した、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 ビジネスコミュニケーションBU 事業企画部 ドキュメント企画課 主幹 斉藤武靖氏である。
PLCとは、電力線を通信ネットワークとして利用する技術である。マスター/ターミナル装置をそれぞれコンセントに接続することで、電力線を用いたデータ通信が可能となる。パナソニックは2006年に家庭向けの「HD-PLC(高速電力線通信:High Definition Power Line Communication)」アダプターを商品化するなど、積極的にHD-PLCの普及活動に取り組んできた(第1世代)。しかし、当時はまだ技術的に成熟しておらず、Wi-Fi環境の急速な普及に押され、家庭内での利用においてその存在感は薄れつつあった……。
そんなHD-PLCが今、IoT時代のネットワークとして再び脚光を浴びようとしている。
イーサネットやWi-Fiの課題を補完する「HD-PLC」という存在
当初、家庭向けで思うような普及が見込めなかったHD-PLCだが、パナソニックは自ら音頭を取る「HD-PLCアライアンス」の参画企業らとともに、その普及発展に取り組みながら開発を継続。HD-PLCの性能向上やマルチホップ対応などを進め、技術に磨きをかけてきた。
現行のマルチホップ対応を果たしたHD-PLCは、理論値で最大240Mbpsもの高速通信を実現し、既存の無線通信の弱点を補完する存在として、工場やビルといったB2B環境での利用で特に引き合いが増えているという。また、既に第4世代目となる「HD-PLC Quatro」の商品化も秒読み段階と、パナソニックはHD-PLCを“IoT時代のネットワーク”として位置付け、その本格的な普及に向けて弾みをつけている。
「情報通信白書によれば、2020年になると世界400億台ものIoT機器がネットワークにつながるようになる。それに伴いネットワークを増強する必要があるが、課題もある。それはコネクティビティ、パフォーマンス、コスト、セキュリティである」(斉藤氏)
例えば、既存のWi-Fiは優れたネットワーク通信技術の1つだが、利用環境によってはつながりづらかったり、遅延が発生したりなどの課題がある。さらに、どれほど優れたネットワーク通信技術でも設置のための敷設コスト、通信コスト、維持コストなどの負担が大きければ普及はしない。当然、セキュリティ面でも情報漏えいやなりすまし、改ざんといったリスクを避けなければならない。「このようないくつかの課題があることから、たった1つの通信規格で全てを満足させることは難しい」と斉藤氏は述べる。
「HD-PLC」3つの利用メリット
こうした状況の中、既存の無線通信などが抱える課題に対して、パナソニックが1つの解決策として提案するのがHD-PLCである。斉藤氏は、HD-PLCが既存のイーサネットやWi-Fiの課題を補完してくれる理由(HD-PLCの利用メリット)を3つ挙げる。
1つは「省線化」だ。HD-PLCは基本的に既設の電力線を用いて通信を行うため、新規にネットワーク通信線の敷設工事などをする必要がない。そのため、省線化を実現すると同時に、配線などの敷設工事コストを大幅に削減できるという。「特に古いビルや工場などでは、新たに通信線を引く配慮がされていなかったり、電気配線図がなかったりするため、通常よりも工事費がかかるケースもある。HD-PLCであればそういった心配なしに利用できる」(斉藤氏)。さらに、省線化に関連し、機器や設備の内部配線としてHD-PLCを採用することで、部品点数を削減でき、メンテナンス性の向上にもつなげることができるという。
ちなみに、PLCは日本語で“電力線通信”と呼ばれるため、電力線のみでしか利用できないように思えるが、「実は、技術的には2本の線があれば通信可能。例えば、同軸線、ツイストペア線、電話線でも利用できる。また、交流だけではなく、直流に対しても信号を載せて通信することが可能だ」と斉藤氏は説明する。
2つ目のメリットは「無線通信の補完」である。例えばWi-Fiの場合、壁や床のコンクリート層によって減衰が発生したり、スチール棚や金属製の設備機器による電波の反射が起きたり、近年増加する無線機器の影響で電波干渉が発生したりなど、遅延やつながらないといった事象が発生する。「そうした際に、有線通信であるHD-PLCをうまく組み合わせて活用することで、従来無線で行っていた通信の数を減らし、電波干渉などを低減する効果が得られる」(斉藤氏)
そして3つ目が「長距離通信」だ。以前までのHD-PLCはマスター装置とターミナル装置1対1での通信しかできなかったという。また、接続可能な端末数も128台と大規模なビルや工場での利用には不足感が否めなかった。こうした課題に対し、パナソニックは「マルチホップ」と呼ばれる中継技術を開発し、マスター装置から送られてきた信号を、伝言ゲームのようにして後方のターミナルへと次々に伝えることを可能にした。なお、最大ホップ数は10で、数km先まで通信できる計算となる(1ホップ200mとすると、約2km先まで通信できることになる)。さらに1つのマスター装置に対して、最大1024台ものターミナル装置を接続できるという。「30秒に1回の頻度で通信状態をチェックするため、常に最適な経路を選択して信号を中継できる」と斉藤氏。
このように、HD-PLCにはいくつかのメリットがあるが、Wi-Fiに代表される既存のネットワーク通信を置き換える存在ではなく、他の通信の弱い部分(つながらない、遅いなど)を補完する形で、組み合わせて利用することを狙う。その際、メリットとなるのが既設の電力線を利用できる点にある。「大きな追加投資なしに、すぐに利用できるのはHD-PLCの強みといえる」(斉藤氏)
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