IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(9)
ソフトウェア品質向上のキモは「行動」にあり(5/5 ページ)
IoT時代では、仲間内で作り上げる品質だけでは不十分だ。すりあわせだけでは不十分である。品質に対する変数が多すぎ、それも未来に起こる変数が多いからである。これを計画的にしろ、アドホックにしろ、全てをすりあわせるにはコストと時間がかかりすぎる。しかし、だからと言って、品質の行動を起こさずに引きこもっていても仕方がない。行動こそが品質向上であることに変わらないからだ。
IoT時代にはすりあわせも高度化する必要がある。具体的には多種多様なすりあわせを階層化し、抽象度と対象を合わせて、すりあわせをする。デバイスごとにすりあわせをするのはいいことだが、木を見て森を見ずにならないためには、全体を俯瞰するために抽象度を上げたすりあわせも必要だ。これがIoT時代の品質行動のキモである。
IoT時代の品質のキモ
しかし、日本人は抽象度を上げたすりあわせを苦手とする傾向にある。同じ「システム」という単語を使っても、ある人は具体的なシステムイメージを思い浮かべ、別のある人は概念モデルのようなものを思い、ある人はサービス中心にシステムを認識する。その違いが分からず、数カ月を無駄にすることもあるだろう。だからといって具体化してしまうと抽象度が下がり、本当に必要な品質問題が認識できなくなる恐れがある。難しい問題である。
抽象度を高めたすりあわせは訓練で上達する。訓練には品質問題のディベートもいいだろう。夜を徹してのなぜなぜ分析もいいだろう。訓練を通して日本人も抽象的な議論をして、抽象度の高いすりあわせが行えるようになる。それがIoT時代には必要だ。
最後に品質行動の細かいことであるが、一番大切なキモを伝える。それは口頭だけで品質のすりあわせをしないことだ。必ず図で表現して、図をベースにして議論することだ。図はモデルであり、物事の本質を明らかにしてくれる。どこが同じでどこが違うのかを明確にしてくれる。これですりあわせが効率的に行え、品質向上がスピードアップされる。
究極の品質は「使われ満足される価値」を生み出すこと
この連載では、品質について各観点で抽象的なことから泥臭いことまでいろいろな粒度で眺めてきた。そこで連載の最後に究極の品質を見ていくことにする。
組み込み系品質の究極とは、まずはその製品が使われることであり、使った人に満足してもらうことである。逆に言えば使われないことが、品質における究極のダメ出しである。不満を持たれる方がまだマシである。究極の品質をもっと突き進めば、全ての人にいつでもどこでも使ってもらえ満足してもらえる価値の合計の最大値である。
このためには平均的な満足をなるべく多くの人に与える品質がいいのか、特定の人だけだが超特大の満足を与える品質がいいのか、いろいろな品質戦略がある。そして品質の戦略策定の答えは1つではない。戦略そのものも時間や状況に応じて変えていかなければならないだろう。
品質戦略が決まったとしても、次は品質戦術が問題となる。機能面を重視して多機能戦術を採用するのか、小気味いい操作感を売りにして操作性や性能効率性を重視した戦術を用いるのか。
その次には具体的な品質行動をどうするかと言う問題が立ちはだかる。戦略策定まではトップが行うにしても、戦術や具体的な品質行動は開発現場で行うことになるからだ。
組み込み系システムからIoTシステムになると、開発現場での判断がさらに重要になる。品質行動の「How」は現場が考え、それに従って行動しなければならない。開発現場こそがIoT時代におけるソフトウェア品質のキモであり、そのための啓蒙も育成も必要になる。これはトップが行動すべきである。
品質は永遠のテーマであり、また時間や状況に大きく依存するが、品質が満足を与える価値であるという本質を忘れずにこれからも品質向上のために行動していこう。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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