IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(9)
ソフトウェア品質向上のキモは「行動」にあり(4/5 ページ)
組み込み系品質のキモは「仲間」にあり
組み込み系開発はすりあわせ開発である。組み合わせだけでは十分でなく、どうしてもすりあわせが必要になる。アドホックなすりあわせか計画的なすりあわせかはプロジェクトや製品に依存するが、とにかくすりあわせが多い。このような中で品質のキモとなるのはすりあわせの「仲間」である。
組み込み系開発で使えるツールやフレームワークは、エンタープライズ系に比べれば貧弱である。組み込み系ではいまだに手作り感満載の開発風景をよく見かける。これが品質に悪い影響を与えている。つまり品質の優れたフレームワークやツールの導入は品質を向上させるが、それらは貧弱である。これらの導入という品質施策が使えない。
組み込み系のフレームワークも整備されつつあるが、まだ弱い。それは組み込み系がドメインに強く依存し、それぞれで作り方が異なるからである。一方、エンタープライズではサービス(機能)観点で見るとそれほど大きな差異がないので、実装も画一的にでき、フレームワークやツールの整備が進んでいるといえる。
しかし、組み込み系には一緒に手作りをする仲間がいる。一緒に仲間と苦労して作った特定用途のフレームワーク(いわゆるオレオレフレームワーク)とツールがある。これらは仲間内でしか使わないため、ドキュメントが整備されておらず、拡張性も低い。しかしそれらを作った仲間は近くにいる。ツールベンダーに電話やメールで問い合わせることなく、つぶやいただけで仲間が答えてくれる。
組み込み系開発が大規模化し複雑化すればするほど、そして時間が過ぎれば過ぎるほど、オレオレフレームワークはメンテナンスができず、やがて廃れていく。いつかはオレオレフレームワークを捨てなければならない日が来るが、それまでは仲間と一緒に苦労しながら品質を作り込むことができる。
すりあわせ、敵が多ければ味方も多い
組み込み系開発はすりあわせ開発である。メカやエレキ部門とのすりあわせ、ソフトウェア開発の中でもデバイス毎のファームウェアやデバイスドライバ、オレオレフレームワーク、アプリなどとのすりあわせが必要である。
隠れたすりあわせとしては、過去資産とのすりあわせという面倒なものもある。過去資産を作ったメンバーは大抵、偉くなっていて、すりあわせするときには神経を使う。プライドを傷つけずに欠点を暴き出し、これからの製品とすりあわせる。
こうしたすりあわせの中、文化が違えば議論がかみ合わず、やがて互いを敵視することも珍しくない。このような中で品質のことを考えて行動するのは面倒で、手元のスマホを見ながら、揺れる吊り橋を渡るようなものだ。双方に気を使える繊細な神経の持ち主か、双方を無視できる無神経さがなければ渡り切れない。
普通の神経を持つ人も安心してほしい。仲間がいる。すりあわせには敵も多いが味方もいる。そしてすりあわせで敵だった人もすりあわせが終われば味方になる。一緒に品質を考え行動する仲間が増えていく。すりあわせは仕様や技術だけでなく、人もすりあわせることになり、仲間を増やす原動力になる。
品質は神経質な問題である。品質には数多く特性があり、それらが絶妙なバランスで成り立っている。どれか一つが崩れたら、全体が崩壊する。一人の人間では品質は作れない。一人の天才ハッカーがいても、品質は大量の情報を扱う総合芸術であり、一人では完成しえない。品質とは仲間で作り上げるものである。
仲間で作り上げる文化を持つ日本人、そしてコダワリが異常に強い日本人、なぁなぁで済ませることができる日本人、これらが組み合わさって、世界に誇る日本品質を作りあげてきた。しかしこれも限界に来ている。
IoT時代になり、その「限界」がハッキリと見えてきた。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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