IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(7)
ソフトウェア品質は規則やテストではなく「ヒト」が作る(4/5 ページ)
組み込み系品質はヒトが作る
ここからは組み込み系に焦点を絞って、ヒトが組み込み系品質をどのように作るのかを見ていく。今まで見てきたものとどこに違いがあるのか、組み込みならでは問題があるのか。
組み込み系の職人気質
組み込み系開発に携わるヒトは職人気質である。もし自分は職人でないと思っても、周りの親方や同僚、見習いなどを眺めてみると、職人気質がまだ残っていることに気付くだろう。親方の親方はもっと職人で、職人気質を理解している上司も多い。このような世界では異常(職人気質)が正常になる。例えば、「コダワリ」という言葉にコダワリがあるヒトがいれば、きっと異常さは正常になっている。
IoTの時代になり、職人気質が品質に悪影響を与える時代になってきた。組み込み系は大規模になり、短納期になり、複雑になり、並行開発が当たり前になってきた。IoTのように多くのデバイスとITシステムがつながり、その上で不確定なデータや機能が縦横無尽につながる世界において、職人のコダワリは弊害でしかない。コダワリは変化を萎縮させ、IoTの楽しさを減速させる。時代は「職人の時代」から「組織への時代」へと変化している。
コダワリの職人とその弟子たちが組み込み品質を作る
しかしながら、職人気質が今までの組み込み品質を作り上げてきたのも厳然たる事実である。IoTも職人気質の世界から作られてきた。そしてこれからも職人とその弟子たちが品質を作り、その果たす役割は大きい。
コダワリを持たない職人は職人ではない。そして品質にコダワリを持つ職人は多い。どんなにコストが掛かってもだ。この職人のコダワリをどの方向に向けるのか、どのように昇華させるかが、組み込み系品質の鍵である。
追い求めるべき品質はバランスである。性能だけを追い求めるのも、拡張性だけを求めるのも、機能適合性だけを追い求めるのもダメだ。そしてこの品質バランスはシステムによって異なり、時代によっても異なる。現在はセキュリティ品質が重要視されているが、過去ではそうではなかった。そして未来ではセキュリティは当たり前になって、話題にされることもないだろう。
この品質バランスを第一に考えることが、職人やその弟子たちにできるのか。それを目指す方法にはどんなものがあるのか、革新が必要なのか。派生開発という過去のしがらみにとらわれる中で革新はできるのか。問題は山積している。
例えば、組み込み系ソフトウェア開発で問題になるものとして、タイミングの問題がある。多種多様なデバイスから来るイベント割り込みのタイミングとアプリの動作タイミングをどのように制御し調整するかの問題である。
職人たちはこの制御に血道を上げる。このときの品質作り込みはタイミング制御が及ぼす機能適合性や性能効率性になるだろう。タイミング制御で機能が不適合になったり、無駄な待ちが生じたり、最悪デッドロックになることを防ぐことに血道を上げる。
しかし他の品質特性についてはおろそかになる。おろそかと書いたが、最初から計画していて他の品質特性の優先度が低くしていたのであれば、問題はない。問題になるのは、無計画に品質特性の優先度を高くし、特定の品質を捨てていることである。
このように組み込み系開発で品質を考えると、職人を制御して品質を制御するヒトが必要になる。そのヒトは職人であるかもしれないし、そうでないかもしれない。しかし職人を理解し、職人からも信頼され、職人を制御できることが必要である。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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