SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2017 講演レポート|事例
エポック社が「シルバニアファミリー」の製品開発で実践する3Dモノづくり(2/3 ページ)
「Stratasys J750」導入の決め手とは?
試作の内製化がなぜ必要なのか、西野氏はあらためて次のように説明する。「玩具は、デザイン性が売り上げを大きく左右する。デザインレビューの結果、何度も試作修正や設計変更を繰り返していくと、全体のリードタイムがどんどん長くなってしまう。だからといって、それらを外部に委託してしまうと、情報漏えいのリスクや挑戦的なアイデアを具現化できないという問題が生じ、最も核となるモノづくりのノウハウが社内に全く残らなくなってしまう。それではまずい」(西野氏)。さらに、売り上げの70%近くを海外市場で占めるシルバニアファミリーは、厳しいグローバル競争に勝ち抜いていく必要があり、そのためには挑戦的なアイデアの具現化と迅速な意思決定が欠かせない。
また現場においても、サイズの大きなものだと社内の3Dプリンタでは造形できず、結局外部の加工業者に委託する必要がある。あるいは社内の3Dプリンタ/切削RPマシンでは造形物が単色であるため、その後、手作業による塗装が必要となってしまうなどの課題を抱えており、デザインの凝った製品(商品企画)が増えつつある中で「将来起こり得る事態が容易に想像できた」(西野氏)という。
このような状況を受け、経営陣は2016年初頭、西野氏に対して、こうした課題を解決できる大型3Dプリンタの導入を検討するように命じ、検討を開始した。
まず西野氏は、本格的な機種選定を始める前に、(シルバニア本部のニーズは把握済み)他部門でのニーズも把握すべきだろうと考え、聞き取り調査を実施。何が社内の優先事項なのかを整理し、それを踏まえた上で機種選定作業に臨んだという。「探し始めた当初はぴったりのものが見つからず、オフィスで利用可能でわれわれの要求に見合う大型3Dプリンタに出会うことができなかった」(西野氏)。そんなとき、Stratasysが36万色以上のフルカラー造形を可能にするPolyJet方式3Dプリンタの新製品としてStratasys J750を投入(関連記事:36万色フルカラーの第3世代マルチマテリアル対応「3Dプリンタ」国内販売開始)。入念な検証の結果、同社の多くの要望に応えることができると判断し導入を決めた。
「36万色以上のフルカラー造形が可能で、造形サイズも大きく、造形スピードも十分速い。また美しさの観点からも積層ピッチや解像度の数値に満足しており、これが100V電源で稼働する。ベンチマークの結果、最終製品スペックと同等レベルの試作品が造形でき、社内における意思決定の迅速化やリードタイム短縮に貢献できると判断した」と西野氏はStratasys J750導入の決め手について語る。
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デザインレビューの質が格段に向上、3Dモノづくりの成果を実感
Stratasys J750導入後、数カ月の成果として感じられたのは、デザインレビューの質のさらなる向上であるという。「成形品と同等の色、質感を再現した試作品を実際に手にして、デザインレビューが行えるようになった。従来の塗装を施した試作品では実現困難だった質感や光の透過加減まで、成形品と遜色のないレベルまで再現でき、実際、射出成形時に残るエジェクタピンの位置を確認しないと区別できないレベルにまで追い込んで、試作品の質を上げていった」(西野氏)。このかいもあって、「パッケージ撮影でこのまま使える」とパッケージデザイン担当者からも高評価を得ることができたという。
このように、商品企画の初期段階から完成品に限りなく近いモノを実際に手に取ることができ、プレゼンテーションやデザインレビューでの説得力が向上。特に、これまでのシリーズよりも細かな装飾や彫刻デザインなどが施されているシルバニアファミリー タウンシリーズでは、その効果を実感できたとする。高精度な加工であれば切削が適していると思うかもしれないが、着色時に塗料が彫刻デザインの溝に埋まってしまい、元の美しい彫刻デザインを忠実に再現できない。
またフルカラーの恩恵は大きく、デザインレビュー時に色の問題が発生した場合、即時検討し、翌日には再検討したカラーで再出力が行えるようになった。「短時間で彩色済みの試作品を作成できるようになり、数あるデザイン候補の中からえりすぐりのデザインを製品化できるようになった。製品と同等レベルの色と質感の再現により、家具やシルバニア人形を実際に配置して、トータルでのデザイン性を確認したり、遊びやすさを検証したりするのにも役立てられている」(西野氏)。ちなみに西野氏の個人的なお気に入りポイントは、クリアカラーの自在な再現力だという。「Stratasys J750であれば、手作業による彩色では難しいクリアカラーの表現を実現でき、それを繰り返し再現できる。これは非常に画期的なことだ」と西野氏は述べる。
彩色、色の塗り分けに関してはFreeformが活躍。これまで手作業による彩色では難しかった複雑な塗り分けなどを、Freeformを用いることにより立体塗り絵の感覚で3Dモデルに直接彩色できるようになった。「フルカラー3Dプリンタの導入でFreeformの使い方も変わった。3Dモデルに直接彩色して、それを3Dプリンタで造形する。これによりデザイン検討パターン数が増加。従来の手塗りでは2、3パターンが限界だったが、新方式では10パターン以上でデザインを検討できるようになり、よりかわいらしいデザインを数多く生み出せるようになった」(西野氏)。
同社ではStratasys J750導入前から、SOLIDWORKS上でレンダリングをしたものを活用してデザインレビューの質の向上を図ってきた。しかし、これでは画面上での(2次元での)確認から脱することができず、実際に手にとって形状や色を確認するためには、結局テストショットをどうしても待つ必要があった。「フルカラー3Dプリンタの導入により、ようやくSOLIDWORKSでレンダリングを施したデータを有効活用できるようになった。SOLIDWORKSおよびStratasys J750ではRGB値で色指定が可能なので、CAD上で指定した色をそのまま3Dプリントですぐに再現できる。設計構想段階からデザインレビューまでのデザイン工程を大きく変革することができた」と西野氏。
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