中小企業のためのIT活用のススメ(5)
現場を置き去りにしたITシステムの再構築、待っているのは“ダメ出し祭り”(1/2 ページ)
本格的な第4次産業革命の到来に向け、IoT活用への期待が非常に高まっている。この大きなビジネスチャンスをつかむべく、大企業を中心にさまざまな戦略、施策が打ち出されているが、果たして中小企業はどうすべきか? 第5回では、ITシステムの再構築の際に必ずやっておきたい“ユーザー部門との合意形成作り”について取り上げる。
現在、業務で使用しているITシステムの見直しを迫られている――。皆さんが勤める会社でもそのようなタイミングを迎えているかもしれません。
社内にIT部門があれば専門のシステムエンジニアが、IT部門がない企業であればコンピュータに詳しい社員が、その中身を検討中だと思います。今回は、そのようなITシステムの再構築のときに、必ずやっておきたい“ユーザー部門との合意形成作り”について取り上げます。
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1.十人十色
普段の仕事を電算化(IT化)することで、手作業よりも仕事が早く片付いたり、コスト削減につながったりしますが、ITシステムを導入する際のIT機能に関する考え方や印象は、人によってさまざまです。
特に、現行のITシステムの再構築ともなれば、エンドユーザーは既に現状の操作に慣れてしまっていますから、いくら新システムで便利な機能が増えるからといって、急に新システムへの移行に賛同してくれるとも限りません。また、システムの移行時期は現システムよりも新システムの方が、操作機能が煩雑であったり時間がかかったりすることもあります。
なぜ、新システムの方が現システムよりも価値があるのか、経営的なメリットや自分たちの働き方がどのように改善されるかなど、ユーザー部門の納得感のないまま一方的に新しい仕組みを押し付けても誰も賛同してくれません。
せっかく、自治体の助成や金融機関からの融資も受けながら構築したITシステムの投資が、残念な結果となってしまいます。部署や会社の大小を問わずエンドユーザーというのは本当に十人十色です。例えば、PLMやERPのように組織横断で取り組むような全社ITシステムであれば、ユーザー部門の関係者との合意形成作りは欠かせません。
2.エンドユーザーの意見を聞く機会はありますか?
以前、著者のところに某中小企業の設計データ管理システムのリニューアルに関する話があり、その際、同社のIT部門に所属するAさんと意見交換する機会を得ました。
Aさんは、社内で優秀なシステムエンジニアです。独学で情報処理技術を学び、コンピュータプログラミングが堪能で、ユーザー部門でも「コンピュータのことで困ったらAさんに」という状況でした。実際、約5年前にCADデータ管理とBOM(部品表)管理用のITシステムを導入した際も、Aさんが市販アプリを選定し、Aさん自らがカスタマイズしてシステム構築をしていました。しかし、そのシステムも間もなく最新ハードウェア環境に対応できなくなるので、この機会にリニューアルを検討しようとなりました。以下は、筆者とAさんの意見交換の様子となります。
筆者:ところでAさん、エンドユーザーとの業務ヒアリングはお済みですか?
Aさん:いいえ、その必要はありません。今の○○システムは、私が開発してきた業務管理システムですから、システム要件は全て私が理解しています。
筆者:……そうなのですか。では、ユーザー部門のお仕事で最近どのような問題点がありますか?
Aさん:現場の業務改善のことは私の役割ではありません。私の仕事は、老朽化したシステムの再構築をすることですから。
筆者:……エンドユーザーの現状の課題は確認されなくてもよいのですか?
Aさん:ええ、実際に話を聞いても、彼らはITの専門家ではないですし、私がITシステムの担当ですから。
筆者:……そういうことですか。
Aさん:はい。
筆者:確か貴社では今、海外事業の拡大で現地子会社との業務連携に取り組んでいますよね。ユーザー部門の課題は5年前と変わってきたということはありませんか?
Aさん:そういう事業部の方針は、私にはよく分かりません。私の役割は、老朽化している現システムを、まず新システムに置き換えることですから。
筆者:この機会に、ユーザー部門の業務の流れと新システムとの機能マッピングをされてみてはいかがでしょうか?
Aさん:ですから、そういうことにはタッチしないのです。
筆者:……そうですか。
Aさんと著者とのやりとりは、決して言い争いになったわけではありませんが、Aさんの考え方では、過去に構築したシステムの機能を、そっくりそのまま新システムに移行するだけで終わってしまいます。おそらく会社規模も考え、「あまり大掛かりに検討しなくてもいいだろう」という判断が働いたのだと思います。
ただ、5年前にシステム導入した当時と現在とでは、同社を取り巻く事業環境はかなり変化していますし、この機会にエンドユーザーが最近感じている心配事を確認してもよいのでは? という思いから筆者はAさんに話を持ち掛けたのです……。
IT部門がユーザー部門の業務内容について、あまり関心を示さないというケースは珍しくありません。しかし、導入するITシステムが会社にとって役に立つかどうか、エンドユーザーに率直な意見を聞くことが重要です。非常に当たり前のことをいっているように感じるかもしれませんが、これがなかなかできていないのが実情です。
もし、分からないことがあれば確認すればよいのですが、エンドユーザーの方も日々の仕事で忙しく、IT部門の質問に丁寧に耳を傾ける気持ちになれません。なかなか双方が歩み寄る機会がないのです。IT部門とは「ITのトラブル対応窓口」だと勘違いしているエンドユーザーもいるくらいです。
誰でも、自分の仕事をもっと効率良くこなしたいと思っているはずですから、ITシステムがどのように自分たちの会社の役に立つのかを、IT部門とユーザー部門がもっと一緒になって考えるべきです。では、何を接点に会話をしていけばよいのでしょうか。
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中小企業のためのIT活用のススメ
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