中小企業のためのIT活用のススメ(5)
現場を置き去りにしたITシステムの再構築、待っているのは“ダメ出し祭り”(2/2 ページ)
3.「業務プロセス」を共通の話題にしてみよう
導入するITシステムの機能が、エンドユーザーの仕事にうまくフィットするかどうかは、ITシステムを利用するエンドユーザーの業務課題をきちんと理解できているかどうかに依存します。しかし、一人一人の意見や要望を全て受け入れていたのでは、いくら予算があっても足りません。また、関係者全員の要求を全て満たしたからといって、それで仕事を合理化できるとも限りません。
では、どのような議論の仕方がよいのでしょうか。ITシステムは、あくまでも日常の仕事の流れ(業務プロセス)の中で使われる道具です。ピンポイントな問題点を解決するものと考えるのではなく、業務プロセスを通して大局的に問題点を捉え、それを解決するものと考えるべきです。
例えば、「SWIM LANE(スイムレーン)」という方法があります(図1)。これは、業務プロセスを左から右に、その業務にかかわっている代表的な登場人物を縦軸に置きます。水泳プールのレーンに似ていることからこのような名前が付いています。泳者がレーンに沿って、左から右へ泳いでいくような感じです。途中には、レーンをまたがった浮島があります。そこでは、登場人物同士が共同作業をします。右方向に泳ぐばかりではなく、左や上下に後戻りするルートもあります。いずれにしても、左から右に登場人物が協力して右端のゴールを目指します。例えば、PLMシステムであれば、営業、設計、製造の業務プロセスに対して、営業マン、設計者、製造技師などが登場人物といったところです。
SWIM LANEは、エンドユーザー部門で協力的な人に手伝ってもらいながら、ITシステムの導入担当の人が原案を起こします。そして、このSWIM LANEをたたき台にして、エンドユーザー部門のメンバーを招集した職場改善ミーティングを企画します。
中小企業の場合は、思い切って社長さんに話を持ち掛けてみてください。その際、ITシステムの再構築というテーマではなく、例えば「残業ゼロを目指した働き方改革のための意見交換会」のような経営課題を目的にしてください。そして、社長さんに号令を掛けてもらってください。正社員だけでなく、契約社員や学生アルバイト、主婦のパートさんらも参加者に加えてください。
たたき台のSWIM LANE図は、模造紙を4~5枚横長につなぎ合わせて会議室の壁に張り出します。そして、参加者全員がどの工程でどのような困り事があるかを吐き出してもらいます。5~6人で2時間ほど議論すると、おそらく50~100件のさまざまな種類の困り事が一気に収集できると思います。挙がってきた困り事は、その都度聞き取ったものを付せんにメモし、SWIM LANE上の該当する位置に貼っていきます(図2)。
参加者向けの事前作業として、連載第1回で紹介した「あるある課題リスト」を参考にアンケート風にして、あらかじめ5~6個選んでおいてもらうと、当日のミーティングがスムーズになると思います。
SWIM LANEの手法は、ほんの一例です。ポイントは、ユーザー側とIT側がコンセンサスを合わせる活動が必須だということです。これをおろそかにすると、ITシステム導入後に新システムの“ダメ出し祭り”となり、それも細かい機能修正ばかりで、導入目的の本質がすっかりどこかにいってしまいます。例えば、昭和の時代から品質管理の小集団活動として「QCサークル」という手法がありましたが、あの昭和のやり方はITシステム導入時にも応用できます。
もちろん、全ての仕事はITシステムで自動化できるわけではありません。いくら便利なIT機能があっても、多くの仕事は結局のところ手作業です。インターネットやCADソフト、ワープロやスマートフォンなど、どんなITアプリを使ったとしても、普段の手作業とITアプリとの組み合わせで成り立っています。SWIM LANEを活用し、エンドユーザーとIT担当者が業務改革の接点を見つける行為はとても意味があります。
現行のITシステムの再構築とは、働き方改革の手段の1つに過ぎません。まずは、皆で現状の業務課題を共有する場を設け、ユーザー部門の人々に「働き方を変えてみたい!」という意欲を持ってもらうことです。そして次のステップとして、ITシステムの再構築で期待する改善ポイントを見つけ出していくべきです。
4.1人で考えず、皆でワイワイしながら合意形成を!
ITシステムを再構築するのは骨の折れる仕事です。現システムの機能を継承する前提条件もあります。いろいろと市販のITツールのパンフレットを集めたり、最寄りのITソリューション企業に直接会って話を聞いたりする必要があります。
中小企業の場合、意外と社長さんの方が社員より発想が柔軟で、第4次産業革命の危機感もあるため、「いいよ、やってごらん」となることも少なくありません。
しかし、それで気を良くして、利用者の意見に耳を傾けないでITシステムの導入を決めてはなりません。実際、そのように強引に進めてしまうIT担当者が多いのも事実です。筆者も正直、若いころユーザー企業に勤めていたときはそうでした。自分が少々情報処理の知識があると、また前回のシステム構築の担当者だったりすると、どうしても自分1人で要件を設定したり、業務課題を思い込みで定義したりしがちです。ぜひ1人で考えずに、皆でワイワイしながら関係者との合意形成作りを大切にしてください。
さて、次回は本連載の最終回です。これまでの連載内容を整理しながら、仕事のIT化についての方向性をまとめたいと思います。(次回に続く)
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中小企業のためのIT活用のススメ
本格的な第4次産業革命(インダストリー4.0時代)の到来を前に、IoT活用への期待が非常に高まっている。この大きなビジネスチャンスをつかむべく、大企業を中心にさまざまな戦略、施策を打ち出しているが、中小企業はどうすべきか? 大変革の潮流に飲み込まれないために何ができるのか? そのヒントを提示する。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[デジタル化][デジタル変革][DX][電子化][データ活用][IT活用]
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