IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(6)
製造・検査設備の現場課題が、本来取り組むべき企業の差別化戦略を阻害している(2/2 ページ)
将来を見据えた装置の改変にも対応できるソフトウェアPLCを採用
半導体製造・検査装置で起こっているさまざまな課題を解決するソリューションとして、ハイバーテックでは、世界的な規格であるPLCopenによるモーションの機能体系をベースとすることで、モーションの使い勝手を共通化した「HCOS」シリーズを製品化し、2016年から提供している。HCOSは、動作検証済みのIPCにプラットフォームを入れ込んだ一体型のコントローラーである。HCOSを開発した背景には、人材不足で余計な手間を省きたいという要望や、保証期間の短期化で管理が大変になっていることなどもあるが、東日本大震災もきっかけになっているという。
伊東氏 ハードウェアの供給元を1社に限定していたことで、東日本大震災によりメーカーの工場が被災し、製造を一時ストップせざるを得ないという事態に遭遇したユーザーが多くあります。それ以降、ハードウェアを入れ替えてもソフトウェアを使って、作り替えられるような仕組みを作っておく必要があると考える企業が多くなりました。
筆者 最近ではモーターのインタフェースは多様化していますが、HCOSはそのような傾向に対応しているのですか。
伊東氏 はい、従来型のボード製品やUSBでつながる通信型のモーション製品、EtherCAT対応製品など、さまざまなインタフェースのコントローラーがありますが、いろいろなものを使った際に、お客さまにとっては、同じソフトウェアで使えるようになることが理想です。そこで、HCOSを開発するに当たり、ソフトウェアPLCの「CODESYS」を採用しました。
筆者 他にもソフトウェアPLCはあると思いますが、CODESYSの採用に至った最大のポイントは何だったのですか。
伊東氏 装置全体の基本的な流れを制御するような仕組みを、これまでユーザーは、改変のたびにほぼスクラッチから作っていたわけですが、実はかなりの部分が共通化でき、それらはCODESYSにほとんど含まれています。例えば、リアルタイムOSの設定や異なるメーカーのデバイスにアクセスするインタフェース、そしてモーションの基本動作などは、開発者がスクラッチで組み上げる必要はありません。CODESYSを利用することで基本部分の開発を共通化し、お客さまが本来固有に構築したい特殊機能の開発だけにリソースを割くことができるようになるのです。また、CODESYSには、先々必要となる機能を含めて全て包含されています。日本では、取りあえず、今必要なものだけを開発するという傾向にありますが、CODESYSのフレームワークは将来を見据えて設計されているため、将来どんな追加要求がきても柔軟に対応できるということです。新たな要求や特殊な機能は、CODESYSという共通プラットフォームに対していわゆる「ソケット」として開発することで、簡単に誰でもソフトウェアを拡張させることができます。ここが、大きなポイントです。
国内大手メーカーのPLCへの対応も見据えた取り組みを開始
ハイバーテックでは、これまで欧州を中心とした標準規格のインタフェースに対応するHCOSの展開に取り組んできたが、今後は国内の大手メーカー製のコンポーネントとの組み合わせにも対応することで、より多くのユーザーのニーズに応えることを目指している。
筆者 HCOSはより多くのユーザーニーズに対応するために、国内の大手メーカーが提供しているコントローラーとの接続も視野に入れているのですか。
伊東氏 はい、やはり国内の大手メーカーが提供するコンポーネントを使用しているユーザーの方は多くありますので、“メーカーに依存しない”というコンセプトを掲げている当社としては、さまざまなメーカーの機器類への接続を可能とすることを目指しています。近く、MECHATROLINKやSSCNETのようなフィールドネットワークにも対応した製品を開発する計画です。
今回は、半導体製造・検査装置の開発現場で起こっている課題にいち早く目を付け、装置開発企業が本来注力すべき、他社製品との差別化に集中できるよう、装置の制御プラットフォームと動作検証済みのIPCを一体化した製品の提供に取り組まれているハイバーテックの事例を紹介した。これまでの連載で筆者が指摘してきた“国内のガラパゴス化”に早くから気付き、業界の課題解決に向け、地道に活動した企業であることがお分かりいただけただろう。
著者紹介:
リンクス 代表取締役 村上 慶(むらかみ けい)
1996年4月、筑波大学入学後、在学中の1999年4月、オーストラリアのウロンゴン(Wollongong)大学に国費留学、工学部にてコンピュータサイエンスを学ぶ。2001年3月、筑波大学第三学群工学システム学類を卒業後、同年4月、リンクスに入社。主に自動車、航空宇宙の分野における高速フィードバック制御の開発支援ツールであるdSPACE社製品の国内普及に従事し、国内におけるトップシェア製品となる。2003年、同社取締役、2005年7月、同社代表取締役に就任。
同社代表取締役に就任後は、画像処理ソフトウェアHALCONを国内シェアトップに成長させ、産業用カメラの世界的なリーディングカンパニーであるBasler社と日本国内における総代理店契約を締結するなど、高度な技術レベルと高品質なサービスをバックボーンとした技術商社として確固たる地位を築く。次のビジネスの柱として2012年7月にエンベデッドシステム事業部を発足し、3S-SmartSoftware Solutions社の国内総代理店となる。(2016年10月現在)
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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