IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(2)
ガラパゴス化しつつある日本の製造業、つながらない設備機器(1/2 ページ)
本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
前回、「IIoT(Industrial IoT)」が製造業にもたらすメリットについて、具体的な国内外の取り組みを交えて解説した。IIoTの実現によるメリットは「第4次産業革命(Industrie 4.0)」と呼ばれるほど“革新的なものである”と期待されるものの、国内の製造業で用いられているコントローラーに目を向けると、その理想像からは懸け離れていると言わざるを得ない。今回は“ガラパゴス化”しつつある国内のコントローラー事情について解説するとともに、IIoTの実現を世界で最も積極的に進めている欧州のコントローラー事情と比較しながら見ていきたい。
IIoTとはさまざまなモノがつながることを意味しており、「つながる」を実現するためにはオープンテクノロジーがキーとなる。1社のメーカーが提供する機器だけでIIoTが実現できるような規模ではなく、複数のメーカーが提供する機器も含めてつながることが重要である。そのために、通信規格などを標準規格として定め、それらをどれだけ浸透させられるかが、今後「つながる工場」を構築できるかどうかを左右する。
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つながらないセンサー・アクチュエーターとフィールドバス
つながる工場といっても、「工場の中の機器をつなぐ」のと、「工場の外をクラウドを介してつなぐ」2つに大きく分けられる。ここでは、工場の中の機器をつなぐことに焦点を絞りたい。工場の外をつなぐIIoTの話の前に、工場の中ですらつながらない現状をお伝えする。
工場の中で利用される機器は、「コントローラー」「センサー」「アクチュエーター」の3つに大別される。センサーからの信号をコントローラーが受け取り、その条件に応じた演算処理を行い、アクチュエーターへ信号を出すことで実際に物を動かして自動化を実現しており、センサーとアクチュエーターはコントローラーへ接続されている。
例えば、ペットボトル飲料を製造しているラインを考えると、コンベヤーベルトを流れるボトルが特定箇所を通過すると、通過センサーがONとなりPLCに信号を送る。PLCはその信号を受けて時間のカウントを開始し、画像センサーのカメラに的確なタイミングでシャッターを切るよう指示信号を出す。画像センサーはボトルの印字などに不備がないかを検査し、OK/NGの結果をPLCに渡す。PLCはもし結果がNGであった場合は、アクチュエーター(モーター)に指示を出して不良品を排出する駆動をすることになる。
このセンサー・アクチュエーターとコントローラーとの間では、「フィールドバス」が通信として利用されている。1分間に数百個を処理しなければいけないような高速性と正確性が求められる製造ラインにおいて、フィールドバスが持つ“リアルタイム性”が欠かせないためである。フィールドバスとは、物理的(ハード的)な接続としてEthernetを利用するが、そこにプロトコル(ソフト)をどのように実装するかでフィールドバスの規格が変わってくる。簡単にいうと、フィールドバスとは機器をつなぐ通信規格と理解できる。
このフィールドバスにはさまざまな規格があり、昨今では乱立状態となっている。この規格はFA機器メーカーが自社の機器同士を接続するために開発し、その後で規格団体を設立して他メーカーとともに普及に努める形が広くとられている。この規格団体が行う普及活動の方針決定に関して開発元のメーカーの発言力が強いのは言うまでもないが、この団体の普及方針において通信規格をオープンにするか、しないかというのが重要な点となっている。通信規格をオープンにするというのは、規格を開発したメーカー以外も自由に、この通信規格に対応した機器を製造/販売できるということである。
規格をオープンにするということは、例えばA社が開発した規格(A規格)を、B社およびC社が採用して機器(コントローラー、センサー、アクチュエーター)を製造販売することになる。そうすると、ある顧客X社が「A規格を用いて工場内を統一したい」と宣言した場合、実際にはA規格を採用しているB社およびC社の機器だけが採用(購入)され、A社の製品は一切採用されない可能性がある。この場合、A社はこのプロジェクト(工場)からは利益を一切得ないこととなる。もしくは、従来A社の大口顧客であるY社が、A社の機器で構築した設備を更新する際に、新たなセンサーやアクチュエーターを追加しようとする場合を考える。オープンな企画となったために、それらの新規の機器をA社から買わず、B社やC社の機器を選定するという機会損失が発生する可能性がある。
これが、コントローラーメーカーが簡単に規格をオープンにできない理由である。特に市場シェアを既に多く獲得している企業ほど、オープン化に踏み込むのが苦しいことは容易に想像できる。新規に参入する“チャレンジ型の企業”の方が、「規格が浸透してしまえば、そこから数十パーセントでも自社の製品が採用されれば十分」といった考え方を持つことで、オープン化をドライブする意欲が湧く。また、メジャーなメーカーにとってオープン化は一時的に利益を落とす可能性があるため、視点が短期的になるとなおさらチャレンジする意欲がそがれる。「規格を浸透させてから利益を生む」という考え方は長期的な視点を必要とするため、これもまた決断にはかなりの苦労が発生する理由だろう。
日本では、さまざまな理由から比較的オープンではない通信規格が広く用いられており、オープンな通信規格が主流である欧米とのギャップが生じている。
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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