IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(1)
IIoTが実現する製造業の未来とそのメリット(1/2 ページ)
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
昨今、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」という言葉を見ない日はない――と言っても過言ではないほど、IoTに関する取り組みが各所で積極的に行われている。
IoTそのものは、ここ数年で民生やITの分野から盛り上がり始め、ドイツが取り組む「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」や米国が主導する「インダストリアル・インターネット(Industrial Internet)」といった言葉とともに、今日、産業分野、特に製造業の生産自動化の分野で注目を集めている。この産業分野に特化したIoTのことを、われわれは「IIoT(Industrial IoT)」と呼んでいる。
では、IIoTがなぜ産業界でこれほどまでに脚光を浴びているのだろうか? それは、製造業が抱える課題と、IIoTで解決できる課題がマッチしているからだ。
製造業の根幹は、高付加価値の製品を低コストで生産することにある。言うまでもないが日本の製造業は国際的にも非常に高いレベルにあり、製品の高性能化、またそれを高品質・安価に製造する技術で世界をリードしている。自動車メーカーであれば、製品開発において次々に燃費性能を更新し続けていることが挙げられる。さらに、製品を高品質・安価に製造するという面でも、国内から今や世界的に広がったトヨタ自動車の「カイゼン」のアプローチや、生産工程の自動化(ファクトリーオートメーション)も徹底して行われている。
そして、こうした自動車メーカーの高い自動化要求は、次第に国内ロボットメーカーにも向けられるようになり、日本国内のロボットメーカーは技術力に磨きをかけていくことになった。今や産業用ロボットの業界でも日本は技術力、シェアともに世界トップレベルにある。このように、日本の産業はさまざまな高い技術課題を国内の企業同士で切磋琢磨し、連携して解決することで、今日の国際競争力を獲得してきたのである。しかし、詳しくは後述するが、この“日本独自の高い技術力”が、一方で“国内生産設備のガラパゴス化”を引き起こす原因にもなったのだ。
◎編集部イチ押し関連記事:
» オムロンが示す「産業用ロボットの未来」――人との新たな協調、設備との協調へ
» スマート工場の実現を目指す国内製造業の要求に「シフトレフト」で応えるHPE
» スマート工場化を目指す川崎重工業が導入した高性能RFIDシステム
製造業がIIoT化するメリット、効果は?
IIoTがなぜ盛り上がっているのか? それは結局のところ、IIoTの技術がコスト削減と製品の品質・価値向上を可能にするからであり、これが“製造業の永遠のテーマ”とマッチするためである。しかし、それが具体的に何をもたらすのか、読者の中にはそれがまだぼんやりとしている人たちもいると思う。そこで、幾つかの具体例を以下に挙げてみることにする。
最近よく耳にする言葉として、「予兆保全」という考え方がある。これまで生産設備のメンテナンスや部品交換は、決められた耐用年数に応じてなされていたか、あるいは製造の最後の最後で実施する品質検査において、製品の不良が発覚することで設備の不具合が見つかり実施されることもあった。これを、設備機器の動作状況をセンシングすることで故障の予兆を検知し、部品が壊れる直前に設備のメンテナンスを実施して、当該部品を交換するという考え方が予兆保全である。
ファクトリーオートメーションでは、ライン停止を避けることが優先されるため、余裕を持って各設備部品の耐用年数を短めに設定することが少なくない。しかし、この耐用年数の余裕は、全てコストとして考えられる(壊れていないのに交換するのでその分は企業にとって損でしかない)。もちろん、製品の不良が発覚してから設備をメンテナンスするようでは、それこそ多くの損を生んでしまう……。
こうした現状の課題に対し、IIoTで予兆保全の仕組みを構築することができれば、例えば全世界の工場の稼働状況を集中センターでモニタリングしながら、「そろそろ中国の福建省で稼働する8号機の金型を交換するように」といったことが可能となる。
では、製品製造の歩留まり向上に関してはどうだろうか。食品の製造現場を例に挙げると、煎餅を製造するに当たって「容量10g」と包装紙に記載すると、それ以下で製造された煎餅は不良ということになる。そのため、煎餅の最終段階で重さを量り、それが10gに達していない場合は、不良として破棄される。製造側としては、多くの不良を出さないように、10gで済むところ12gで製造するよう余裕を持たせた重さを製造の基準値とする。この余裕は全てコスト、つまり損と考えられるが、各製造過程において具体的にどんなことが起こっているのか把握できずに製造している現状において、製造の重さの基準値に余裕を持たせる以外に改善方法が今のところ存在しないのだ。また、オーブンで焼いた後の焦げやひび割れなどについても、なぜその事象が起こっているのか、全てを把握しているとは現時点ではいえない。
そのため、それぞれの不良や容量不足がどのように発生するのかを解析するべく、それぞれの製造過程に多くのセンサーを設置してデータを集める動きが加速している。ある不良の原因が解明できれば、それを生産設備の設定値としてフィードバックする、もしくは最終製品(煎餅)の容量を適切にするために、リアルタイムに設備へフィードバックする(材料充填(じゅうてん)量を増やす/減らす)ことが可能となる。
IIoTの活用はこうしたコストダウン(損を回避)だけでなく、トレーサビリティの実現においても重要視されている。人体に影響を与える医薬品などは、それがいつどこで、どの製造ロットで製造されたのかといった情報だけでなく、生産設備の状態(センサーのON/OFF、モータ速度など)までも、全ての製造物に対してひも付けてデータ管理することが義務付けられている。それは品質不具合の対象製品を検出するためのものではなく、製造物全てに対してトレースバックできるようにすることが目的である。こうなると、医薬品の製造設備に設置されたセンサーやアクチュエーターの全ての状況(情報)を、医薬品の一個一個に対して保存する必要があり、そのためには全ての機器がネットワークにつながっていることが必須となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー