IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(4)
パラダイムシフトの時が来た! IIoT時代の生産設備の保守・管理は劇的に変化する(1/3 ページ)
「IIoT(Industrial IoT)」を実現させ、新たなモノづくりを創造するためには、現状の工場の仕組みを大きく見直す必要がある。今回は、生産設備とITの融合によって起きる生産設備の「保守・管理」の劇的な変化と、生産設備に対する考え方のパラダイムシフトについて取り上げる。
前々回は、コントローラー、アクチュエーター、センサーを接続するフィールドバスが標準化されていないため、1社のメーカーに全ての機器を依存する日本の現状を解説した。そして前回は、生産設備の制御をつかさどるPLCのプログラミング部分で「ラダー言語」に大きく依存している日本の実情を解説し、既に標準規格へ移行し大きく進んでいる海外勢との差について確認した。これらの内容はいずれも、「IIoT(Industrial IoT)」を実現させて新たなモノづくりを創造することを目的に執筆したもので、そのためには「まず現状の工場の仕組みを大きく見直す必要がある」というものであった。
今回は、生産設備とITの融合によって起きる生産設備の「保守・管理」の劇的な効率向上と、そのために求められるわれわれの生産設備に対する考え方のパラダイムシフトについて解説する。
連載第1回で解説したように、予兆保全やマスカスタマイゼーションといった、IIoTによる新しいサービスばかりが脚光を浴びているが、それらの手前にもっとIIoTを採用することによって得られる現実的なメリットがある。それが保守・管理の効率化だ。生産設備のシステムは、ますます複雑で大規模なシステムになっていて、運用・保守にも大きなコストを必要としている。保守・管理を効率化し、新しいイノベーションにリソースを投入できるようにしなければ、第1回で解説したようなさらに大きな効果を生むIIoTの実現は果たせない。
クラウドサーバで生産設備の運用・保守を効率化
先日、ドイツの3S-Smart Software Solutionsが「CODESYS Automation Conductor」というサービスを発表した。同社が開発するCODESYSは、汎用CPUと組み合わせることで産業用コントローラーを簡単に構築でき、これまでに全世界で400社以上のコントローラーメーカーを輩出し、年間100万本以上のライセンスを出荷するソフトウェアPLCである。そして今回新たに発表されたCODESYS Automation Conductorは、まさにITを生かして設備の運用・保守を実現するためのサービスである。
CODESYS Automation Conductorの概念を図1に示した。既存のPLCなどの製品群を束ねる形で上位にクラウドサーバが追加される。
クラウドサーバには、工場内のPLCに関連するさまざまな情報が集約され、保守・管理を効率化するさまざまな目的に活用される。例えばこの機能の1つに、開発プロジェクトをクラウドサーバに集中一元管理するものがある。これにより、生産設備のプログラム作成が「誰でも」「いつでも」簡単に可能となる。
具体的に解説しよう。生産設備を立ち上げるためにPLCのプログラミングをする際、開発者(Aさん)のノートPCにPLCプログラミングのための開発環境やライブラリをインストールし、プログラムが完成したらPLCにそれをダウンロードして、設備を稼働させるといった形式がとられている。ここでは例として、Aさんは3つの設備向けにそれぞれ異なるプログラム(App_A、B、C)を作成し、PLC(PLC1、2、3)ごとにダウンロードして設備を稼働させた。また、それぞれに利用したソフトウェア環境は、App A:Version 2.1、App B:Version 2.5、App C:Version 3.0とする。
まず、何らかの故障もしくは仕様変更により、プログラム改修を行いたい場合、Aさんは各PLCが設置された場所に足を運び、そしてノートPCにはそれぞれのプログラム(App_A、B、C)と、それぞれ該当するバージョンの開発ソフトウェア(Version 2.1、2.5、3.0)をインストールしておく必要がある。しかし、この概念自体が将来的には古いものとなる。クラウドサーバを用いると、プログラムやデータだけでなく、開発ソフトウェア自体もサーバに存在するため、AさんはノートPCさえあればPLCの改修がすぐに行えてしまう。
実は、この考え方はITの世界では常識になりつつある。例えば、電子メールを書く際にGmailを利用すると、メール(データ)だけでなくメーラーのソフトウェア自体(Gmail)もサーバで動いていることが理解できる。つまり、該当するソフトウェアのバージョンがどれかなど意識する必要がなくなるのである。これと同じことがPLCの世界でも起きようとしていて、これまで常識として考えられたことが劇的に変化する、つまりパラダイムシフトが起ころうとしているのである。もちろん、PLCが設置された場所に足を運ぶ必要もなくなる。
また仮に、Aさんが部署異動や退職により担当を離れてしまうことも起こり得る。もちろん、通常はAさんが離れる前にプログラムを後任者(Bさん)へ引き継ぐため、プログラム資産は伝承される。しかしBさんにとって、どのプログラムがどのPLCで稼働しているのか、またプログラム開発時の開発環境やライブラリのバージョンはいくつなのかといった事細かな情報まで把握することは困難である。そのため、既存設備のプログラム改修を行おうと思っても、なかなかスムーズにいかないのである。
CODESYS Automation Conductorが提案するのは、プログラム、ライブラリなどの開発プロジェクト一式をクラウドサーバで一元管理する方法である。PLCへプログラムをダウンロードする際にも、開発者のPCから直接ダウンロードするのではなくクラウドサーバからダウンロードをすることで、どのPLCでどのプログラムが動作しているかをクラウドサーバで一元管理することが可能となる。これにより、数年前に前任者が作成したPLCプログラムであっても、簡単に保守が可能になる。
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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