IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(6)
製造・検査設備の現場課題が、本来取り組むべき企業の差別化戦略を阻害している(1/2 ページ)
「IIoT(Industrial IoT)」を実現させ、新たなモノづくりを創造するためには、現状の生産設備の在り方を見直す必要がある。今回は、ハイバーテック 代表取締役社長の伊東健氏と筆者との対談を通じ、日本が目指すべきモノづくりへの取り組みについて紹介する。
これまで、コントローラーやアクチュエーター、センサーを接続するフィールドバスが標準化されていないため、工場内の全ての機器が1つのメーカーに依存している日本の現状や、生産設備の制御をつかさどるPLCのプログラミング部分で「ラダー言語」に大きく依存し過ぎている実情について紹介してきた。また、生産設備の「保守・管理」の効率を向上させるために求められる生産設備に対する考え方のパラダイムシフトについても解説した。いずれも、新たなモノづくりを創造する「IIoT(Industrial IoT)」の実現を目的に執筆してきた内容である。
今回は、PCベースのコントローラーに特化した分野で独自路線を貫きながら、多くのユーザー企業の課題解決に取り組む、ハイバーテック 代表取締役社長 伊東健氏に話を聞いた。
ハイバーテック 代表取締役社長 伊東健氏の主な経歴
電気通信大学 機械制御工学科卒業後、工作機械メーカーに入社。金型加工機の輪郭制御NCなどを開発する中、NC制御機器メーカーでは開放していない画像機器との連携などを図るべくPCベースのNC制御に着手。その際、ハイバーテックにVMEバスタイプのモーションボードを開発依頼。2000年にハイバーテックに入社。顧客視点に立った営業技術を目指し、製品開発を行う。2013年より同社代表取締役社長。
メーカーに依存しないという基本コンセプトを貫き、成長してきた
これまで解説してきたように、国内ではフィールドバスの標準化の遅れや特定メーカーの機器に対する依存度の高さなどにより、“つながる工場”の実現が遅れていた。このような課題にいち早く注目したハイバーテックが、これまでユーザーの支持を得てきたポイントをどこか。
筆者(村上) ハイバーテックでは、これまでどのような事業を行ってきたのですか。
伊東氏 当社はPCベースのモーションコントロールに特化してきた会社で、34年間の実績があります。現在は、業務のほとんどがモーションコントロール用の標準製品のハードウェアやソフトウェアの提供で、当社は開発や設計を中心に行い、製造は外部に委託しています。お客さまのほとんどが、半導体の製造・検査装置を製造している企業で、自社で使用する装置を開発している企業と、外販用の装置を製造している企業に分かれます。
筆者 ハイバーテックがこれまで34年間にわたり、PCベースのモーションコントロールの分野で成長してこられたポイントは何だったのですか。
伊東氏 当社では使用するモーターのメーカーを特定しないということを基本コンセプトに掲げています。他より圧倒的に優れた性能を実現したい装置メーカーやエンドユーザーの生産開発部にとっては、一社の産業機器メーカーが提供するモーターやコントローラーに依存していては他と差別化ができません。複数の産業機器メーカーが提供するコンポーネントを適材適所で選定し、ムダなく最適な組み合わせで最高性能を発揮できるよう、異なるメーカーのコンポーネントを組み合わせて利用したいという要望があります。そのため当社では、多数のメーカーのモーターやコンポーネントを利用できるインタフェースを提供し、その上で、都度求められるさまざまな最先端のモーション技術を付加することでお客さまから支持されてきました。
装置開発企業が本来やるべきことに注力できなくなっている
早くから、国内の“ガラパゴス化”の課題を把握し、PCベースのモーションコントロールの分野で強みを発揮してきたハイバーテックであるが、装置開発の現場には、さまざまな課題があるという。伊東氏はそうした課題が、装置開発企業が本来注力すべき分野に集中することができない要因になっているとみている。
伊東氏 1つの装置を開発した後で、派生装置を作ったり、装置の動きを変更させるような追加改造を行ったりすることがよくあるのですが、そのようなときには、それぞれのバリエーションの装置を、開発担当者がその都度開発してきました。しかし、もともと開発した担当者でなければ、基本となる動作と同じ動作を再現させるのが難しく、非常に多くの時間がかかってしまうのです。
筆者 PCベースの開発であっても、誰でも対応できるわけではないということなのですか。
伊東氏 そうです。ユーザーにとって最近の一番の課題は、開発の人材不足です。特に半導体装置メーカーでは人材がとても不足しています。人の流動が激しくなり、開発した人が退職してしまい、作った装置だけが残って誰も改変することができない、仮にできたとしても非常に多くの時間がかかってしまう、という状態が起こっているのです。そこで、少しだけ異なるようなプログラム開発を、繰り返し行うというムダな手間を省きたいというニーズが多くあるのです。
筆者 開発現場では、他にはどのような課題があるのですか。
伊東氏 半導体製造・検査装置は、「画像」「処理モーション」「I/O」の3つの要素で構成されていますが、これらの3つの要素を1台のPCの上で実行すると、画像処理がリソースを抱え込んでしまうために、モーションとI/Oのリソース不足が起こり、動きがぎくしゃくするという問題が起こります。そこで、そのような問題を避けるために、ユーザーの多くはリアルタイムOSを使うのですが、リアルタイムOSの供給元がロット数の少ない工業用装置に対して丁寧なサービスを提供してくれないという声も聞かれます。さらに、PCの供給保証が短期化していることもあり、工業用に特化したPCを使用できなければ、長期間にわたって装置を作り続けることが難しくなってきています。このようなさまざまな課題の他、開発者の人材不足という大きな課題もあり、ユーザーは、いかに自社の開発装置の差別化を図るか、という本来注力しなければならないことに集中できなくなっているのです。
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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