PwC 自動車産業セミナー 講演レポート
自動車産業、変革の時代をどう生きる? 未来への処方箋(2/3 ページ)
高機能化する自動車にユーザーはどこまで対価を払うか?
こうした状況の中、社会的な環境変化は自動車メーカーに大きなインパクトをもたらしている。その1つが、現在各自動車メーカーが開発に力を注いでいる自動走行などの技術に対して、ユーザーが相応の対価を支払うかどうかという問題だ。
米国での調査によると「安全」に対しては、それなりの金額(1000ドル程度)を付加価値として支払うという割合は高い。一方で、「コネクティッド」などに支払いたいとする割合はそれほど高くなく、自動運転機能についてもまだ興味は薄く、本格的な実用化が近づけばその度合いも高まると予想される。ただ、関心は高くなっても、その機能にお金を支払うかについては不透明で、米国の調査では2013年ごろには「1500ドル程度は支払う」としていたものが、2016年には「1000ドル程度」という結果が出ている。ユーザーの関心は高まるが、それに支払う金額は低下しており、2020年には500ドル以下という予測もある。白石氏はこの結果から「自動運転の機能の開発に多額の投資をしたけれど、それをどうやって回収してもうけるか、ということを考えておく必要がある。若者の所得が低下している中で、自動車の価格をこれ以上引き上げることも難しい」と指摘した。
電動化について白石氏は、「リチウムイオン電池の価格が下がっており、さらに製造収率向上およびエネルギー高密度化により、2030年ごろに向けて製造コストが現在の約半分になるとの予測もある。バッテリーの価格が下がり、逆に性能が上がることで電動化を後押しする」とし、環境問題も加えて普及に向けては追い風が吹いているといえそうだ。欧州では電気自動車(EV)のシェアが急拡大するとのデータもあり、2030年にはEVが約35%、ハイブリッドが約45%、合せて80%を占めると考えられている。このように自動車が多様化する中で、開発の効率性も一段と難しくなってきそうだ。
新興国については自動車の需要は高まる一方だが、中国市場を見ると高級車を除く乗用車の価格が2004年から10年間で約40%下落したというデータがある。高級車でも20%ダウンしている。競争の激化も一段と進んでおり、今後、価格を引き上げられるかは難しい状況のようだ。
厳しさが増す自動車メーカーの経営環境
自動車メーカーの経営環境も厳しくなっている。新技術の開発、導入によりコストが高くなる上、新機能を搭載するため、部品調達コストも上昇している。これに加え、新機能搭載による販売価格の引き上げも思うほど進んでいない。そのため、今後は利益水準維持のために、製造、販管費、R&Dのコスト圧縮は避けられなくなってきた。
さらに、自動車メーカーの投下資本利益率(ROIC)を見てみると7%(上位10社平均)程度だか、部品メーカー(上位100社平均)より低く、その差は拡大しているようだ。今後、開発費は増大し、サプライヤーへの支払い対価も増加する中で、新たに自動車に織り込む自動運転などの機能は、積極的に対価を得られるような要素ではないとみられる。そのため、顧客が「知覚」でき「高い対価」を支払う付加価値に対する「問い」を発見することが重要な課題となってきた。
白石氏は「(自動車メーカーは)燃費向上や安全性、基本性能の追求には、今後も取り組んでいくだろうが、それで差別化し続けられるかは不透明。もっとエモーショナルな価値やデジタル化などの新しい問いを見つけて、それに答えるような商品づくりが必要だ。基本性能の向上には多額の投資が必要で、その差の価値はますます顧客に分かりづらくなっている。(差別化の)軸を変える方が、少ない投資で違ったものが作れる。投下資本利益率を高める方向に進むことができるかもしれない。顧客が知覚でき、なおかつお金を支払ってもいいという価値を見つけられるかどうかで、企業の差が出てくる」と結論付けた。
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