フロスト&サリバン調査
「事故低減」「優れた運転体験」は自動運転市場を拡大しない
ある調査では2030年までには世界の自動車、7台に1台が自動運転機能を備えると予測されているが、「事故の低減」や「優れた運転体験」の実現が、自動運転技術を導入拡大する主な要因にはならないという指摘もある。
自動車技術に興味のある人ならば、自動運転技術にまつわる話題が途切れることなく報じられていることは肌で感じているだろう。自動運転技術への取り組みはほぼ全てといっていい自動車メーカーが取り組んでおり、米フォードは、ステアリングやアクセル、ブレーキなどを持たない完全自動運転車を2021年を目標に量産するという発表まで行っている。
フロスト&サリバンの調査分析資料「自動運転のグローバル市場見通し:2016年」では、2030年までに世界全体で自動車7台のうち1台が、高いレベルでの自動運転機能を備えたものになると予測している。
レベルの違いこそありながら自動運転技術の普及が進むことはもはや疑いようのない状況だが、「何が自動運転技術の進化を加速させるのか」「自動運転の進化が、市場にどのような変化をもたらすか」に視点を移すと、また違った世界が見えてくる。
自動運転の4レベル
自動運転と一口に言っても、どのような自動化を実現するかはそのクルマによって異なる。米国運輸省 国家道路交通安全局(NHTSA)では自動化の内容をレベル0~4と定義しており、レベル0は運転支援機能なし、レベル4は米フォードが実現を目指す人間は行き先の指示をするだけの完全自動運転となる。
レベル1は1種類の運転操作(自動ブレーキなど)を支援、レベル2は2種類の運転操作を支援(ステアリングとアクセル操作を支援しての自動車線変更など)、レベル3は駐車場など限定条件下での自動運転機能となる。現時点で市販車が実装している自動運転技術は渋滞時の衝突を回避する自動ブレーキなど、レベル1に相当するものが多い。
| レベル0 | 運転支援なし(どのような運転操作の場面でもドライバーに対して運転支援を行うシステムを搭載していない) |
|---|---|
| 操作の主体=人間 | |
| 監視の主体=人間 | |
| レベル1 | 1種類の運転操作を支援するシステム(横滑り防止装置、自動ブレーキなど)を搭載 |
| 操作の主体=人間とシステム | |
| 監視の主体は人間 | |
| レベル2 | 2種類以上の運転操作を支援する高度なシステム(車線維持=ステアリング操作とオートクルーズコントロール=加減速を1つのシステムで同時実現)を搭載 |
| 操作の主体=システム | |
| 監視の主体=人間 | |
| レベル3 | 条件付き自動運転システム(駐車場内や高速道路内など限定された交通条件で可能な自動運転) |
| 操作と監視の主体=システム | |
| 緊急時などはシステムの要請に応じてドライバーが運転する | |
| レベル4 | 完全自動運転システム(乗員が行き先を決めるだけで、運転操作を全く行う必要のない自動運転) |
| 操作と監視の主体=システム | |
| ドライバーがシステムの要請に応じられない場合はシステムが対処する | |
| 表 米国運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)が定義した自動運転システムの自動化レベル | |
レベル1相当の機能は既に複数車両へ搭載されつつあるが、レベル2以上の機能実装についてはまだ部分的であり、各社はテスト環境の確立、センサー機能の強化を急いでいる段階だ。フロスト&サリバンの調査資料では、この十分なセンサー能力確保とテスト環境の構築が一段落つけば、次はデータの収集と正確性検証の能力増強が今後の焦点になるとしている。
そして自動運転で利用者に提供されるメリットについては各社より、現在は事故の低減や優れた運転(乗車)体験の実現がうたわれているが、フロスト&サリバンの資料ではこれらは自動運転技術が導入拡大される主な要因にはならないと指摘している。
「事故低減」「優れた運転体験」は自動運転市場を拡大しない
資料では、自動運転技術の導入拡大を後押しするのは、利用者に向けた事故低減や優れた運転体験ではなく、開発段階における自動車以外の事業者との協業やエコシステム構築の必要性だと指摘する。
「自動運転市場では、AIやディープラーニングといった先進技術の導入とこれらに向けた投資が積極的に行われています。実際、より優れたAIやディープラーニングの要素は、自動運転における持続的なビジネスモデルの構築には欠かせないでしょう」(フロスト&サリバン モビリティ部門リサーチアナリストのアルンプラサッド・ナンダクマール氏)
実際、自動運転技術の開発に際して、自動車メーカー各社はAIやディープラーニングなど直接的な自動車運転と関連性の薄い領域へも積極的に投資を行っており、また、ボルボとUberの協業、トヨタ自動車の次世代タクシーのように、自動運転技術が実現した際の市場アプリケーション(用途)までも視野に入れた動きを加速している。
「自動運転市場での成功を勝ち取れる市場参加者は、単一の企業ではなく、強力なパートナーシップやエコシステムを兼ね備えた企業となるでしょう。自動運転技術によって、次世代のドライバーや自動車のニーズに対応した革新的な製品やサービスの誕生が期待されます」(ナンダクマール氏)
加えて資料では、自動運転に適した規制の枠組み構築も早急に求められると指摘している。テスト環境の増強とセンサーおよび判断能力の強化が順調に進んだとしても、さまざまな運転状況に対して完璧に対応する事は困難であり、自動運転車を取り巻く環境についても世界的に一元化された取り組みが行われなければ、自動運転市場の成長は妨げられることになりかねないと結んでいる。
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市場動向(自動車)
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