そのトラブル「サイバー攻撃」が原因かも?
事例で学ぶ、工場セキュリティ対策の考え方と現実的なソリューション導入の手引き(1/3 ページ)
製造業のIoT活用が進む中、工場内の制御機器をサイバー攻撃などの脅威から守るためには、製造業向けセキュリティソリューションの導入が有効だ。しかし、安定稼働を重視する工場設備に導入するとなるとさまざまな課題や困難が立ちはだかる。うまく工場セキュリティ対策を進めている企業はどのような視点でソリューションを選定し、課題を解決していったのか? 2つの事例から学ぶ。
製造業/工場のセキュリティ対策について考える
工場内で稼働する制御機器にトラブルが発生した場合、真っ先に疑うのは物理的な故障だろう。しかし、その原因が「サイバー攻撃」によるものだったら? 製造業といえども、その可能性を無視できなくなりつつある。
事実、再現性のないトラブルの原因が、マルウェアによるCPUリソースの変動によるものだったという事例もある。このような場合、原因追究および復旧までにかかる時間は、そのまま工場の稼働率や利益を食いつぶす要因となり得る。
サイバー攻撃であるかどうかを判断するためには、「セキュリティソリューション」を導入すべきだが、工場(製造業)では、その特殊性により他業種で一般的とされる手法が選択できない場合も多い。
そこで今回は、工場内の制御機器を守るために実際に導入された製造業向けセキュリティソリューションがどのような視点で選ばれ、製造業ならではの課題をどのようにクリアしていったのか、トレンドマイクロ プロダクトマーケティング本部 ソリューションマーケティンググループ プロダクトマーケティングマネージャーの上田勇貴氏に話を伺った。
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外部から持ち込まれたUSBメモリによるマルウェア感染をどう防ぐ?
最初に取り上げる事例は、既に稼働している工場内の制御機器をどのように守っていくかというものだ。
某工場では、定期的に制御機器の保守業者が保守用PCとUSBメモリを持ち込み、各制御機器を1台ずつメンテナンスしていた。あるとき、マルウェアに感染したUSBメモリが保守業者により持ち込まれてしまい、メンテナンス作業を行った結果、各制御機器にマルウェアが一気に拡散(横感染)してしまった。マルウェアはひそかに稼働するため感染に気が付かず、知らず知らずのうちに制御機器のCPUやメモリリソースを消費……。その結果、制御機器に高負荷が掛かり、生産ラインの安定稼働を阻害する事態を引き起こしていた。
オフィス環境であれば、一般的なセキュリティ対策ソフトウェアをインストールすれば済む話かもしれない。しかし、工場ではそれを許さない。工場内で稼働する制御機器でウイルスチェックプログラムが動作してしまうと制御機器のパフォーマンスを低下させる恐れがあるため、生産ラインの安定稼働を重視する製造業の現場では適さない。
さらに、一般的なウイルス対策ソフトウェアの場合、定期的にパターンファイルを更新し続けなければならないが、それも工場内の機器には不向きである。原則的に生産ラインを止めることのできない工場内では、パターンファイルの更新であっても、それが各制御機器にどのような影響を及ぼすか検証されていなければ導入は難しい。また、こうした後からのソフトウェア追加行為は制御機器メーカーの保証外になる場合が多く、気軽に導入することが困難だ。
こうした現状と課題を抱えていた某工場では、導入後の運用が容易(現場運用が可能)なセキュリティソリューションの導入が迫られていた。
そこでトレンドマイクロは、既存設備を中心とした工場の保護を目的に、4つのソリューションを提案したという。
この工場では、オフィス環境側の情報系ネットワークと、工場側の制御系ネットワークは分断されているため、外部からのマルウェアの侵入ポイントを「USBメモリ」と「持ち込みPC」に絞ることができた。そこで第1のソリューションとして、ウイルス対策機能を搭載したUSBメモリの運用を提案。トレンドマイクロではウイルス対策機能を搭載したUSBメモリ向け製品「Trend Micro USB Security」を提供しており、同製品を組み込んだUSBメモリのみ利用を許可するガイドラインを整備することで、外からのマルウェア感染をブロックするアプローチを採用した。「この製品を用いれば、マルウェアがUSBメモリにコピーされるタイミングで検知、ブロックできるため、情報の入出力ポイントで侵入を防ぐことができる」(上田氏)。
しかし、これでもマルウェアの侵入を100%防ぎ切れるというわけではない。なぜなら亜種や未知のマルウェアなどは検知が行えない可能性があるからだ。そこで、第2のソリューションとして、「決められたアプリケーションしか動かさない」というタイプのセキュリティ機構の導入を提案。これは機器で動作するアプリケーションを事前に限定する(動作許可したアプリケーションをホワイトリストとして登録しておく)ことで、それ以外のアプリケーションを起動させないというものだ。「トレンドマイクロでは『Trend Micro Safe Lock』という製品を用意。許可されたものしか動作しないので、未知のマルウェアが動作することはない。さらに制御機器のパフォーマンスに影響を与えず軽快に動作し、パターンファイルを更新する必要性もない」と上田氏は説明する。
ただ前述の通り、工場内の制御機器に新たなソフトウェアなどを追加導入できないケースも多いため、第3のソリューションとして「検索対象機器のUSBポートに挿すだけで、ソフトウェアのインストールを行うことなくウイルス検索、駆除を行うことができるツール」の併用を提案。「例えば、生産ラインが停止しているお盆期間などを利用して『Trend Micro Portable Security 2』で制御機器の定期チェックを行ったり、外部からの持ち込みPCのウイルスチェックに利用したりできる」(上田氏)。
このTrend Micro Portable Security 2は対象機器のウイルスチェックを手軽に行えるが、USBポートから抜いてしまうと対象機器は無防備な状態になってしまう。そのため、それを補完する位置付けとして「早期異常検知」のアプローチが必要となる。そこで、ネットワーク内を流れる通信を監視し、マルウェアによる異常な通信がないかを検知する仕組みとして、第4のソリューション「Deep Discovery Inspector(DDI)」の活用も提案した。
「Deep Discovery Inspectorは、ネットワークスイッチのミラーポートに接続して利用するため、工場内ネットワークに一切影響を与えることなく利用でき、異常な振る舞いやウイルス感染を迅速に検知できる。感染した機器を探す手間も大幅に削減でき、ダウンタイムの短縮化が可能となる」と上田氏。実際、監視した結果、特定の機器に異常を発見したら、Trend Micro Portable Security 2を使い、素早くウイルス検査と駆除が行える。
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