トレンドマイクロ セミナーレポート
狙われる国内製造業――事例から学ぶIoT時代の「工場セキュリティ」(後編)(1/3 ページ)
IoTやインダストリー4.0の本格的な到来により実現する「つながる工場」――。そこで得られるのは恩恵だけではない。必ずその影にはセキュリティリスクが潜んでいる。トレンドマイクロのセミナー「事例に学ぶ! 製造大手も始めた工場セキュリティの最新動向」から、製造業を取り巻く脅威動向とその対策について学ぶ。
製造業を取り巻く最新のセキュリティ脅威動向とその対策
「狙われる国内製造業――事例から学ぶIoT時代の『工場セキュリティ』(前編)」では、実際に発生した工場の被害事例について紹介し、さらに近年注視すべきセキュリティ動向について解説した。また、なぜセキュリティ被害を防ぐことができないのか、その理由についても言及した。
今回お届けする後編では、引き続き、トレンドマイクロ プロダクトマーケティング本部 ソリューションマーケティンググループ プロダクトマーケティングマネージャーの上田勇貴氏の講演「事例に学ぶ! 製造大手も始めた工場セキュリティの最新動向」から、製造業を取り巻く最新の脅威動向とその対策について解説する。
◎「工場セキュリティ/製造業セキュリティ」関連記事 ~課題、事例、導入、対策~ など
» 脆弱性はなくならない、事故発生を前提とした対策があなたの工場を脅威から守る
» 工場セキュリティ対策の考え方と現実的なソリューション導入の手引き
» 製造業が狙われる日も近い、制御情報系システムをITセキュリティの力で死守せよ
国内メーカー製PLCを狙った不審なアクセス
製造業におけるセキュリティリスクはますます高まってきている。IoTやインダストリー4.0を背景としたオープン技術の活用による脅威だけでなく、さまざまな面で攻撃を受けやすい状況にあるという。
まず注意すべきは、制御系システムで多数の脆弱(ぜいじゃく)性が報告されている点だ。
「近年、研究者や攻撃者の関心が高まってきたことにより、制御系システムで脆弱性が多数発見され、中にはシステム乗っ取りや停止を引き起こすものが含まれている」(上田氏)。また、キーワードを入力するだけで外部からアクセス可能な機器を容易に検索できるWebサイトが登場しはじめており、「こうしたサイトの情報と脆弱性の情報を組み合わせれば、特定の機器に対して容易に侵入を図ることができてしまう。適切な対策をしていない機器はこうした攻撃の標的になりかねない」と上田氏はその危険性を説明する。
さらに、注意すべき動きとして、国内メーカーのPLCを標的とした不審な動きが顕在化しはじめていると指摘する。「警視庁のサイバーポリスのレポートによると、ある国内メーカー製のPLCを標的とした不審なアクセスがここ最近増えてきている」(上田氏)という。
こうした状況を踏まえると、できるだけ早い対策が求められる。その被害は金銭的なものだけでなく、企業活動そのものにも影響を及ぼしかねないからだ。「最近では、国や業界団体の取り組みも積極的に行われている。経済産業省がサイバーセキュリティ経営ガイドラインを策定し、経営層が工場を含むセキュリティ対策に、自社およびサプライチェーンを含めて深く関与するように推奨したり、金融庁においては上場企業に対して、セキュリティリスクを投資家にきちんと開示させるための仕組みの導入を検討したりといった動きがある。こうした動きを踏まえて、今後、特に上場企業を中心に、工場セキュリティ対策が強く求められるようになるだろう」と上田氏は説明する。
経営層と設備管理者の意識変化
もちろん既に対策に取り組み始めている企業もある。そうした“進んだ企業”が工場のセキュリティ対策に取り組み始めた背景はどこにあるのか。上田氏は次のように説明する。「1つは経営層の危機意識の変化が挙げられる。工場の場合、生産ラインが1時間停止しただけで巨額の損失になり得る。金額ベースで被害の大きさが予測でき、かつ信頼の失墜やその後の売上減少などの影響もある程度見えることから、経営者としてしっかりとセキュリティ対策に投資していこう! というマインドになっている企業が出始めている。そして、もう1つが訴訟リスクへの対応だ。国内の情報漏えい事故で経営層が訴追されたケースもあるため、危機管理の一環として取り組もうとしている」(上田氏)。
経営層とは別に、設備管理者の意識変化もあるという。「『生産停止』という結果が同じであれば、現実世界に発生する事象も、サイバー世界の事象も同様に適切な対処をすべき、という考え方へシフトしている」と上田氏。例えば、モーターが異常に振動したり、発熱したり、スパークを起こしたりしていたら本格的な故障に至る前に、部品調整や交換などをして安定稼働を実現しようとするだろう。これと同じで、影響度の小さなウイルス感染や多重ログインの失敗といったものを「不正アクセスの兆候」として捉えて適切な対応をとる。こうした意識変化が進んでいる企業(現場)では起きているという。「そうした取り組みを実際に進めている企業の1つがアルプス電気だ。『つながる工場』の実現に向けて、セキュリティを見直していこうという経営層からの強い要望もあり、現場の生産技術グループと情報システム部が連携して、一緒に生産設備のセキュリティ対策に取り組んでいる」と上田氏は紹介する。
具体的な対策とトレンドマイクロのソリューション
こうした企業は具体的にどのような対策を行っているのだろうか。上田氏は「セキュリティ基準の整備」「多層防御対策の導入」「組織/人材の育成」の3つの方向性を掲げる。
セキュリティ基準の整備は、やるべきことをルール化して、生産活動と同様に改善のサイクルを回していこうというものだ。「セキュリティ対策も1回対策したら終わりというものではなく、次の改善活動につなげていける体制作りとルール作りが不可欠。万が一セキュリティインシデントが発生しても誰がどう判断して、どのような対処をすべきかルール化されていれば、被害を最小限に押さえて、早期に対処して生産活動を再開できる。そういったガイドラインをきちんと整備すべきだ」(上田氏)。
そして、2つ目が多層防御対策の導入だ。これに対し、上田氏は既存設備と新規設備、それぞれ別のアプローチで対策を施すべきだとする。「既存の設備機器の場合、安定稼働している今の環境に影響を与えることなく、対策を施したいというニーズがある。このような場合、被害時の影響範囲の最小化と迅速復旧を目的に、早期異常検知と早期の対処が行える仕組みや体制を構築すべきである。対して、新規の設備機器の場合は、導入・設置前に、セキュリティ要件をあらかじめ機器に盛り込んでおくことで、可用性/パフォーマンスに影響を与えない対策で工場を守ることができる」と上田氏。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(製造IT)
「製造IT」をメインテーマに、モノづくり関連セミナーのレポートやインタビューなどを多数掲載。製造現場の課題解決やカイゼン、意識改革に向けた第一歩を踏み出すためのヒントを提示します。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー