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» 2018年03月19日 09時00分 公開

製造業のIoTスペシャリストを目指そう(8):IoT時代の製造業における「つながる」の意味 (1/2)

IoTでは“つながる”ことが大切とされます。では、製造業がIoTを活用したいと考えた際には「何が」つながると、技術革新、生産性向上、技能伝承などの目的を達成できるのでしょうか。IoT時代の製造業における「つながる」の意味を解説します。

[IoT検定制度委員会,TechFactory]

はじめに

 IoT(Internet of Things)は“モノのインターネット化”と訳されることもありますが、本質的にはデータの有効利用が最終目的です。ただし、この“モノのインターネット化”の意味の通り「つながる」という最初のステップをどう認識するかが重要になります。

 では何が「つながる」のでしょうか? IoTによる製造現場の改善や付加価値向上では、この「つながる」という概念を幅広く捉えないと、大きな成果には結び付きません。このつながる世界に関して経済産業省は平成29年「Connected Industries」というコンセプトを発表し、日本の産業が目指す姿を宣言しています。

Connected Industriesとは

 「Connected Industries」とは、日本の産業が目指す姿(コンセプト)として経済産業省が提唱した概念です。大まかに言えば、「人・物・技術・組織などがつながることで、新たな価値創造を図ることが、日本産業の勝ち筋だ」という提唱です。

 従来、多くの産業領域では事業者や工場、技術そして技能などの個別の電子化は進んでいるものの、連携していないという状態でしたが、Connected Industriesでは「データがつながり有効活用されることにより、技術革新、生産性向上、技能伝承などを通じた課題解決」が行われることを期待しています。

「Connected Industries」の重点取り組み分野 「Connected Industries」の重点取り組み分野(出展:経済産業省)

 重点的に取り組む分野としては製造業(ものづくり)にとどまらず、「自動走行・モビリティサービス」「バイオ・素材」「スマートライフ」「ものづくり・ロボティクス」「プラント・インフラ保安」の5項目が挙げられており、横断的な政策はとして下記があります。

Connected Industriesの横断的な政策

  • リアルデータの共有・利活用
  • データ活用に向けた基盤整備「研究開発、人材育成、サイバーセキュリティ」
  • さらなる展開「国際、ベンチャー、地域・中小企業」

*(参考資料)経済産業省「Connected Industries」 東京イニシアティブ2017 平成29年10月2日 http://www.meti.go.jp/press/2017/10/20171002012/20171002012-1.pdf


IoTにおいては何がつながるのか?

 上記のような政策にも絡んで、つながる世界」の実現が非常に重要なことは言うまでもありません。ですが、実際の改善や改革などを考える上では、この「つながる」の概念を幅広く認識する必要があります。そこで「何がつながるのか」という観点で分類すると下記になります。

  • (1)「モノ」がつながる:センサー/設備/製品/ITシステム……
  • (2)「人」がつながる:作業者/スタッフ/顧客……
  • (3)「組織」がつながる:部署/工場/店舗/会社……
  • (4)「コト」がつながる:作業/技術/技能/サービス/ビジネス……
  • (5)「仮想」と「現実」がつながる
  • (6)「現在」と「未来」がつながる

 また、最終的にはデータを活用することで、(4)の「コト」自身の改善/変革につながることが多くなります。

 上記の「つながる」は改善や付加価値向上を考えた際の概念的な考え方です。物理的には複数の段階で接続され、それぞれが「つながった状態」になります。例えば、(2)の「作業者」をつなげるためには、(1)の「センサー」を「作業者」に取りつけたり、監視カメラで人の状態を把握することが必要になります。

つながることによる改善や新たな付加価値創造

 「何がつながるか」について、上記(1)〜(6)に分類しましたが、それぞれの具体的な改善例や付加価値創造について確認していきましょう。

(1)「モノ」がつながる IoT(Internet of Things)は“モノのインターネット化”と訳されると説明しました。この「モノ」にあてはまるのが設備や製品などで、これらの「モノ」がつながることで、故障などが予測でき、生産性の向上やサービスの向上につながります。
(2)「人」がつながる 作業者などがつながることにより、作業者の動きの無駄が見える化され、生産性の改善につながります。また、顧客の状況が把握できるため、利用状況などから製品の改良にもつなげることができます。
(3)「組織」がつながる 工場がつながることにより、複数の工場が1つの工場として動き、スマート工場化されることになります。また、顧客企業やサプライヤーとつながることで納期の改善や在庫の削減なども可能になります。
(4)「コト」がつながる サービスが融合することで、新たな付加価値を生む可能性があります。例えば、自動車の運転情報の取得により、自動車保険の保険料をダイナミックに変えるテレマティクス保険などがあります。
(5)「仮想」と「現実」がつながる CPS(Cyber Physical System)のように、実世界(フィジカル空間)のデータをサイバー(サーバ)空間で分析し、改善を図っていくことが可能になります。
(6)「現在」と「未来」がつながる 「データを蓄積することで、そのデータが未来に役立つこと」、また、「蓄積されたデータを分析し、将来の予想が行える」といった「現在」と「未来」のつながりが考えられます。

今回の問題

 それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題します。今回は、上記の「つながる」という観点での問題となります。

問題(8)

 IoT時代においては「つながる」という概念が重要です。IoTはモノのインターネットなどと訳されますが、IoTによって製造現場の改善や付加価値向上を目指す上では、この「つながる」という概念を単に「モノがつながる」だけではなく、より幅広く認識する必要があります。幅広く「つながる」という概念を説明した下記のなかで、最もあてはまらないものを1つ選びなさい。

  1. IoTにおいては、センサーなどの搭載で製品の利用状況などが把握でき、品質改善や製品の改良が可能になる
  2. IoTにおいては、リアルタイムに市場や顧客とつながることで、従来のSCM(Supply Chain Management)をより強固かつスピーディーに実施できる
  3. 物理的な空間とサイバー空間がつながるCPS(Cyber Physical System)に対し、デジタルツインの「つながる」という考え方は異なっており、全く新しい概念である
  4. 匠の技を持つ技能者の視線や手の動きなどを動画に蓄積することで、暗黙知が将来的にAI(人工知能)により形式知化(知能化)され、未来への技能伝承や自律化につながる

※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。

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