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IoTの登場で求められる製造業のビジネスモデル変革製造業のIoTスペシャリストを目指そうSeason2(2)(1/2 ページ)

製造業でIoTを導入したプロジェクトを成功させるには、幅広い知識が必要です。今回は、従来のモノ売り型のビジネスモデルから、ユーザー課題を解決する(ニーズを満たす)ソリューション提供へと変革が迫られる製造業のビジネスモデルの在り方について取り上げます。

» 2018年10月16日 09時00分 公開
[IoT検定制度委員会TechFactory]

 これまで「製造業」といえば、モノを作って、お客さまにモノを提供するというスタイルが典型的なビジネスモデルでした。近年はソフトウェアの登場により、そのモノが有形だけに限らず、“無形”のモノも含まれるようになりました。さらに現在では、スマートフォンに代表されるように、提供するモノの付加価値がハードウェアよりソフトウェアに重点が置かれる製品も数多く存在しています。

 このように製造業で扱う“モノ”という形態は、技術進化に伴って変化を遂げてきました。そして今、IoT(Internet of Things)の登場が、製造業のビジネスモデルをさらに別次元の方向へと変革しようとしています。

 こうした環境変化をプラスに捉えると、IoTの登場によって、製造業は単なるモノの切り売り商売から、顧客に対してさらに付加価値の高い“サービス(の提供)”へと転じることが可能となります。むしろ、この考え方こそが製造業のドメインといっても過言ではありません。一方、マイナスで捉えると、製造業だけではなく、小売業やサービス業などの異業種からの参入が増加します。特に、IoTで活性化する業界は、新規参入する業者が増え、競合相手が今までの同業種だけでは済まなくなります。例として、Googleが開発を進めている自動運転技術が、既存の自動車メーカーの脅威になっているケースが挙げられます。

なぜ顧客は「モノ」を購入するのか?

 なぜ、製造業は単なるモノの切り売り商売から、顧客に対してもっと付加価値の高いサービス(の提供)へと転じることができるのでしょうか? その理由については、「なぜ顧客はモノを購入するのか」を深く検討することで理解できます。

 マーケティングで有名な言葉に、

ドリルを買いに来た人がほしいのは、ドリルではなく穴である


というものがあります。

 この言葉は、約50年前にレビット博士が出版した本からの引用ですが、今でも色あせずに、マーケティングの本質を捉えています。顧客は、ドリルそのもの(製品)ではなく、そのドリルで実現可能な穴(結果)を求めています。すなわち、顧客のニーズ(需要)は穴をあけることであって、ドリル(製品)そのものでないことを意味しています。

顧客の真のニーズ:

木に穴をあけること




 一般的にこの穴は、顧客が直面している問題や課題となっていることが多く、その解決手段として“ドリル=モノ”を購入します。他方、メーカー(製造業)側は、顧客の解決手段としてドリルを製造し、販売しています。つまり、メーカーは顧客の問題解決(ニーズ)に対して、一つの解決手段(ソリューション)を提供していることになります。

メーカーからの問題解決提供:

ドリルを使う




 この“マーケティングの本質”を考慮すると、製造業は単なるモノ売りから脱却し、顧客が抱える問題を解決できるソリューションの提供を実現しなければなりません。そうしなければ、いずれ企業そのものの存続も難しくなることでしょう。

 経営者や経営幹部の方にとって、この“気付き”がとても重要です。そのため、今多くの企業では業種、業界の垣根を越え、危機感を持って、ソリューション提供の道を模索しています。こうしたビジネスンモデルの変革に、IoTがとても有力なツールとなっています。製造業がモノ売りだけでは実現できなかったソリューションを、IoTを駆使することで生み出せるようになるのです。

 例えば、自動運転に対する自動車メーカーの取り組みが良い例です。自動車は、いろいろな側面があります。移動手段としてとても便利ですし、運転すること自体が楽しいという方もいます。また、趣味の一環でクラシックカーなどを所有している人もいるでしょう。ただ、そうした一方で、交通の便が発達していない地方にとって自動車は必需品であり、移段手段の唯一のソリューションになっているケースも少なくありません。

 最近は、高齢者運転や飲酒運転などによる事故を見聞する機会が多く、中には交通弱者の方が安全をていして運転しているケースも考えられます。これは少子高齢化を迎えるわが国にとって社会的な喫緊の課題となっています。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダなどの国内自動車メーカーがこぞって自動運転の開発に力を入れているわけですが、自動車を販売するという従来のビジネスモデルとは別に、社会課題を解決する移動手段(新たなソリューション)としての付加価値をそこに見いだしたからに他なりません。

 さらに、既存の自動車メーカーだけではなく、これまで自動車ビジネスから縁遠かったIT関連企業も自動運転の開発に参入し始めています。国や自治体の期待も大きいため、自動運転の開発および実証実験は今後ますます加速していくでしょうし、自動運転を取り巻く新しいエコシステムの構築も進んでいくものと考えられます。

今回の問題

 それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題をお届けします! 今回はIoT検定スキルマップの「産業システム」に該当する設問です(※)。

問題(1):

IoTを活用し、新規ビジネスモデルの構築に挑戦する企業は少なくありません。実にさまざまな取り組みが進みつつありますが、2018年現在、各分野や各業界におけるIoTの取り組み状況で最も“あてはまらないもの”を1つ選びなさい。

  1. 日本は、米国やイギリスと同様に「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約 1949年)」に締結しているので、自動運転のための道路ルールや道路交通法の改正、見直しは必要ない。

  2. クボタは、圃場(ほじょう)管理、スマートフォンによる日誌作成、作業進捗(しんちょく)、農作物の分析などができるクボタスマートアグリシステム(KSAS)を構築し、農園経営者を支援している。

  3. スマートメーターは日々30分ごとに電気使用量を電力会社に送信することで、毎月の検針業務を省力化している。さらには、HEMS(Home Energy Management System)との連携による電気使用状況の見える化で、電気料金メニューの多様化や社会全体の省エネ化への貢献が期待されている。

  4. コマツが提供している「KOMTRAX」は、各車両システムに装備されたGPS、通信システムにより、位置情報、移動管理、稼働時間などを一元管理している。また、車両モニタコーション情報やオイル交換時期情報がリアルタイムに取得できるので、建設機械の予防保全に役立っている。

※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。


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