「BOM(Bill Of Materials:部品表)」とは? その基本的な考え方から、複雑化する現代のモノづくりにおいてBOMが不可欠な理由、そしてBOMに求められる機能まで詳しく解説します。IoTやARを活用した最先端のモノづくりに対応するためにも、あらためてBOMの在り方について理解を深めてみてはいかがでしょうか。
昨今、製造業ではバズワードとしての「IoT(Internet of Things)」や「AR(拡張現実)」への関心は落ち着きを見せ、実業務でこれら技術をどのように活用すべきかという、より具体的な方向へと焦点が移り変わっています。
ただ、実際にこうした最先端技術や新しい枠組みなどを製品開発の現場に取り入れようとする場合、重要となってくるのが“製品の情報がきちんと整理整頓されているかどうか”です。
その中核を担うのが「BOM(部品表)」であり、BOMを中心とした製品情報の一元管理の考え方です。多くの製造業では、最先端のモノづくりに対応すべくBOMそのものの在り方をいま一度見直す時期に差し掛かっています。
そのようなことを踏まえ、本稿ではBOMの基本的な考え方や、現在の複雑化する製品開発におけるBOMの必要性、そしてBOMに求められる機能について詳しく解説します。また、BOMを管理、活用する上で不可欠な「PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)」システムに求められる機能についても触れたいと思います。
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BOMとは“Bill Of Materials”の略であり、日本の製造業では主に「部品表」と呼ばれるものです。BOMは、製品をつかさどる部品の一覧であり、階層構造を示すとともに、製品がどの部品で組み上がっているか、それぞれの部品の基本情報を含みます。
BOMは通常「PN(Parts Number)」という品目情報と、「PS(Part Structure)」というPNの親子関係を管理する構成管理情報で構成されます。製品を開発するために必要な情報や成果物を、全て品目情報にひも付けることで製品の設計情報を管理します。これにより、主な成果物の1つである図面と品目の関係が明確になり、設計者が常に最新の情報を入手できる環境が整います。
こういったBOM情報をいかに効率的に管理できるか、有効活用できるかが、製造業にとって重要です。製品開発においては設計部門のみならず、製造、サービス、営業、マーケティングが協業し、製品情報を共有しながら進めていく必要があります。
その取り組みを実践するためのキーワードが、「BOMのデジタル化」と「BOMと中心とした製品情報の一元管理」です。
BOMは一般的にどのような仕組みで管理、活用されているのでしょうか。
多くの企業では、BOMを「Excel」で管理していたり、図面に部品表を埋め込んで管理したりしています。これらの方法では最新情報の維持が大変で、可視化や検索が難しい場合もあります。
例えば、図面やExcelを中心とした仕組みの場合、「部品の逆引き検索が難しい」という声を設計現場でよく耳にします。共通部品がどの機種で使われているのか、その部品を変更することでどの範囲まで影響があるのか、その影響範囲の修正に伴う工数やコストはどれくらいかという検討に、多くの時間がかかっているのが現状です。
BOMをデジタル化することで、部品同士の関連性をシステムが理解できるようになるため、芋づる式に情報を引き上げることが可能となり、BOMをより活用しやすい情報に変革できます。PLMシステム内でBOMがデジタル化され、管理されていると特定の部品から見た関連性を、網羅的に確認することが簡単にできるようになります。
BOMのデジタル化は、ただ図面に描かれている部品表の情報を紙からデータに変換するだけではなく、それぞれの品目に対して個々の情報、関連性をシステム上で持たせるということなのです。
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「百聞は一見にしかず」のように、BOMも視覚的に確認できれば、より多くの人にBOMを活用してもらうことができます。いつも製品にかかわっている担当者は、番号や名前の羅列が何を意味するのか理解できますが、普段、直接設計にかかわっていない人にとっては理解が難しいものです。最近のPLMではBOMを3D CADから抽出し、BOM情報に3次元形状をひも付けて管理することが可能です。形状を見ることにより、部品の内容を理解でき、素早く正しい情報を入手できます。
製品のBOMを構築するに当たり、1つのCADではなく、異なる複数のCADからの情報を組み合わせ、1つの製品BOMを構築する場合が多いかと思います。例えば、外装はAというCAD、内装は別のBというCADで設計されている場合です。また、機構設計だけではなく、電気部品の情報もBOMに含める必要があるため、PLMシステムは混在する複数のCADからのBOMを管理できることが必須要件となってきます。
多くの場合は、用途や担当部門によってBOMが分断された別々のシステムで管理されています。また、製品に関連する成果物(仕様書、計算書、図面、3Dデータなど)も個別システムで管理されている場合も多くあります。このような分断された環境下で情報を共有するのは至難の業です。
市場に出ているほとんどの製品は複雑化しており、単純な機構部品だけではなく、電子部品、ソフトウェア、センサーが埋め込まれています。
BOMも製品の機械部品の情報だけではなく、電気部品やソフトウェアの要素もBOMに含めることで、はじめて製品として定義されたことになります。このような他部門からの情報をBOMに集約することが、異なる部門に所属する関係者間で効率的に業務を遂行するための第一歩となります。
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