NECがデータ分析ツールの開発および販売、コンサルティングを事業とする新会社「dotData, Inc.」をシリコンバレーに設立する。
NECは2018年4月26日、AI(人工知能)を活用した新たなデータ分析事業の展開について記者会見を都内で開催し、データ分析ツールの開発および販売、コンサルティングを事業とする新会社を米国に設立すると発表した。
新会社の名称は「dotData, Inc.(以下、dotData)」。米国カリフォルニア州クパチーノ市に拠点を設け、シリコンバレーのスタートアップとして事業を開始する。2022年度に企業価値500億円到達を目指すという。
会見では、dotDataのCEOに就任予定の藤巻遼平氏が同社データ分析ツールの強みを紹介した。藤巻氏は史上最年少でNECの主席研究員に抜てきされ、NECでは同社AI技術群「NEC the WISE」に搭載されている予測分析自動化技術を開発した若きリーダーであるという。
藤巻氏は現在のデータ分析市場について、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールによる過去の傾向を把握することから、機械学習を活用したデータ分析ツールによって未来の状況を予測することに関心が移りつつあるという。
しかし、機械学習を用いたデータ分析は、解決したい業務課題の抽出から予測モデルの作成、データ準備、特徴量設計と実際の機械学習プロセスに入るまでに解決すべきプロセスがあり、これらタスクを処理できる専門人材(データサイエンティスト)が世界的に不足している。このような状況から、「機械学習を活用したデータ分析は、データサイエンティストを雇用できる一部の大企業が力技で行っている」(藤巻氏)とし、データサイエンスの民主化が進んでいないと主張する。
そこで、dotDataはデータサイエンス民主化の旗振り役として、データ準備から実際の運用までを自動でデータ分析するツールを開発する。特に同社の強みは、機械学習前にどのデータが価値のあるものなのかを判定する作業である特徴量設計、モデル設計を自動化しつつも高精度な予測ができることとし、同技術では「世界最先端にいる」(藤巻氏)という。
一方で同社ツールは、競合となる既存データ分析ツールやデータサイエンティストの置き換えを狙ったものではなく、これらと併用することで予測モデルの精度向上や人的リソースを他の有益な領域に振り分けることができると強調した。
NECでdotDataのカウンタパートを担当する同社ビジネスイノベーションユニットエグゼクティブディレクターの森英人氏は、「エンタープライズAIの領域ではGoogleやIBMなど北米企業の取り組みが目立っているが、日本勢としてNECのプレゼンスを高める」ことを目指すと語る。
NECにとっても、AIや機械学習に関する技術や人材をシリコンバレーのスタートアップとして独立させる決断は簡単ではなかった。この点について、藤巻氏は「日本の大企業が、今後成長する分野の事業をカーブアウトする決断をしたことはR&Dの面から見てすごいこと」と評価した。
dotDataは今後、シリコンバレーの高度人材を雇用すること、同社製品や技術をシリコンバレーで磨くこと、外部から資金を調達することなどを通して、迅速な事業拡大を目指すという。また、NECとの関係については資本関係の他に、同社製ソフトウェアの国内独占販売権を付与する。
特に、高度人材の獲得についてはシリコンバレー内でも競争が激しくなっているが、「NECが(dotDataの)バックボーンとなることで、立ち上げ初期の段階から(シリコンバレーの水準に見合う)高度人材の給与水準で人材を確保できる」(森氏)という。
dotDataは、同社製ツールの提供時期を2018年7月ごろと予定している。
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