ヒストリーとノンヒストリーの“いいとこ取り”を実現する「シンクロナス・テクノロジー」を搭載し、他の3D CAD製品と一線を画すシーメンスPLMソフトウェアの「Solid Edge」。現在に至るまでの歴史と製品としての特長、強みについて取り上げる。
“より良い設計”を実現するためのCAD機能と、設計以外の周辺業務に関する豊富なアプリケーション/機能群を提供するシーメンスPLMソフトウェアのミッドレンジ3D CAD「Solid Edge」。
Solid Edgeは、1996年にIntergraphによって開発され、最初のバージョンがリリースされた。当時のカーネルは「ACIS(エイシス)」を採用しており、Windows完全準拠の3D CADとしてバージョン4まで開発された。1998年にSolid Edgeは、EDSに買収され、Unigraphics Solutionsが設立される。そこに、EDSの「UG(現:NX)」「i-Man(現:Teamcenter)」「Parasolid」のビジネスユニットも加わった。このタイミングでSolid Edgeは、カーネルをParasolidに変更してバージョン5をリリースしている。その後、EDSはSDRC(Structural Dynamics Research Corporation)を買収して、社名をEDS PLM Solutionsに変更。以降、UGS PLM Solutions、UGSと何度か母体を変え、現在、シーメンスPLMソフトウェアがSolid Edgeの開発を継続している。ちなみに最新バージョンは「Solid Edge ST10」である(原稿執筆時点:2017年10月)。
最初の転換期を迎えたのは、1998年のEDSによる買収である。Parasolidカーネルの開発チームが自社内に加わったことで、カーネルをACISからParasolidへ変更し、そこからバージョン20までの間「ヒストリカル・パラメトリック・フィーチャーベース」の3D CADとしてバージョンアップが繰り返されていった。
そして、2回目の転換期を迎えたのが2008年である。ここで、Solid Edgeの代名詞である「シンクロナス・テクノロジー」が搭載された。シンクロナスは、1つのCADツールという環境の中に、従来のヒストリー型モデリングによるCADの世界と、シンクロナス(ノンヒストリー型)モデリングによるCADの世界を共存させ、双方の“いいとこ取り”を実現したハイブリッドのCAD環境である。例えば、ヒストリー型で設計した3Dモデルを変更しようとして、寸法を変えると3Dモデルが壊れてしまうような場合、その3DモデルをSolid Edgeの内部でシンクロナスに転送することで、ノンヒストリー環境で自由に面などを変更することが可能となる。その他、シンクロナス(ノンヒストリー)のボディーに、ヒストリーの穴やフィレットのフィーチャーを付け加えるといった混在設計も行える。
近年、3D CADに目を向けてみると、機能や性能だけで大きな差別化を生み出しづらくなってきているが、このParasolidとシンクロナスは、Solid Edgeのコアコンピタンスといえる。
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