トヨタ自動車とLINEは、LINEが開発を進めるクラウドAIプラットフォーム「Clova」と、トヨタ自動車などが推進する車載情報機器とスマートフォンアプリの連携規格SDLの活用で協業する。2018年をめどに、Clovaの音声エージェント技術を活用した新しいカーサービスの商品化を目指す。
トヨタ自動車とLINEは2017年6月15日、LINEが開発を進めるクラウドAI(人工知能)プラットフォーム「Clova」と、トヨタ自動車やフォード(Ford Motor)、スズキ、マツダ、スバルなどが推進する車載情報機器とスマートフォンアプリの連携規格Smart Device Link(SDL)を活用した協業の可能性を検討するための協業基本合意書を締結したと発表した。2018年をめどに、Clovaの音声エージェント技術を活用した新しいカーサービスの商品化を目指す。
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同日のLINEの事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2017」に登壇したトヨタ自動車 専務役員の友山茂樹氏は、協業が具体化した際の新サービスのイメージについて「運転中のLINEのメッセージの読み上げや、音声認識によるカーナビゲーションの操作などが考えられる」と述べている。
Clovaは、日本をはじめ、アジアでトップシェアを持つメッセンジャーアプリの「LINE」と、韓国の検索ポータルでトップのNAVERが持つ開発技術や豊富なコンテンツ/サービスを活用して実現したクラウドAIプラットフォームである。Clovaを搭載した製品として、アプリの「Clova App」とスマートスピーカー「WAVE(ウェーブ)」を2017年初夏に日本と韓国で発売する予定だ。この他、2017年冬にはスマートディスプレイ「FACE(フェース)」を投入する計画もある。
2017年3月のClovaの発表では、スマートプロダクト分野でソニーモバイルコミュニケーションズ、スマートトイ分野でタカラトミーとのパートナーシップを発表している。今回のトヨタの協業は、コネクテッドカー分野でのパートナーシップになる。
一方、トヨタ自動車がClovaとつなげようとしているSDLは、車載情報機器とスマートフォン/タブレット端末のアプリをつなげるためのオープンソースの規格だ。SDLコンソーシアムで策定が進められており、ダイヤモンドメンバーでトヨタ自動車とフォード、スズキ、プラチナメンバーでマツダとスバルが加わっている。また、LINEもブロンズメンバーで活動に参加しているという。
ClovaがSDLに準拠することで、Clovaを活用したさまざまなアプリを、SDLに対応した車載情報機器で利用できるようになる。オープンソースのSDLは、アップル(Apple)の「CarPlay」やグーグル(Google)の「Android Auto」といったスマートフォンと車載情報機器の連携プラットフォームに対抗する枠組みになっている。SDLを活用することにより、自動車メーカー各社は、アップルやグーグルの枠組みにとらわれずに、独自のコネクテッドカープラットフォームを展開できるようになる。
トヨタ自動車は、コネクテッドカーの中核となる車載情報機器のオープンソース戦略を推し進めている。2017年5月には、車載LinuxであるAutomotive Grade Linux(AGL)を同年夏に北米で発売する新型「カムリ」の車載情報機器に採用することを発表した。オープンソースであるAGLと、同じくオープンソースのSDLを組み合わせることにより、同社独自のコネクテッドカープラットフォームの展開を進めやすくしたい考えだ。
AIを活用した音声認識技術では、スマートホームの分野でアマゾン(Amazon)とグーグル、アップルが大きな存在感を示している。これらのスマートホーム向けのサービスは、今後はコネクテッドカーとの連携が想定されている。LINEはトヨタ自動車と協業することで、先述の3社を捉えていきたい考えだ。音声認識技術は、各国地域で使用されている言語への最適化も重要であり、LINEは自社の強みを生かせる日本や韓国などアジア地域での展開を加速していくとみられる。
なお、SDLコンソーシアムにはゴールドメンバーとしてアマゾンが参加している。SDLを立ち上げたフォードがアマゾンの音声認識技術「Alexa」の採用を決るなど、SDLコンソーシアムの中で優位なポジションを築いていた。今回、トヨタ自動車と協業するLINEという競争相手の登場により、音声認識技術で最も有力といわれるアマゾンがSDLコンソーシアムでの活動をより強化していく可能性もある。
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