スマートフォンなど小型のIoTデバイスが位置や移動速度といった情報を得るために利用しているのが、各種のセンサーです。非常に小さなそれらはMEMS(微小電気機械システム)と呼ばれ、IoTの実現に欠かせない要素となっています。
スマートフォンは一見IoTとは関連がなさそうに見えますが、立派なIoTデバイスです。GPS信号で位置を測定し、歩いた道を地図上に表示するサービスなら、位置情報をクラウドに送信して地図情報を生成し、その結果をディスプレイに表示しています。これはIoTの基本的な構図に従ったシステムといえます。
加速度センサーを使えば、歩行の振動を検知することで歩数を測定することもできます。機械的な出力を行う機器であるアクチュエータとして、バイブレータも内蔵しているので、予定した歩数を歩いたことを振動で知らせることもできます。なお、バイブレータの実体は偏心した重りを持つモーターです。
第5問ではセンサーを動作させる組み込みシステムについて説明しました。ここでは、センサーの代表として物体の移動速度の変化を検出する加速度センサーや、物体の回転を検出するジャイロセンサーなどを説明します。
スマートフォンに内蔵された加速度センサーやジャイロセンサーは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれます。MEMSはミクロン単位の機械構造と電子回路を併せ持つ微細機械のことで、マイクロマシンとも呼ばれます。MEMSの技術は意外に古く、MEMSを用いた圧力センサーは1970年代から開発されています。
バネでつるされた重りは加速度によって位置がずれます。この位置のズレを静電容量の変化などで検出し、そこから加速度を求めます。加速度センサーはMEMS技術を用いて、バネや微細な重り、測定回路などを作成しています。X軸、Y軸、Z軸の3軸を1つのセンサーで検出する3軸加速度センサーを用いれば、静止状態で重力加速度の方向、つまり上下方向を知ることができます。
可動部と固定部の間の静電容量から、ズレを調べる「静電容量検出方式」は温度特性の良さが特徴です。可動部を支持するバネ部分に半導体ピエゾ抵抗を用い、ひずみによる抵抗値の変化を検出する「ピエゾ抵抗方式」もあります。
「熱検知方式」は重りを使わない方式です。気体分子を密封してヒーターで過熱し、発生する対流現象を温度変化で検知しています。消費電流が大きくなりますが、可動部分が無いので耐衝撃性に優れます。
加速度センサーは速度変化を検出しますが、ジャイロ(角速度)センサーは物体の回転を検出します。従来のジャイロセンサーは「地球コマ」のような回転体を用いる機械式のもので、航空機などで用いられましたが、スマートフォンではMEMS技術を用いたジャイロセンサーが用いられています。自動車の横滑り検出や、デジタルカメラの手ブレ検出などにも用いられます。
3軸角速度センサーでは前後軸、左右軸、上下軸の回転をロール(横揺れ)、ピッチ(縦揺れ)、ヨー(船首・機首揺れ)と呼びます。車の横滑り検出にはヨーの1軸を検出するヨーレートセンサーを用いますが、スマートフォンやゲーム機では3軸の回転を1つのICで検知する3軸ジャイロセンサーを用います。
振動式ジャイロセンサーは、振動している素子に働くコリオリの力を静電容量の変化として検出します。コリオリの力は回転する物体が移動する時に横方向に受ける力のことで、台風の渦などに影響を与える力です。振動する素子とその周辺回路はMEMS技術で1つに集約されます。
加速度センサーやジャイロセンサー以外に、GPSセンサーや照度センサー、接近センサーなどがスマートフォンには用いられています。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)は人工衛星を利用して地球上における位置を正確に求めるシステムです。24個以上のGPS衛星が高度約2万kmの起動に配置され、3つの衛星からの電波を受信することで経度と緯度を、4つの電波からさらに高度を求めることができます。以前は精度が100mに制限されていましたが、現在は電波の状況にもよりますが単独測位で10m程度の精度です。
照度センサーは周囲の明るさ(照度:Lux)を測定するセンサーです。照度センサーを用いると夜間にバックライト照度を自動的に切り替えることができます。接近センサーは通話時に耳を本体に近づけた時にディスプレイをOFFするために用いられます。赤外線発光素子と受光素子を用いたものなどがあります。
それでは、IoT関連の知識・スキルアップに役立つ問題を出題します! 今回はセンサーに関連する設問となります(※)。
問題(11):
加速度や傾き、方向などを検出するセンサーに関する説明として正しいものを1つ選びなさい。
※本連載の設問が実際のIoT検定にそのまま出題されるわけではありません。
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