「ロボットの頭脳に人工知能」と書くと据わりは良いが、両者の出自を考えるとその相性は決して良いものとはいえなかった。“意図をくみ取る”ロボットの実現に一役買いそうなのがディープラーニングを用いた「行動学習」だ。
共に急速な発展を遂げている「ロボット」と「人工知能」だが、その相性は決して良いとはいえなかった。これまでの発展を眺めると、前者は機械電気の研究成果、後者は情報通信の研究成果かに端を発しており、それは物理モデルとグラフィカルモデル、微分方程式と確立方程式の違いに言い換えることもできる。
「ロボットの頭脳に人工知能」と書くと言葉としての据わりは良いが、両者の出自が異なる以上、なかなかその接点が生まれていなかったのがこれまでだったといえる。しかし、その状況に変化が生まれつつある。そのきっかけとなったのが、ディープラーニングの発達だ。
人工知能学会と日本ロボット学会理事の理事も務める、早稲田大学の尾形哲也氏(早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科 作業技術総合研究所 人工知能研究センター)がIEEEのプレスセミナーにて「ディープラーニングのロボットへの応用とその展望」と題した講演を行い、ロボットと人工知能の橋渡し役として、ディープラーニングがどのような役割を担うかを解説した。
トップ棋士に勝利したAlphaGoやGoogleによる画像検出(いわゆるGoogleの猫)で近年注目を集めるディープラーニングだが、その発想自体はディープニューラルネットワークとして以前より存在した。
ディープニューラルネットワークは階層を深くすればパフォーマンスは上がると考えられていたものの、誤差の逆伝播問題もあり局所解や過学習に陥りやすかった。しかし、ビッグデータの普遍化による学習データの増加、計算機能力の向上、学習アルゴリズムの改良などで改善された。
そして自らが特徴量を学ぶディープラーニングは画像認識や音声認識の分野で有効性が確認されるに至り、画像認識人工知能コンテスト「Imagenet Large-Scale Visual Recognition challenge(ILSVRC)」ではついに人間を超える成果を出すまでとなっている。
機械工学科の出身ながら、脳科学や知能情報、人工知能と自身の研究領域を広げてきた尾形氏は人工知能とロボットの出自の違いから「ロボットと人工知能の相性は良くない」といわれると前置きしながら、「ディープラーニングが一番結果を出しているのは画像関連だが、音響や運動やさまざまな要素を統合したロボットにも応用できるだろうと考えている」と述べる。
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