旭鋳金工業
未知なるジェネレーティブデザインを前に砂型鋳造の限界に挑んだ町工場のプロ魂(2/3 ページ)
「実現不可能」を「実現可能」に――試作砂型鋳造の限界を超えた瞬間
通常の砂型鋳造の大まかな流れは、まず製品の形を砂型に取るための模型(旭鋳金工業では木型としてケミカルウッドを使用)を型枠と呼ばれる枠に配置し、砂を敷き詰めていく。その際、湯(溶かした金属)が流れる部分に当たる箇所はきめの細かい砂、それ以外は粗い砂と段階的に使用し、同時に湯口(溶けた金属を流し込む口)/湯上り(湯が型の中に回って最後に上がってくる口)も形成しておく。砂を敷き詰めたら複数箇所に小さな穴を開け、そこから二酸化炭素を注入。こうすることで砂に含まれる粘結剤(水ガラス)が固まり、砂型全体が硬化する。その後、型枠と模型から出来上がった砂型を慎重に抜く。
製品内の中空部分には中子(なかご)と呼ばれるパーツが用いられ、出来上がった砂型同士をかぶせる前にセットし、上型と下型をずれないように合わせる。そして、上型と下型を固定した後、湯口部分から溶けた金属を桶で流し込む。完全に冷えるまで待ち、最後は鋳込んだ砂型をハンマーで壊して(バラシという)中身を取り出し、仕上げ処理に回す。これが一般的な砂型鋳造の流れだ。
これに対し、今回のジェネレーティブデザインを用いた試作砂型鋳造は、模型の代わりにワックス材料(Formlabs製Castable Wax Resin)で造形された3Dプリント品を用いる。通常であれば、ロストワックス鋳造に近いアプローチで製造しなければならないが、相手は複雑な形状のジェネレーティブデザイン。そこで大林氏は、過去の経験と代々受け継いできた技法を組み合わせた“あるアプローチ”を考案(特許出願を検討中)。この方式により、見事、砂型アルミ鋳造のジェネレーティブデザインパーツを6日間という短期間で完成させたのだ。
「取りあえず試してみるという次元ではなく、1度で絶対に成功させなければならなかった。そのためには、これまでの経験や受け継いできた技法をうまく組み合わせて実現するしかない。この作業をしている間、本当に誰にも会いたくなかった」と大林氏は苦笑する。
そして後日、出来上がった砂型アルミ鋳造のジェネレーティブデザインパーツを目にしたWHILLの平田氏は、驚きのあまり言葉が出なかったという。「いろいろなところに依頼して『できない』といわれてきたものが実際に自分の目の前にある。まるで現実を見ている感じがせず、どうやって作ったのか全く想像できなかった」(平田氏)
これが通常の工業デザインの枠内であれば、あるいは単に3Dプリンタで試作しただけのものであれば、ここまでの感動はなかったはずだ。ジェネレーティブデザインという新しい設計アプローチを用いてデジタル世界で実現したモノを、そのままの形で、実際に試作砂型鋳造で作り上げたからこそ、言葉を失うほどの驚きと喜びが得られたに違いない。
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