Industrial Cybersecurity 2018
「産業システムのセキュリティ対策、課題は山積み」――カスペルスキーが警鐘(1/3 ページ)
Kaspersky Lab(カスペルスキー)は2018年9月20~21日、産業システムのセキュリティにフォーカスしたカンファレンス「Industrial Cybersecurity 2018」をロシア・ソチで開催した。
古くは2010年に報告された「Stuxnet」、最近では安全計装システムをターゲットにした「Triton」のように、産業制御システム(ICS)をターゲットにしたサイバー攻撃は、単なる想像ではなく現実の脅威となりつつある。ロシアのKaspersky Lab(カスペルスキー)は2018年9月20~21日にかけて、そんな産業システムのセキュリティにフォーカスしたカンファレンス「Industrial Cybersecurity 2018」をロシア・ソチにて開催した。
同社でIndustrial Cybersecurity Business Development担当長を務めるGeorgy Shebuldaev氏は、デジタル化の進展に伴ってITとOTのつながりが増し、ICSを取り巻くリスクが上昇していることを指摘。必要以上におびえることはないが、現実を直視して適切に対処することの重要性を訴えた。
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増加し続けるICSをターゲットにしたマルウェア、「マイナー」も登場
カスペルスキーは、Industrial Cybersecurity 2018に併せてプレスブリーフィングを開催し、ICSを取り巻く状況を説明した。
Shebuldaev氏はまず、ITの世界におけるセキュリティ対策とOT(Operational Technology)の世界のそれとにギャップがあることを指摘し、特に「インシデント対応の手段を用意している組織は、ITの77%に比べ、OT/ICS領域では52%にとどまっている」と述べた。
このギャップの背景には、「OTはエアギャップによって外部と切り離されている」という伝統的なアプローチに対する信頼があるそうだ。だが実際には「デジタル化の進展に伴って、ITとOTとがつながるようになっている。その上、この分野に関するスキルを持った人材も足りなければ、専用の予算を割り当てている企業も過半数に満たない」(Shebuldaev氏)
カスペルスキーでは、ICS/OTにフォーカスしたリサーチ部門「ICS CERT」を設け、制御機器や関連プロトコルのセキュリティ調査を行っている。そのリーダーを務めるEvgeny Goncharov氏によると、ICS CERTでは既に160種類以上の脆弱(ぜいじゃく)性を発見してきたという。
ICSをターゲットにしたマルウェアの傾向
Goncharov氏はまた、ICSをターゲットにしたマルウェアの傾向についても説明した。
同社の調査によると、2017年上半期は調査対象の36.6%で、下半期は37.7%で、そして2018年上半期は41.2%でサイバー攻撃が観測され、「激増」ではないものの確実に増加傾向にあることが分かるという。ICSをターゲットにしたマルウェアファミリーの数も、2017年下半期から約400種増加し、2018年上半期は2800種に上ったという。
国・地域別に感染傾向を見ると、東南アジアや南アジア、アフリカの国々での感染率が50~60%台と高く、逆に西ヨーロッパや北米は20%台にとどまる。Goncharov氏はこの分布について、「GDPとの相関が高く、貧弱なインフラやファシリティしかない国での感染が高いのではないか」と解説した。
また、ICSをターゲットにしたマルウェアの種類にも変化が見られる。近年ITの世界で増えているのと同じように、データを暗号化して金銭を要求するランサムウェアや、感染先のリソースを勝手に利用して仮想通貨のマイニングを行うクリプトマイナーなどが見られるようになった。
ICS CERTが特に着目しているのが、「組み込みシステムやICS上で不必要なソフトウェアが動作し、それがシステムをリスクにさらしている」(Goncharov氏)という状況だ。例えば、本来ならばICSには不要なはずの「Webブラウザ」が調査対象の37.7%で、「Visual Basic」が9.7%で動作していることが判明した。
その一例が、遠隔からの操作を可能にするRemote Administration Tool(RAT)だ。RATは、管理者や機器ベンダーによって、リモートメンテナンスなどの正当な目的で利用される一方、攻撃の糸口になることもある。シニアセキュリティリサーチャーのKirill Kruglov氏によると、このRATも攻撃に悪用されるポイントの1つになっているという。
例えば、従業員やオペレーター、インテグレーターなどがリモートからVPNでアクセスしてメンテナンスを行うケースがあるが、万一そのPCがマルウェアに感染していればそこからOT側に拡散したり、長期にわたって潜伏したりする恐れがある。同社の調査によると、対象ICSの31.6%でRATが動作していた。そして悪いことに、そのうちの18.6%はICSソフトウェアのインストール時に同時に導入されており、「ユーザーにとっては隠れた存在になっている」(Kruglov氏)という。同氏は皮肉も込めて「RDPは、いわば“Ransomeware Deployment Protocol”だ」とも述べている。
一連の調査結果を踏まえてShebuldaev氏は「伝統的な『エアギャップ』のアプローチも、デジタル化によって崩れつつある。その上、ICSセキュリティの知識を持つ専門家の数も足りなければ、予算も十分とはいえない」と現状を指摘。これに対し、カスペルスキーでは、脆弱性検査などの専門的なトレーニングや顧客向けのトレーニング、アセスメントやインシデントレスポンス、脅威インテリジェンスといった専門サービス、さらにはICSに特化したエンドポイント製品やネットワークセキュリティ製品を組み合わせ、対策を支援すると説明した。
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