大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
収束しない現代的CPUの脆弱性と、苦境を脱せないQualcomm(3/3 ページ)
2018年3月 ついに大統領令が発令、Broadcomは買収を断念
買収はしりぞけるものの、苦境に陥るQualcomm
2018年3月までの一連の動きは、Broadcomによる猛攻に、防戦一方のQualcommがじりじりと押されている状況といえる。ちなみにQualcommの株価、2018年3月29日時点での終値は1株55.41ドルであり、いかにBroadcomが高いプレミアをつけていたかという話でもある。実際、Broombergの報道などでは、Broadcomの提案に好意的な株主が多かったようで、もし何事もなく株主総会が開催されていれば、Broadcomの提案が通った可能性はそこそこ高かったようだ。
これをひっくり返したのはQualcommのロビー活動、という見方が強い。実際、2018年3月5日にBroadcomが発表した様に、CIFUSが株主総会の直前で介入してきたというのは、それなりの理由があってのことであろう。もちろん、Broadcomがロビー活動をしてこなかった訳ではない。2017年11月3日の本社移転の発表はトランプ大統領も同席して行われており、Qualcomm買収への布石であったことは間違いない。ただ、土壇場でQualcommのロビー活動パワーに負けた、というあたりだろうか。
ところでQualcommの3月9日の動きは、いわば第二幕である。Paul E. Jacobs博士は、Qualcomm創業者であるIrwin M. Jacobs氏の息子であり、2005年~2014年にはCEOも勤めていた人物だが、彼はQualcommの上場を廃止する考えを持っていたようだ。
Broadcomの買収攻勢は、自身を含むQualcomm取締役の信認低下を浮き彫りにした。その対策として上場を廃止するのは1つのアイデアである。Jacobs博士は複数金融筋と資金調達に向けて話し合いをしているという報道(Broomberg:Qualcomm Ex-Chairman Seeks Funding for Buyout, FT Reports)もあり、そのスポンサーにはソフトバンクが含まれるという観測もある。
ただ、この買収(自社株買戻しによる上場廃止)が失敗したとしても、Qualcommの現取締会や経営陣にとって、状況は厳しい。Broadcomが買収計画を発表する直前の株価は51ドル程度、買収騒動の最中は、これが65~70ドルまで高騰したが、現在は再び55ドル程度まで落ちている。この状況を喜ぶ株主はそう多いとは思えない。
加えてNXPとの買収はいまだに中国当局が留保している関係で先に進まず、それとは別にAppleとの訴訟やEUによる制裁など問題は山積みである。正直、Broadcomに買収されたほうが楽だったのでは?とすら思える苦境に陥っているのが、現在のQualcommというわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] 自動車業界には好機 脱炭素×コスト削減×現場改善を実現するエネルギー戦略 -
製品資料
[株式会社 Green AI] 脱炭素投資をすぐ回収したい 自動車業界にも有効なCO2削減アプローチ -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
CAE解析をAIエージェントに任せてみた 人は何を担うのか
-
2
「見て覚えろ」が通じない時代 製造業の保全技術はどのように継承すればよい?
-
3
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:製造現場にフィジカルAIをどう実装するか――電子版2026年9月号
-
4
スマート工場動向調査2026
-
5
はじめての化学工学まとめ(Part1)
-
6
QC活動の形骸化はどう防ぐ? 実効性のある業務へ転換する3つの解消策とは
-
7
自律走行搬送ロボット(AMR)の位置推定と自律走行はどこまで高精度化できる?
-
8
動き出したファナックの「フィジカルAI」
-
9
製造現場などを支える状態監視システム サンプリングの位相ずれを減らすには?
-
10
【読者調査結果】製造業の脱炭素動向調査2026
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー