クアルコム サンダーソフト
クアルコムが「モジュール」でIoT機器の市場投入を加速させる
SnapDragonでスマートフォンの世界で大きな存在感を持つクアルコムが、本格的に「IoTの世界」へ参入する。参入の切り札は機器に応じた「モジュール」だ。
スマートフォン向けSoC(Systemo On Chip)で大きなシェアを持つクアルコムが、本格的に「IoTの世界」へ参入する。既に産業機器やIoTデバイスを対象としたSoC「Snapdragon 410E」「Snapdragon 600E」を販売しているが、加えて、組み込みソフトウェアのサンダーソフトと協業することで製品の市場投入を加速させる考えだ。
「モジュール式」でIoT機器の開発を加速させる
言うまでも無いが、同じSoC提供といってもスマートフォン向けとIoTシステム向け(組み込みシステム向け)では供給側のとるべき方針は大きく異なる。IoT/組み込み向けへの供給については長期の製品供給や保証、売るだけではない細かな技術サポートなどが求められる。
クアルコムはSoCに関しては長くスマートフォンメーカーを対象に、2~3年サイクルで新製品を投入するという体制で供給してきたが、2015年に開発ボード「DragonBoard」、2016年に組み込み用SoC「Snapdragon 410E」「Snapdragon 600E」をArrow Electronicsを販売パートナーとして提供開始しており、徐々にIoT/組み込みに向けての供給体制を整えてきた。その流れを加速させるのが、サンダーソフトとの協業である。
サンダーソフトは北京に本拠を構えるスマートデバイスの設計や製造、プラットフォーム開発を手掛ける企業であり、2016年末にフィンランドの車載システムソフトウェア企業であるRightwareを買収したことでも知られる。クアルコムとはジョイントベンチャー「Thundercomm」を設立しており、ThundercommではクアルコムのSoCを利用した、ドローンやVR、ウェアラブルなどに向けたプラットフォームの開発を行っている。
そのプラットフォームが「TurboX SOM」である。これはSnapDragonを中核に、デバイスごとに適したOSや機能、アルゴリズムなどを実装したモジュールで既にドローン向け「TurboX Drone SOM 187」やVRデバイス向け「TurboX VR SPM 288」、インテリジェントカメラ向け「TurboX Camera SOM 185」などが開発されている。
IoT/組み込み機器においては基本的に少量多品種の製品開発(「汎用機ではなく、専用機としての組み込み機器開発」ともいえる)が求められるため、設計開発から量産までには時間とコストが必要とされる。製品開発元はTurboXを導入することによって、開発する製品の中心的な機能を全てモジュールとして導入し、アプリケーションや量産の準備に力を注ぐことが可能となる。
既にこうした開発・生産手法には前例があり、クアルコム自身もスマートウォッチ向け」や「ホームデバイス向け」といったレファレンスデザインを提供している。しかし、サンダーソフトのTurboX SOMではレファレンスデザインの提供にとどまらず、ハードウェアのカスタマイズやソフトウェア開発、製品の試作と量産までも請け負うことができる体制が構築されており、HOVERの“自撮りドローン”こと「Hover Camera Passport」やSKtelecomの家庭用スマートカメラ「view sence」などがTurboX SOMを利用して開発され、現在も量産されている。
この用途別モジュールとも呼べるTurboX SOMであるが、販売に関してはArrow Electronicsなどの販売代理店を用いず、サンダーソフトの直販のみとなる。この理由についてサンダーソフトの日本法人であるサンダーソフトジャパンの代表取締役社長 今井正徳氏は「サンダーソフトはモジュール開発だけではなく、最終製品に組み込まれるまでのサポートが強み。販売後のサポートを考慮すると、TurboXSomについては当面、直販のみとしたい」と意図を述べた。
現在のところこのTurboX SOMの対象製品はコンシューマー領域の製品であるが、クアルコムCMDAテクノロジーズ 副社長 須永順子氏が「クアルコムの狙うIoTとは、モバイル端末とオートモーティブ以外の全て」と述べるよう(モバイル端末とオートモーティブは別枠との趣旨)とクアルコム製品の守備範囲は広い。サンダーソフトジャパンの今井氏も「現在、機能安全や認証までのサービスは提供できていないが、将来的な構想には入っている」とTurboX SOMを産業機器や医療機器にも提供していきたい意向を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業戦略(組み込みソフト)
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー