大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「スマホの巨人」から脱却したいQualcommの思惑(1/2 ページ)
スマホ向けSoCで大きな存在感を持つQualcommだが、ここ最近では「脱スマホ」の動きを強めている。組み込みの話題を中心に、Qualcommの脱スマホ戦略を浮き彫りにしてみたい。
Qualcommはスマートフォン業界の「巨人」であって、そのSoC(System On Chip)は多くのスマートフォンに採用されている。またSoCだけでなく、モデム単体でのシェアとプレセンスもまた非常に大きい。そしてまた、巨人であるからこれも必然的にではあるが、他のメーカーや政府との摩擦も少なくない(長期化するAppleとの法廷闘争は象徴的である)。
それはさておき、今回のテーマはそのQualcommと組み込みシステムの関わりである。
スマホ「以外」で存在感を示したいQualcomm
Qualcommとしては当然ながら、自社のSoCをスマートフォンやタブレット以外にも拡販したい。スマートフォンのマーケットはある意味PCと似ており、売り上げそのものは大きいが短期集中型であり、最新製品が旬の時期はせいぜいが1年未満である。下手をすると半年程度のサイクルで製品が入れ替わる事もある。おまけに、その短いサイクルで確実に製品が売れる、という保障もない。
PCと違うのは、SoCが単体で売られる事はなく、スマートフォンやタブレットに実装される形で販売されるために基本は端末メーカーとの契約ベースでの販売になり、数量の上下は緩やか……かと思うと必ずしもそうではない。端末メーカーがいきなりあるモデルの販売を中止したり販売計画を間際で見直したり、という事態も珍しくない。PCほどではないにせよ、変動は激しいのだ。
そうした事もあって、Qualcommは従来より積極的に「スマートフォン/タブレット以外」の用途提案を模索してきた。
例えば2014年に「あとからピント位置が変えられる」という新機能で話題になったLYTROの「ILLUM」。このILLUMにはSnapdragon 800が搭載されている。VRヘッドセットにも採用事例は多い。現在はSnapdragon 820を搭載した製品が多いが、同社は既にSnapdragon 835をベースにした開発キットをリリースしているので、今後はこちらを利用した事例も増えてくるだろう。
あるいは2016年のCESではSnapdragon 820ベースのカーナビを展示するなど努力はしているものの、本格的な拡販というほどの成果は上がっておらず、特定用途向けの域を出ない。またMicrosoftと協業して「Windows 10 on Snapdragon」を開発中で、2017年中にいくつかのメーカーから製品が投入される予定ではあるが、こちらは分類としてはPCになるわけで、本質的な問題の解決になっていない。
最新の話では、2017年11月1日に発表されたソニーのaiboがSnapdragon 820を搭載している。これも確かに組み込みシステムではあるのだが、一般的とは言いにくい。なので、もう少し幅広く販路を広げないとロングテールの構築には程遠い。
需要拡大とロングテールの実現を目指すQualcommは2016年9月、Arrow Electronicsとの協業を発表している。Snapdragon 410EとSnapdragon 600Eを、販売代理店から購入できる体制を整えた。実はこの協業、単に販売だけではない。Arrow Electronicsは単にチップの販売のみならず、SoM(System On Module)/SBC(Single Board Computer)の販売も手掛けており、加えて言えばQualcommの開発したボードコンピュータ「DragonBoard 410C」はArrow Electronicsが独占販売を行っている。
販売にはサポートが付き物であり、組み込みシステムに付き物のサポートやトラブル対応などはArrow Electronicsがカバーする形になっている。更に、Snapdragonベースのシステムの開発に関してはサンダーソフトと富士ソフトウェアが協業しており、ここがソフトウェア開発などを提供することになる。
QualcommにはSnapdragonを組み込み向けで使ってもらうために必要なエンジニアリングサービスを提供できる体制もノウハウも無い。だからといってこれを拡充するのを待っていたら、いつまでたっても組み込み業界には参入できない。まずはEmbedded業界で利用してもらうという実績を作るためにも、当初はサポートに関しては外部の企業に助けを借りる形で、まずは採用事例と出荷量を増やすのが先と判断したのは正しいと思う。実際のところ、売り上げも立っていない分野に向けて、結構なコストとなるサポートエンジニアを大量採用するというのはあまりにハイリスクな賭けになるからだ。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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