大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「スマホの巨人」から脱却したいQualcommの思惑(2/2 ページ)
組み込み業界向けに参入を果たしたQualcommは、それなりに実績を積み上げている様だ。筆者が耳にした範囲では、Raspberry Pi 3などを使ってプロトタイプを構築したシステムでも、テスト中に耐久性などに問題が出て、量産段階でDragonBoard 410cに切り替えたなんて例もあるようだ。
QualcommとVIAの蜜月関係
ただし、Qualcommが組み込み用として提供している「Snapdragon 410E」は1.2GHzのCortex-A53×4、「Snapdragon 600E」でも1.5GHzのKrait 300×4で、IoTのエッジノードデバイスには十分なパフォーマンスではあるが、それ以上の用途を考えるとやや非力である。
これもあってか、よりハイスペックな「Snapdragon 801」を搭載したSoMをサンダーソフトと共同開発すると同時に、サンダーソフトとの協業をより深める方向での展開を行っている。もっとも、この発表の際に示されたスライド(下図)を見てみると、既存の組み込み市場向けというよりは、新規に立ち上がる市場向けといった感じもあり、まだ既存の組み込み市場向けに対して、十分な手を打てていないという印象を受ける。
こうした感触を、Qualcommの中の人も感じていたのではないだろうか?その結果としての同社の次なる手が、台湾VIA Technologiesとの協業(Snapdragon 820搭載のSOM、VIAから)である。
VIA Technologiesという名前に懐かしさを覚える読者もおられよう。かつてはIntel互換チップセットメーカーの雄であり、S3やCentaur Technologyらを傘下に、互換CPUやGPUビジネスにも参入していたからだ。
同社は2001年頃から組み込み向けに会社の方向性をシフトし始めており、2003年に終結した同社とIntelの特許訴訟の和解条件として、Intel互換の製品を2008年まで販売できることになったが、このあたりで完全にIntel互換製品ビジネスから撤退。2005年あたりからは完全に組み込みを軸とした製品展開に切り替えている。
とはいえ、この時点ではまだx86がメインであった。当時、ちょっと大型の組み込みシステムだと、x86+Windowsという環境が多く、ここに向けて同社は小型・低消費電力のx86 SBCを多数投入すると共に、ボードだけでなくシステムレベルのソリューションの提供を行うようになる。
またWonderMediaという子会社を設立、ここでARMベースのSoCの開発もスタートしており、ここで製造されたCortex-A7/A9ベースのSoCをベースにしたSoM/SBCをVIA Technologiesがやはり販売すると共に、ソリューションやコンサルテーションの提供も行っている。近年はNXPのi.MX 6シリーズSoCを搭載したSoM/SBCも提供するといった具合だ。
同社の強みはSoC開発のノウハウを抱えていることで、現在も子会社であるVIA Alliance Semiconductor経由で中国のZhaoxinに対してエンジニアリングサービスやIPの提供を行うなどしており、プロセッサやSoCの回路レベルでのノウハウや、これに対応したOSのサポートといった、通常よりも一段深いレベルでのサポートやサービスを提供している。
昨今はx86よりもLinux/Androidの方が組み込み向けでは主流になりつつあるが、既に同社はWonderMediaやNXPのSoCでこの分野にも十分なノウハウが提供できている。2016年に発表になった、JapanTaxiとの協業でもこうした特長は遺憾なく発揮されており、Androidベースといいながら独自仕様のステータスバーなど、通常では手が出ないようなカスタマイズを施したスペシャルバージョンがこのシステムには導入されている。
こうしたノウハウを持ったVIA Technologiesであれば、Snapdragon 820をベースにした「より深い」カスタマイズが可能になる、とQualcommは見込んだようだ。逆にVIA Technologiesからすれば、よりパワフルなSoCをソリューションとして提供できる訳で、従来以上に狙えるマーケットが広がることになる。そんな訳で、この組み合わせは両社にとってWin-Winの関係になる訳だ。
NXPの買収は
長期的には、VIA TechnologiesからQualcommに対してもっと広範な、組み込み向けシステムのサービスとかノウハウの提供もありえるのかもしれない。ただ現在も審議が続くNXPの買収が成功すれば、長期的にはこうしたサービスやノウハウはNXPから得られるわけで、そのあたりをどうQualcommが勘案しているのかは分からない。
この記事では、EC当局は2017年10月17日までに判断を下す予定とされていたが、11月に入った現在もまだこの判断は下されていない。あるいは今回のVIA Technologiesとの協業は、NXPの買収がご破算に終わった場合に備えた安全策の一環なのかもしれない。そんな風に考えると、また別の風景が見えてくるのが面白いところだ。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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