IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(8)
間違いだらけの組み込み系品質管理、面倒な品質管理を楽しむコツ(4/4 ページ)
間違いだらけの組み込み系品質管理
しかし組み込み系品質管理は間違っていることが多い。メカやエレキの品質管理をそのまま持ち込んで、柔らかいソフトが固くなってしまっている。逆にエンタープライズ系のソフトウェア品質管理をそのまま適応して痛い目に遭う例もある。
エンプラ系は組み込み系と比較して、ある部分ではおおらかで素朴な品質管理をしていて、一方では大量で管理できそうにもないモノまで管理している。その違いを知るには、時間の基本単位や長さの基本単位を聞いてみるといい。秒単位なのかミリ秒なのか、マイクロ秒なのか。センチなのかミリなのか。組み込み系はミリオタが多い(別の意味でも)。
メカやエレキのハードウェアの品質管理と徹底的に違うのは、組み込み系ソフトウェアは「柔らかい」ということである。固い品質管理では柔軟に対応できない。仕様は毎週変更され、バージョンアップはネットを通じて日々刻々と実施される世界での品質管理はハードウェアのそれとは根本的に違う。
組み込み系とエンタープライズ系の品質管理が決定的に違うのは、組み込み系ソフトウェアがハードとともにあり、品質管理をする際に両者を分離できないことである。ソフトウェア単独でないので抽象的に管理できず、金物のような具体的なものと一緒に具体的なものとして管理する。品質に還元論(*)は効かない。全体を捉えないと品質は語れない。機能適合性も性能効率性も使用性も保守性も還元論では説明できない。ハードとソフトが一体になった状態で品質を管理する必要がある。
(*) 還元論 全体を部品に還元して、部品で全体を説明する方法。一般的な科学的手法。
このように組み込み系ソフトウェアの品質管理は、ハードウェアとソフトウェアという二面性を持つために、片一方だけの品質管理では対応できない。しかし、現実ではどちらかの品質管理を実施していることが多く、これが多くの悲喜劇を演じることになり、品質管理は組み込み系から忌み嫌われ、禁句になる。
組み込み系品質管理のコツは、組み込み系ソフトウェアをある時はハードとみて、あるときはソフトでみるようにすることだ。ハードとして見た場合は加速度テストを実施して頑健性や耐久性(*)などを見るだろう。もちろん組み込み系ソフトウェアではこれらも要求される。ソフトとしてみた場合には、セキュリティや移植性などのソフトウェアに特化した品質も要求されるだろう。
(*)ソフトウェアの耐久性 ソフトウェアはハードウェアのように物理的存在でなく抽象的に存在しているだけなので、永遠に朽ち果てない耐久性を持つ。このように思われているが実際は、OSが古くなりセキュリティの脆弱性に対応できない、古くて誰も知らない・使えない、APIが変わってしまい接続ができないなどでソフトウェアも摩耗する。ソフトウェアの耐久性は永遠ではなく、消費期限や賞味期限がある。
混沌とする IoT の品質管理
IoTの品質管理は混沌としている。IoTは未確定なものが多い。機能だけでなく、接続されるIoTデバイスやITシステム、飛び交うデータ、通信を支えるネットワーク、これらが不定で不安で不信である。性能効率性も使用性も保守性もセキュリティも何もかもが心配である。この中で、誰がいつ何をどのようにどこで品質管理をすればいいのか。
IoTは多くの場合、一般ユーザーが使う。それもテレビや冷蔵庫と同じ感覚でIoTを使う。ここから分かるように、IoTに要求される品質はソフトウェアのそれや電気器具における組み込みソフトウェアとも違い、日用品や文房具のような品質が求められる。
鉛筆やティッシュを使うとき、私たちはセキュリティを気にしない。使用感も「普通」でいい。IoTの産物が普遍化する中で、IoT開発に際しての品質管理で、少しでもユーザーに負担をかけてはならない。つまり、品質管理はユーザー体験に一切の影響を与えてはならない。IoTにはこのオキテが厳しく覆いかぶさってくる。
IoTの「未確定さ」と「意識させない」という要求から、IoTの品質管理は、どのような変化にも柔軟に対応でき、しかもそれを周りに感じさせてはいけない品質管理ということになる。IoT品質のデータを固定的な表で管理するのは向いていないだろう。柔軟性のあるリンクトデータで管理するのが望ましい。ユーザーに違和感を与えてしまうから、品質データの収集を頻繁にしてはいけない。品質データはユーザーが使っていないときに間欠収集することになる。
しかしこのように言うのは簡単であるが、これを行うのは難しい。IoTの品質管理は組み込み系の品質管理よりもさらに難しい。しかしIoTも経験が積み重ねられ、その品質管理も経験が重ねられ、向上していくだろう。次回は最終回になるが、IoTも含んで、組み込み系ソフトウェアの品質活動の行動について見ていくことにする。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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