コラム
問われるaiboの次、ソニーは「エモい会社」に返り咲けるか(2/2 ページ)
トランジスタラジオやウォークマン、プレイステーションやVAIOなどを生み出しながらも、5200億円の赤字(2012年3月期)に陥った企業のかじを取ることになった新社長は就任時、既存事業の強化と構造改革、それに新事業の創出を方針として掲げた。
アプローチとしては奇をてらうことない直球である。ただ、前任者がリアリスティックな「選択と集中」を発信したのに対し、新社長はエモーショナルな「KANDO(感動)」を各所で語り始める。
「KANDO(感動)」を打ち出す新社長
平井社長が「KANDO(感動)」を発信し始めたのは2013年の春先からだと記憶している。経営者として収支を追うことは責務であり、ほぼ年中行事となった早期退職プログラムの実施を始め、テレビ事業の分社化、PC事業の売却など、暗い印象の話題もありながら、「人をどこまで驚かすことができるか」といういわば“感動軸”での製品開発をトップがアピールし続けたことは、ソニーがかつての輝きを取り戻しつつあるのでは?という印象を与えた。
海外のさまざまな展示会や講演で平井社長は、自社製品や方向性についてEmotionalやFantastic、Marvelousなどではなく、「KANDO」(もしくは「Wow」)という言葉で表現した。それは革新的な製品を出すだけではなく、どれだけ心情に訴える製品であるかを自社の目標とするためであり、モノありきではなくコトありきへの変化といえる。
レンズスタイルカメラ「QX」やハイレゾウォークマン、デジタルカメラ「α7」、超短焦点プロジェクター、アクションカムなど、一目見て、あるいは使ってみると驚きや感動が先に立つ製品、平井社長が位置付けるところである「KANDO」を軸とする製品群が本格的に姿を現したのは2013年以降の話である。
こうしたソニーらしさのある製品開発と株主資本利益率(ROE)重視の経営判断などもあり、2017年5月には「営業利益5000億円を狙える力が付いてきた」と述べるレベルにまで企業体力が回復した。そして2017年11月、「今こそ、愛情の対象となるロボットに取り組む時期だ」と新型アイボを発表する。企業としての自信回復と歩調を合わせて、これまでのソニーで最もKANDO的であった製品の復活が宣言された瞬間だった。
「ソニーらしさ」の難しさ
ソニーらしさを体現する製品としてはウォークマンやプレイステーション、ハンディカムなどの名前が挙がる。ただ、その本質は「人々のライフスタイルを変えるイノベイティブな商品」(同社)であり、物理的なカタチを持った製品とは限らない。心情に訴える、感動的な商品であればそれはソニーらしいモノであり、アイボをソニーらしい商品として表現することに異論は無いはずだ。
コンシューマーエレクトロニクス企業として一度沈んだソニーは、10年以上の時間をかけて、KAKDO的な製品と共に帰還した。ただ、ソニーはアイボを主な事業とする企業ではない。新アイボは新たなアイコンとしての意味は持つだろうが、それは、「ソニーにソニーらしさを期待できる」と感じさせる状態になっただけで、厳しい言い方をすれば期待値が10年前に戻っただけだ。
薄型テレビやHDDレコーダーなどのデジタル家電が華やかな時代、家電メーカーとしてはソニーやパナソニック、東芝、日立製作所、三菱電機らがしのぎを削っていた。それも今や昔。ここ10年で多くの企業がコンシューマー市場から距離を取る中、ソニーだけが一般消費者との距離を保ち続け、そして戌年の新アイボ投入となった。
新アイボで期待値を高めたソニーに、消費者は新アイボに次ぐKANDO的かつエモい製品の登場を期待するだろう。ソニーは自らの手で設けたハードルを飛び越えて、「らしさ」を提示し続けることができるか。「ソニーらしさ」は難しく、また、周囲を引きつける。いずれにせよ新アイボの「次」に注目である。
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