ARM Tech Symposia
Arm買収から1年半、明確になったソフトバンクのIoT戦略
2016年7月に発表された際には「関係性が希薄で、相乗効果は見えにくい」と評されたソフトバンクによるArm買収だが、あれから1年半、その関係性はどうなっているのだろうか。ソフトバンク副社長兼COOの今井氏が現状を語った。
Armがソフトバンクによって買収されて約1年半が経過した。2016年7月に買収が発表されたときには「直接的な関係性が希薄で、相乗効果は見えにくい」と評されたが、その関係性はいま、どうなっているのだろうか。
2017年12月8日に行われたArmのプライベートイベント「ARM Tech Symposia 2017 Japan」のキーノートにはソフトバンク 代表取締役副社長 兼 最高執行責任者 今井康之氏が登壇、ソフトバンクの事業戦略においてArmへ期待する役割について説明した。
「2035年までに1兆個のチップを供給する」
2016年12月のARM Tech SymposiaでArmが真っ先に打ち出したメッセージは「買収されたが、Armは変わらない」だった。登壇したRene Haas氏(現EVP and President)は開口一番、ソフトバンクによる買収に言及し、Armのビジネスモデルや製品ロードマップに変化はないことを強調した。
当時は「スマホチップの会社をソフトバンクがすごい金額で買った」のような表面的な観測も多かったとから、首脳陣がこうしたメッセージを出すことは必要だったといえる。また、Haas氏に次いで登壇したソフトバンクの宮内謙氏は買収した側の立場から、デバイスと開発環境をArm、ネットワークとサービスをソフトバンクが担うことで大きなビジネスが可能になると投資の有用性を述べていた。
あれから1年、今井氏は「2035年までに1兆個のチップを供給する」という孫正義氏の発言を紹介しながら、「ソフトウェア商社から通信と移り変わってきたソフトバンクの軸足は、現在、AIとロボット、そしてIoTに向かっている」と事業の転換期にあると述べる。
ソフトバンクグループがサウジアラビア政府などと立ち上げた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」、いわゆる10兆円ファンドなどで出資をした企業は数多く、その業種もロボット開発(Boston Dynamics)から衛星通信(OneWeb)、ホテル予約(OYO)、室内農業(Plenty)、自動運転(Nauto)、電子決済(Paytem)、半導体IP開発(Arm)、GPU(NVIDIA)など多種多彩である。
一見すると関連性のないように見える投資であるが、全ての企業が「つながることで、新たな価値を生む」こと、つまりはIoTに関連する企業であり、今井氏は「物流×IoTならば自動運転でトライバー不足を解消、飲食×IoTならば屋内栽培で安定供給、ホテル×IoTならば快適な宿泊体験」と例を挙げながら、「IoT時代に向けて各業界との取り組みをスタートしている」と現状を説明する。
具体例として紹介されたのが、設計大手である日建設計とソフトバンクの業務提携だ。提携はIoTやロボットなどを活用した次世代オフィスビルについて、設計開発などを共同で行うものだが、その具体的な目的の1つとして今井氏が語るのは、オフィスビル運用コストの削減だ。
オフィスビルが60年利用されるとして、清掃や警備、設備管理といった運用管理のコストは建設費の5倍にも及ぶといわれており、これを「IoTやAI、ロボット技術の導入で40%削減(今井氏)」する目標を挙げる。
具体的な方法としては受付や掃除、警備のロボット化、それに空調や上下水道、電設など各種設備のIoT化による遠隔管理などが想定できる(関連記事:ソフトバンクが「自律化」ロボット販売へ、製造や物流も視野に)。いずれにしてもネットワークにつなげやすく、安全エッジデバイスが必要であるため、Armを傘下に持つことの意味は大きい。「(40%削減の目標を掲げることができるのも)Armのチップがあり、セキュリティが確保されているからだ」(今井氏)
これまで通信を基幹事業としてきたソフトバンクであるが、多くの企業買収や提携により、データの生成から袖手、蓄積、解析、利用といった“データ駆動型ビジネス”を自社および関連/協力企業で回転させることが可能になりつつある。今井氏はIoTソリューションをワンストップで提供することを狙いとする自社戦略において、その入り口、データ生成の部分においてArmが果たす役割は大きいと語った。
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