JDI
反転攻勢に出る日の丸ディスプレイ、必要なのは「速度」
従業員削減策を含む構造改革を行うなど苦しい状況の続くジャパンディスプレイ。ソニー、東芝、日立の中小型ディスプレイ事業が統合した“日の丸ディスプレイ”は「シーズでもニーズでもなくウォンツ」を提供する企業として反転攻勢を狙う。
約3700人の従業員削減策を含む構造改革を発表するなど、苦しい状況の続くジャパンディスプレイ(以下、JDI)。主力であるモバイル機器向け液晶が不振を喫し、加えて次期の柱とした有機ELへの転換が思うように進まずと低迷している。JDI会長兼CEOの東入來信博氏は「第2の創業だ」と苦境を乗り切る自信を見せるが、市況の変化は激しく、今まで以上にスピーディーな経営判断が求められる。
能美工場第5.5世代ラインの停止や従業員削減を含む構造改革については2017年度中に完了させ、2019年度までに車載と産業用を柱とした収益構造に転換することで400億円以上の営業利益確保を目指す。社内組織と収益構造の最適化を進めながら、有機ELで確固たる地位を占めることを中期経営計画として掲げているが、足元がふらついてしまえば、その絵は描ききれない。
そのための切り札が、2017年6月から量産を開始した4辺狭額縁を実現する「FULL ACTIVE」ディスプレイだ。
「FULL ACTIVE」ディスプレイで攻める
FULL ACTIVEはJDIの4辺狭額縁を実現する技術の総称とされており、その額縁幅はわずか0.5mm程度と非常に細い。採用製品であるXiaomi(シャオミ)の「Mi MIX 2」は上下左右はもちろん、下部ベゼルの幅も従来製品に比べてかなり狭く(細く)作られているため、約6型という大画面ながら片手でも持ちやすいサイズを実現している。
四隅の額が狭くなることで「本体の小型化」「ARアプリケーションとの高い親和性」「空間の拡張」といった利点が生まれるとしており、スマートフォンの大画面/小型化要望に応えるほか、将来的には3つのディスプレイを折り畳み式としたスマートフォンや複数パネルを並べて大きな映像を映し出すといった用途にも応えるとしている。
狭額縁を実現するという意味では有機ELと同様であり、シャオミ以外のメーカーからも搭載製品が登場する見込み。「FULL ACTIVEへの引き合いは強い。多くメーカーとの商談を進めており、2017年第3四半期から2018年代委1四半期にかけて、FULL ACTIVEを採用したスマートフォンが登場するはずだ」(JDI 常務執行役員 永岡一孝氏)
常務執行役員の永岡一孝氏はこのように、スマートフォン向けディスプレイとしての順調な滑り出しを協調するが、FULL ACTIVEはスマートフォン専用の技術ではない。電子ミラーや2in1 PC、ARやVRに欠かせないHMDなど想定できる用途範囲は広く、永岡氏も「需要のあるところから攻めていく」と意欲を見せる。
JDIも「コトづくり」へ
中小型ディスプレイの利用範囲はスマートフォンに代表されるモバイル機器だけではないため、用途に適した提案や生産がスピーディーに行えるよう、JDIは2017年10月に実施する組織改編にて、目的別の3事業部門と本社機能に組織を改める。事業部は「モバイル」「車載インダストリアル」「ディスプレイソリューション」の3つで、本社機能にはマーケティング&イノベーション統括部を設け、CMO(Chief Marketing Officer)には伊藤嘉明氏が就任する。
デルやレノボ、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントなどでマーケティング職を歴任した伊藤氏は「厳しい状況にあることは事実」とJDIの置かれている現状を認識しながらも、「ポテンシャルは高い。“部品を作って納める”から“コトにつなげる仕組み”を作っていく」と今後の方針を語る。
ジャパンディスプレイが発足したのは2012年4月。ソニー、東芝、日立の中小型ディスプレイ事業を統合したといういきさつもあり、「3社統合したあとでも本部制で動かしていたので、事業部と本社機能が重複していた」(東入來氏)と人員やポジションに重複があり、それが企業としての速度を低下させていた面は否めない。2017年10月の構造改革では重複を解消し、伊藤氏の登用によって新たなビジネスモデルの提案を目指す考え。
製造業における「コトづくり」は昨今頻繁に取り上げられる考え方であるが、実践は難しく、市場を読む力と提案する力の双方が求められる。JDIにはFULL ACTIVEの他にも曲がるタイプの「FULL ACTIVE FLEX」ディスプレイ、蒸着から印刷までをカバーする有機EL技術など特筆すべき要素があるだけに、どうやって生かしていくかの判断力がこれまで以上に求められることになる。
産業革新機構が筆頭株主となっての経営再建といえば、ルネサス エレクトロニクスの例が思い浮かぶ。くしくも両社には国内企業の統合で誕生したものの経営不振に陥り、産業革新機構らの手によって“実質国有化企業”となって経営再建という共通項を持つが、ルネサスは業績を回復させ産業革新機構などの大株主が所有する株式の一部売却を行っている。もちろん両社を同一視することはできないが、技術と製品の誇示からコト売りへのシフトで苦境を脱しようという姿勢には類似が見られる。
「(JDLに足りないのは?)印象として受けるには、物事に対する決定スピードの不足。これまで見てきたグローバル企業に比べると遅く、実行力も足りない。技術は世界レベルなので、やり方次第だと思う。(自身には)しがらみもないので、やるべきコトはガッツリやれる」(伊藤氏)
東入來氏が第2の創業と位置付ける構造改革の旗振り役である伊藤氏が、どれだけ「速度」を上げることができるか。パナソニックがトヨタに液晶を使った車載向け電子ミラーの提供を開始するなど、産業機器や車載は他のディスプレイメーカーも視野に入れて動いている領域だけに、残された時間はさほど多くない。
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