Trend Micro DIRECTION 講演レポート
脆弱性はなくならない、事故発生を前提とした対策があなたの工場を脅威から守る(1/2 ページ)
トレンドマイクロ主催の情報セキュリティカンファレンス「Trend Micro DIRECTION」の講演「製造業の工場システム担当者が知っておくべき最新の工場セキュリティ動向」では、近年のランサムウェアの動向と製造業への影響、工場における具体的なセキュリティ対策の考え方について語られた。
工場セキュリティ最新動向
「レガシーOSが稼働し、最新パッチを適用できない設備機器が多数点在する工場では特に、セキュリティインシデントが発生することを前提とした取り組み、対策が重要である」。
トレンドマイクロ プロダクトマーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの上田勇貴氏は、同社主催の情報セキュリティカンファレンス「Trend Micro DIRECTION」の講演「製造業の工場システム担当者が知っておくべき最新の工場セキュリティ動向」において、このように訴え掛け、近年のランサムウェアの動向と製造業への影響、工場における具体的なセキュリティ対策の考え方について説明した。
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いまだ終息しないWannaCry、亜種による感染活動の活発化
2017年上半期において、広くその存在を知らしめたランサムウェア「WannaCry」。日本やフランスの自動車メーカーの欧州工場が操業停止に追い込まれたり、TID(Train Information Display:鉄道運行情報表示装置)やATMといった特定用途システムが多数狙われたりするなど、非常に多くの産業分野に被害をもたらし、制御系システムが狙われるリスクが懸念される事態となった。また、「WannaCryが猛威を振るった2017年5月以降、大手自動車メーカーでも感染被害が確認され、国内工場の操業が1日停止し、自動車生産約1000台分の生産活動に影響したといわれている」(上田氏)。
警察庁のサイバーポリスの調べによると、2017年5月以降、WannaCryの“亜種”による感染拡大が確認されているという。
このWannaCry亜種の特徴について上田氏は、「初期のWannaCryはある特定の条件を満たすとキルスイッチで活動を停止して、それ以上拡散しないという特徴を有していたが、亜種に関してはキルスイッチの機能がなく、拡大し続ける。また、暗号化を行わずに拡散していくため、感染に気が付きにくいという特徴がある」と説明する。万一、WannaCry亜種が工場内に感染してしまうと、ネットワークの輻輳(ふくそう)が発生し、正規の通信が妨害され、結果として工場の操業に影響を及ぼす可能性があるという。そのため、「WannaCry亜種の活動には、引き続き注意が必要だ」と上田氏は警鐘を鳴らす。
さらに、日本ではWannaCryほど大きな話題にならなかったランサムウェア「PETYA」亜種による活動についても紹介。特に欧米では多くの工場がPETYA亜種の被害を受けており、製薬工場や食品工場などで出荷遅延や操業停止が発生したという。
PETYA亜種の特徴について上田氏は、「脆弱(ぜいじゃく)性を突いて拡散していく点はWannaCryと同様だが、『PsExec』のような正規ツールを利用して拡散する機能を有している。また、暗号化した際の鍵を削除してしまうため、攻撃者自身であっても復元することができないという特徴を備えており、感染したら完全にアウトだ」と述べる。
脆弱性が残る工場、対策不足が命取りに
実際に脆弱性を突かれ、設備などがランサムウェアに感染して操業停止に追い込まれた工場では、どのような対処が行われるのだろうか。上田氏は、トレンドマイクロが実際に、さまざまな現場におけるこうした事態の復旧を支援してきた経験から、次のように説明する。
まず、感染源(感染端末)の洗い出しについてだが、「ネットワークセンサーを設置するなどし、ネットワーク側で異常を検知する仕組みを用意して、どこが感染しているかの特定を行う必要がる」(上田氏)。そして、対処として感染端末を駆除ツールで処置したり、バックアップからリカバリーをしたり、あるいは機器メーカーのサポートを呼んで復旧してもらったりする。
では、そもそも感染した原因は何だったのか? ここをしっかりと特定しておかなければ、また同じ事態に陥りかねない。しかし、「侵入の原因を特定することは正直難しい」と上田氏は説明する。なぜなら、工場では復旧(ダウンタイムの最小化)を最優先するあまり、証拠保全が行われることなく、スピーディーに復旧作業が進められてしまうからだ。その結果、「どこが原因だったのか、どのタイミングで感染したのかが分からないことが多い」と上田氏は述べる。
また、工場内で被害が拡大してしまった原因は何か? こちらはハッキリとしており、「“対策不足”が原因だ」(上田氏)という。24時間365日連続稼働しているような工場では生産ラインを簡単に止めることができず、生産ラインの安定稼働やパフォーマンスにどのような影響をもたらすか分からない最新OSやパッチを簡単には当てられない。また、パッチを当てることになったとしても、工場内の設備機器資産の棚卸しがされておらず、全てにパッチを当てたつもりがそうではなかった……ということも十分に起こり得るという。
気を付けたい工場セキュリティ対策、3つのポイント
それでは、実際にどのようなポイントに気を付けて、工場内のセキュリティ対策を行っていくべきだろうか。上田氏は、「ワーム系/破壊系不正プログラムへの警戒」「事故発生を前提とした対策」「新たに問題を作り込まない取り組み」の3つのポイントを挙げる。
ワーム系/破壊系不正プログラムへの警戒に関して、上田氏は「これらへの警戒は今後も怠ってはダメで、強化していくべきだ」と説明する。そのためには、(1)データの入出力点をセキュアにし注意すること、(2)脆弱性は可能な限りふさぐこと、(3)最重要設備を優先的に守ることが重要だという。「工場特有の制約がある中でも可能な範囲、その制約を踏まえた上で、できる限りの対策を行うことだ。また、全てをいきなり守ることも現実的には難しいので、まずは工場の中で特に重要な設備や工程をピックアップして、そこから守っていくといいだろう。例えば、品質確保に関わる品質検査系のラインや設備機器を動かすために必要な動力系、あるいは一品モノの装置などは優先的に守るべきだ」(上田氏)。
事故発生を前提とした対策については、「早期異常検知を実現する仕組みも重要だが、資産の棚卸し、対応ルール/ツールの整備、そしてそのルールやツールを実際に用いた訓練を行うことが大切である。いざというときにバックアップからのリカバリーの方法が分からないということもあり得る。ルールやツールを新たに整備したら、訓練も必ずセットとして考えなければならない」と上田氏。また、同じ事故を防ぐためにも「証拠保全の観点で対策を考慮すべきだ」(上田氏)と指摘する。
ここまで紹介してきた2つのポイントは、どちらかというと既設工場における対策であるのに対し、(3つ目のポイント)新たに問題を作り込まない取り組みは、新設の工場を想定したポイントといえる。新たに工場を立ち上げるのであれば、最初からセキュリティを考慮した環境作りをすべきであるという考えだ。
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