今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
製造業が狙われる日も近い、制御情報系システムをITセキュリティの力で死守せよ(1/3 ページ)
製造業に革新をもたらすといわれる「IoT(Internet of Things)」。スマート化された工場の明るい未来だけがフォーカスされがちだが、ネットワークにつながることでもたらされるのは恩恵ばかりではない。本インタビュー企画では、製造業IoTを実現する上で重要となる「セキュリティ」にフォーカスし、製造業IoTで起こり得るセキュリティインシデントとその対策について紹介する。第3回は、IoTセキュリティの各種ソリューション、コンサルティングサービスを提供するマカフィーに話を聞いた。
2017年6月に世界を襲ったマルウェア「WannaCry」は、日本の製造業にも被害をもたらした。その結果、これまでセキュリティに本腰を入れてこなかった経営陣の意識が少しずつ変わりつつあるという。ただ、それと同時に攻撃者側も“ある気付き”を得た可能性が大きい――。
本インタビュー企画では、製造業IoTを実現する上で欠かせない「セキュリティ」にフォーカスし、製造業IoTで起こり得るセキュリティインシデントとその対策について、主要セキュリティベンダーから話を聞く。今回は、マカフィー セールスエンジニアリング本部 サイバー戦略室 シニアセキュリティアドバイザー CISSP 佐々木弘志氏に、日本の制御システムを取り巻く現状と、今後考えられるセキュリティリスクについて伺った。
◎「工場/製造業/IIoT セキュリティ」関連記事 ~課題、事例、導入、対策~ など
» 脆弱性はなくならない、事故発生を前提とした対策があなたの工場を脅威から守る
» 工場セキュリティ対策の考え方と現実的なソリューション導入の手引き
» 製造業が狙われる日も近い、制御情報系システムをITセキュリティの力で死守せよ
制御システムへの脅威の「過去」と「現在」
過去、工場をはじめとする製造業の現場は、システム自体がクローズドであるため、「セキュリティリスクは存在しない」「ITのようなセキュリティ対策は不要」という考えが持たれてきた。
しかし製造業の現場にも、次第にIT化/オープン化の波が訪れ、情報システム(IT)で活用されてきたOSやネットワーク技術が、制御システム(OT)の領域に近い部分でも利用され始めるようになり、マルウェアによる意図しない感染などが広まるようになってきた。ただ、こうした事態はあくまでも「流れ弾による“もらい事故”のようなもの」(佐々木氏)であり、直接工場の制御システムを狙った攻撃とは言い切れない。これが製造業における、直近の現状だ。
佐々木氏は「そうした現状が、つい最近になって一気に変わってきた」と述べる。その要因は、インターネットにつながる機器が増えたことによる「IoTのリスク」の増加だ。「『Mirai』に代表されるようにデバイスを直接ターゲットにし、拡散を狙うものが増えてきた。これらも製造業だけを狙ったものではないが、工場でIoTを活用していく上では大きな課題といえる」(佐々木氏)。
さらに、2017年6月にはWindowsのファイル共有に残っていた脆弱(ぜいじゃく)性を狙うランサムウェア、WannaCryが登場する。WannaCryは亜種が複数存在し、ファイルを暗号化する機能が動作しないもの(亜種)が工場を襲ったとされている。「この亜種に感染すると、他の端末に対しても感染を広げていくが、ファイルを暗号化する代わりに、ブルースクリーンにしてシステムをダウンさせる。これが工場内で爆発的にまん延した事例がある」(佐々木氏)。
マカフィーのインシデントレスポンスサービスでは、これまでは企業のIT部門からの問い合わせが主であったが、最近では製造業や工場からの声も増えているという。「今、脅威の変わり目に来ている。現状の脅威は製造業のみを狙ったものではないが、Mirai、WannaCryの被害状況から『工場は外からでもつながる』ということが攻撃者側に知れ渡ってしまった。また恐ろしいのは、こうした工場のほとんどが『外とつながっている』という認識を持っていない、クローズドだと信じ切っていることだ」と佐々木氏は警鐘を鳴らす。
流れ弾でも“当たったこと”が分かれば、狙いは「換金」へ向かう
佐々木氏によると、日本の工場、製造業のシステムは「意外と外とつながっている」という。おそらく攻撃者も全く同じ考えに至るであろうことは間違いない。IoTやインダストリー4.0といった華やかな言葉の裏には、そのような危うさが残っているのだ。もし、これまでのように流れ弾が当たったというレベルではなく、「製造業の現場を直接狙うサイバー攻撃が来てしまったら」――。製造業はそろそろ、そのリスクを本気で考えないといけないだろう。
未来の攻撃のヒントは、ランサムウェアにある。ランサムウェア以前のサイバー攻撃は、情報漏えいを引き起こし、その情報をブラックマーケットで売ることで、犯罪の成果を換金していた。ところがランサムウェアは情報を暗号化し、それを人質として身代金を直接被害者に請求する。これまでは工場に対する攻撃も「換金」までには至らなかった。「攻撃して、工場を止めるところまでは実際にできてしまっている。ここから攻撃者のやることが広がるとしたら、『おいしい食い扶持』――。攻撃がお金になるようなビジネスではないだろうか」と佐々木氏は述べる。
さらにもう一歩先を考えると、「その攻撃手法が“ツール化”され、数クリックで攻撃が成立するようになるかもしれない」と佐々木氏は指摘する。そうなったとき、ある特定の工場への攻撃だけでは済まされない。「これまでは単発の攻撃で終わっていたかもしれないが、ツール化されてしまうと系列工場に対して一斉攻撃が行われ、パートナー企業や下請け企業を含む、業種全体が攻撃の対象になり得る」(佐々木氏)。
既にITシステムの世界ではこのような傾向にある。サイバー犯罪組織は攻撃ツールを作成し、ブラックマーケットでその利用権を販売。悪意ある攻撃者たちがエコシステムを作り出し、それぞれがそれぞれの利益を上げている。「今後は製造業という大きなくくりではなく、さらにブレークダウンをして『自動車分野向けマルウェア』『産業機械分野向けマルウェア』『医療機器分野向けマルウェア』といった細分化が進むかもしれない」(佐々木氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
製造業に革新をもたらすといわれる「IoT(Internet of Things)」。スマート化された工場の明るい未来だけがフォーカスされがちだが、ネットワークにつながることでもたらされるのは恩恵ばかりではない。本インタビュー企画では、製造業IoTを実現する上で重要となる「セキュリティ」にフォーカスし、製造業IoTで起こり得るセキュリティインシデントとその対策について紹介する。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[工場セキュリティ][製造業セキュリティ][IoTセキュリティ][制御システムセキュリティ][セキュリティリスク][セキュリティソリューション]
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー