今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
製造業が狙われる日も近い、制御情報系システムをITセキュリティの力で死守せよ(2/3 ページ)
「WannaCry」をどう見るべきだったか
このきっかけとなったのは、やはりWannaCryだろう。守る側にとっては、クリックすることなく感染が広がっていく恐怖を久しぶりに味わったマルウェアであり、その被害の実態から、攻める側は「入り口さえ開いていれば攻撃が成立する」という確証を得るに至った。
佐々木氏は再度、製造業が守るべきものの価値、“本丸が何か”を認識すべきだと指摘する。「製造業が持っている価値とは、モノを作っている場所、つまり“工場”だ。悪意ある攻撃者は価値のある場所を狙い、お金を得るのが目的。ITとOTは時代の流れでつながりつつある。だからこそ、狙われる」(佐々木氏)。
最も価値があると考えられるのは、「制御システムにおける3つの層のうち、『制御情報系システム』だ」と佐々木氏は述べる。そこには、工場における重要な情報であるレシピデータや、現場効率化のための情報などが収集、蓄積されている。これこそがコアコンピタンスであり、奪われないために注力すべき「企業の強み」だという。
WannaCryのようなランサムウェアであれば、事業復旧のための手段としてバックアップが有効だ。しかし、コアコンピタンスはバックアップを取っていても盗まれたらそこで終わりである。WannaCryの攻撃が製造業のシステムでも成立してしまった事実を、私たちはもっと重大なインシデントとして捉えなくてはならない。
しかし、暗い話題の中にも少なからず「明るい兆し」もあった。経営層の意識が「リスク軽減」に向き始めたことだ。「WannaCryのおかげで守る側も何かに気が付き、これまでセキュリティに興味がなかった経営陣たちも注目するようになり、『対策せよ』と号令をかけ始めている」(佐々木氏)。
自動運転が実現する未来、そのあるべき「コスト」をどうするか
世界に目を向けると、欧州を中心に「Petya」(ペトヤ/ペチャ)と呼ばれるランサムウェアによる大規模な被害が発生していた。これもWannaCry同様、ITの世界を広く狙ったものだったが、やはり制御システムにも流れ弾が来ているという。これも、制御システムが思った以上にクローズではなくなってきているということの裏付けの1つだ。
では、制御システムを持つ工場などは、どのような対策を取るべきなのだろうか。佐々木氏はまず「サプライチェーンを強くせよ」と述べる。
「自動車産業を例に挙げると、自動車メーカーやTier1企業は既にセキュリティ対策を頑張っている。しかし、そこに部品を供給するTier2、Tier3企業はどうか? 今後その対策が課題になると思われる。その部品が単なるネジなどであれば問題はないかもしれないが、現在はさまざまな部品にソフトウェアが搭載されていたり、ソフトウェアそのものを納品したりしている。そこをどう対策するかが大きなポイントになるだろう」(佐々木氏)。
特に日本には、その企業でしか作れない、特定分野に強い工場がたくさん存在している。そのような工場は規模の大小に寄らず存在するので「そこが狙われてしまうと、多くの企業にとってリスクになってしまう」と佐々木氏は指摘する。「サプライチェーンの上位側がある程度の品質規範を定め、それをクリアしないと納品検収を行わないなどの線引きが必要かもしれない。その結果、当然コストは上がる。それは消費者が納得できるよう、国、メーカー、消費者がともにどこかで考えなくてはならない」と佐々木氏は述べる。この点においてサプライチェーンの末端だけがコストをかぶることだけは避けるべきだろう。
「今後、自動運転が実現する未来が来るかもしれない。しかしそこには安全が確保されている必要がある。『そのために支払うべきコストがある』ということを、社会全体に浸透させないといけないかもしれない」と佐々木氏。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
製造業に革新をもたらすといわれる「IoT(Internet of Things)」。スマート化された工場の明るい未来だけがフォーカスされがちだが、ネットワークにつながることでもたらされるのは恩恵ばかりではない。本インタビュー企画では、製造業IoTを実現する上で重要となる「セキュリティ」にフォーカスし、製造業IoTで起こり得るセキュリティインシデントとその対策について紹介する。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[工場セキュリティ][製造業セキュリティ][IoTセキュリティ][制御システムセキュリティ][セキュリティリスク][セキュリティソリューション]
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー