IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する(7)
ガラパゴス化した制御システムに風穴を開けるソフトウェアPLC(2/2 ページ)
PACシリーズにソフトウェアPLCの「CODESYS」を採用した理由
コンテックでは、ソフトウェアPLCのCODESYSを内蔵したリアルタイム制御エンジンPACシリーズにより、モノづくりの現場もサポートしている。CODESYSは、国際標準であるIEC 61131-3に準拠し、制御プログラムの作成やフィールドバスの設定などをシームレスに行うことができる開発環境が統合されており、製造業などがオープンステムを構築する上で最適であるという。
筆者 PACシリーズに、ソフトウェアPLCのCODESYSを採用したのはなぜですか。
西山氏 当社では、もともと制御のオートメーション化を実現するために、規格化された通信システムなどを、産業用PCに組み入れて提供していました。しかし、PCの手軽さという特徴を、大手メーカーが提供しているPLCでも提供できるようになり、PCと従来型のPLCとの違いがなくなってきてしまい、PCベース制御の強みを十分に生かすフィールドが減ってきているという状況があります。そこで、当社の技術力を生かしながら、CODESYSを採用することで、よりオープンな環境で制御システムを作り上げることができる仕組みを、デバイスとして開発したのです。
筆者 CODESYSを採用したデバイスにより、モノづくりの課題解決につながるということですね。
西山氏 はい、当社の顧客は半導体製造装置をはじめ、装置や機械設備を作る企業が多いのですが、モノづくりの現場での最大の課題は生産性です。しかも、設備を作るときの生産性と、作った後のメンテナンス効率化の両方が課題としてあります。PCはオープンで誰でも使いやすいのですが、OSが頻繁に変わりますので、それに合わせて開発環境もどんどん変わっていきます。PCを制御するドライバも変わってしまいます。そのように、OSの変化に追従して開発環境をその都度作っていく必要がありました。これでは、装置メーカーの開発者は本来開発すべきアプリケーションの開発の前段階で足踏みをしてしまうことになります。そのような煩雑で効率化を妨げている課題を解決できるキーとして、CODESYSを採用したのです。
筆者 従来の仕組みでは、ユーザーがアプリケーションの開発に集中できないということですね。
西山氏 そうです。さらに、設備を作った後で、その設備を海外に出荷していただくケースも多くあり、そうなると、海外でのメンテナンスが必要になります。そのときに、日本だけで通用するような環境で作っていたのでは、メンテナンスを十分に行うことができません。従来は国産メーカーが開発したPLCを使っていた企業でも、海外での事業展開を視野に入れて、よりオープンな環境のPLCに変更していきたい、という要望を多く聞きます。
PLCを取り巻く環境改善は、まさに始まったばかり
コンテックが提供するCONPROSYSは、遠隔監視や遠隔コントロールを必要とするIIoTの仕組みの一部として利用されつつある。しかし、モノづくりの現場での採用には課題が残るとみている。
筆者 製造現場でのPACシリーズに対する反応はどうですか。
西山氏 正直、まだまだこれからというところです。日本の製造現場には、従来型のPLCが根強く残っており、CODESYSを採用したPACシリーズのメリットを、さらに強力に訴えていかなければならないと考えています。理想とする“つながる工場”を実現するためには、将来のメンテナンスも含め、特定のメーカーに依存する閉じられた仕組みではなく、“真にオープンな環境”が必要であるということが、まだまだ認知されていないと思います。そのためにも、PACシリーズの本来の特徴をさらに生かせるようなデバイスに改良していくことも視野に入れています。
当社では国内のみならず、海外にも展開しており、特に中国や東南アジア、インド市場ではCONPROSYSに大きな手応えを感じています。やはり“リモートコネクテッド”をキーワードに、社会インフラやビルの制御などのスマートシティーの実現に活用していただいています。海外での実績を生かし、FAの分野を含め、国内の各種産業の制御領域をより開拓していこうと考えています。
IIoTの普及に向けて、製品改良に挑戦し続ける
コンテックでは、中国、東南アジア、インドでの需要をにらみ、より低い価格帯の製品開発も目指しているという。海外における実績をベースに、製造業を含めた各種産業界でより多くの企業のニーズに対応できるように、製品の改良を常に検討していくという。
筆者 中国や東南アジア、インド市場でのユーザーの反応を、日本の産業界に生かしていくということですね。
西山氏 CONPROSYSの製品コンセプトは、IIoTのデバイスを顧客が開発する負担を全部取り払い、本来注力すべきアプリケーションの開発だけに集中できるような環境を提供することです。“つなげる”ことに翻弄(ほんろう)されていたこれまでの課題を一気に、容易に解決し、クラウドへの対応も含め、新しい技術への対応やつまずきそうな厄介な部分は、全て当社のデバイスで解決していくということです。当社が提供するような製品がより広く普及することで、IIoTの実現も早まっていくのだと思います。
今回は、ソリューションデバイスを提供することで、製造業のみならず、各産業のIIoT化の実現をサポートしているコンテックの事例を紹介した。日本の製造業におけるオープンな環境の実現に向け、ガラパゴス化したPLCの領域に風穴を開けるために、製品の改良にも果敢に取り組んでいることがよく伝わってきた対談だった。
著者紹介:
リンクス 代表取締役 村上 慶(むらかみ けい)
1996年4月、筑波大学入学後、在学中の1999年4月、オーストラリアのウロンゴン(Wollongong)大学に国費留学、工学部にてコンピュータサイエンスを学ぶ。2001年3月、筑波大学第三学群工学システム学類を卒業後、同年4月、リンクスに入社。主に自動車、航空宇宙の分野における高速フィードバック制御の開発支援ツールであるdSPACE社製品の国内普及に従事し、国内におけるトップシェア製品となる。2003年、同社取締役、2005年7月、同社代表取締役に就任。
同社代表取締役に就任後は、画像処理ソフトウェアHALCONを国内シェアトップに成長させ、産業用カメラの世界的なリーディングカンパニーであるBasler社と日本国内における総代理店契約を締結するなど、高度な技術レベルと高品質なサービスをバックボーンとした技術商社として確固たる地位を築く。次のビジネスの柱として2012年7月にエンベデッドシステム事業部を発足し、3S-SmartSoftware Solutions社の国内総代理店となる。(2016年10月現在)
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IIoT時代にこそ、日本のモノづくりが世界で強みを発揮する
IoT、インダストリー4.0がこれほどまでに盛り上がり続けるのは、その将来像への賛同だけではなく「現時点で材料となる技術はそろっていて、決して夢物語ではない」と多くの人が感じているためである。日本のモノづくりは改善を重ねることで着実に世界をリードしてきたが、第4次産業革命で求められる非線形なモノづくりの進化をリードしていくためには、「製造現場のガラパゴス化」を解消することが急務だ。本連載では、日本のみならず世界的に盛り上がりを見せるIIoTの技術で製造業はどう変化していくのか、日本の製造業がその変化に追従していくためのボトルネックとなる国内製造業のガラパゴス化について解説する。
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