大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
AtmelとMicrochipに見る、半導体企業M&Aの難しさ(4/4 ページ)
内部はともかく外向けのサービスに関して言えば、いきなり統合は無理ということで、買収後もAtmelのWebサイト( http://www.atmel.com/ )は残っており、プレスリリースのページも確認できる。
製品についても、当初Atmelの内部で計画が決まっていたものに関してはAtmelのページで情報公開しており、統合後の製品に関してはMicrochipのページで、といったルールになっていたようだ。
対外的にもそのルールが適用されており、例えば2016年10月に開催されたARM TechCon Santa ClaraにおけるMicrochipのブースはこんな感じ(Photo01)。Atmel製品を引き続きサポートし、新製品も投入してゆくという意思の表れと見ることもできるが、逆にMicrochipブランドに統合しきれない(した場合の反動が読みきれない)というジレンマも感じる。
進みながらも「完全統合」にはまだ時間が
ただそうした中でも、ゆっくりと統合は進んでいる。
2016年10月にはやっと買収後の製品戦略も明らかにされた訳だが、これとは別に製品レベルでの統合の萌芽は既に見えている。2016年のET2016獣道レポートでも書いたが、2016年11月8日に発表された「tiny AVR」は、ベースこそAVRとなっているが、そこにMicrochip由来のCIP(Core Independent Peripherals)を統合したという、AtmelとMicrochipの技術融合の第一歩を示すものになった。
このシリーズは2017年になって、さらにラインアップを増やすなど順調に進展していることが見て取れる(New tinyAVR MCUs Increase System Throughput While Lowering Power Consumption in Embedded Applications)。また、同年1月には、オンラインショップのmicrochipDIRECTでAtmel製品の購入が可能になり、同年8月21日にはCPS(Customer Service Program)をAVR/SAM MCU向けに提供する事が発表されるなど、ゆっくりではあるが両社の製品に同等のサービスが提供されるようになりつつある。
ただし、まだ完全なる統合までの道のりは遠そうだ。製品ラインアップの統合もさることながら、例えばWi-Fiのサブシステムも現在はMicrochipと旧Atmelで別々のものが用意されている状態だし、開発環境はハードウェア/ソフトウェア共に今のところ完全に別々である。もちろん、既存開発者向け環境との互換性を考えると、これらを急にやめるのは難しいが、長期的に見るとサポートコストが倍増するだけであり、どう統合してゆくつもりなのかよく分からない。
最近では「Explorer 16/32」という開発ボードや、「MPLAB ICD 4」といった新しい開発ツールを相次いでリリースしているが、今のところこれはPIC/dsPICシリーズ製品向けで、AVR/SAMシリーズをサポートするという話にはなっていない。NXPとFreescaleの合併時もそうだったが、完全な統合にはまだまだ時間がかかりそうである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー