プロジェクトリーダーに聞く
ソニーが作ったおもちゃ「toio」のロボットはなぜシンプルで四角いのか?(2/2 ページ)
なぜソニーがゲーム機ではない“おもちゃ”を作ったのか?
toioの企画の源泉となった、「ソニーらしい新しい製品を作りたい」という思いは、エンジニア同士の飲み会がきっかけだったという。「ソニーの強みであるモノづくり、エンターテインメントの力を融合できないかというところから考え、ロボットの研究開発を長らくやってきたロボット技術と、ゲーム機に代表されるエンターテインメント技術を用いて、何か新しい製品が生み出せないかと(toioの構想が)スタートした」(田中氏)。
そして、田中氏の構想が大きく動き出したのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所で次世代インタラクションの研究に取り組んでいるアンドレ・アレクシー氏との出会いだ。2人は雑談レベルで話をしていくうちに盛り上がり、お互いの共通の趣味であるレゴブロック遊び、そして田中氏が長年取り組んできたロボット/ハードウェアの研究開発の技術や知見、そしてアレクシー氏が得意とするインタラクションの研究成果を融合して、新しいエンターテインメントが作れないかということになり、toioプロジェクトの最初のきっかけが生まれた。
当初、田中氏はモジュール式のブロックを組み合わせたようなガジェットを考え、それをアレクシー氏に見せたところ、「『それはエンジニアの視点で考えたアイデアであり、もっとユーザー(子ども)の視点で考えよう』と諭されてしまった」(田中氏)という。そこから考え方をガラリと変え、おもちゃで遊ぶ子どもの気持ちになってアイデアを練り、「『子どもたちがおもちゃの世界に入り込んで遊べるような“体験”を提供するものを作ろう』という話になり、toioのプロジェクトがスタートした」と田中氏は振り返る。
このやりとりが5年ほど前の出来事で、その後しばらくはソニーコンピュータサイエンス研究所の正式な研究として活動が開始された。研究を始めて比較的早い段階でロボットのコンセプトモデルは出来上がったのだが、当時はサイズが大きく、コストも掛かっていたという。また、この段階では絶対位置センサーの発想はなく、ロボットの位置を把握するために天井にカメラを付けて何とか実現していたそうだ。「カメラを設置するような大掛かりなシステムになってしまうと、ご家庭で遊んでもらうことが難しくなってしまう。遊びの体験に関してはどんどん追い込んで研究開発を進めることができたが、ロボット位置の把握という技術的な側面については、この段階ではまだ製品化できるレベルには達しておらず、自分たちの技術と世の中の技術の成熟を含め、解決する時期を待つことになった」と田中氏は述べる。
放課後活動と正式プロジェクト化を支えたクリエイティブラウンジ
そこから一時休止期間を経て、2015年にプロジェクトが再開。アレクシー氏(現:UX開発担当)に加え、ソフトウェアのエキスパートである中山哲法氏(現:製品開発担当)がtoioプロジェクトの創業メンバーとして加わったことで、これまでクリアできなかったいくつかの課題が解決され、toioの開発が一気に加速したという。
その後、有志のメンバーの協力なども得ながら、製品コンセプトやビジネス戦略などを突き詰めていき、ソニーの新規事業創出プログラムである「Seed Acceleration Program(SAP)」に応募。見事、第1位で選考を通過することができ、正式なプロジェクトとして承認された。それが2016年6月のことで、その後、東京おもちゃショー2017での発表までにtoioの量産化に向けて開発を進めてきた。ちなみに、ソニーのSAPから生まれた製品といえば、電子タグ「MESH」や電子ペーパーによりデザインが変えられる腕時計「FES Watch」などが有名だが、toioは12番目の製品化事例となる。
「SAPに応募する前から、ソニー本社内にあるメイカースペース『クリエイティブラウンジ』を利用して、放課後活動的にエンジニア同士が交流しながらアイデアを出し合い、3Dプリンタなどを用いて試作を繰り返してきた。実は、私自身がクリエイティブラウンジの立ち上げにも関わっており、toioのプロジェクトでは新規事業を立ち上げようとするユーザーの1人としてクリエイティブラウンジを活用させてもらった。ここは外部の方も入れるスペースでもあるので、実際に小学生のお子さんなどにtoioの試作機を触ってもらう、ユーザーテストも実施した。クリエイティブラウンジのおかげで、試作やユーザーテストを繰り返し行うことができ、モノとして洗練させていけたので、自信をもってSAPのプレゼンテーションに臨むことができた」(田中氏)。
現在、ハードウェアもソフトウェアも完成し、量産化のめどもついており、2017年12月1日に発売に向けてあと一歩の段階だという。「最後に重要となるのは、何といっても、お客さまにどう届けるかだ。可能な限り購入できる場所、触れられる場所を多く作っていきたい。やはり、モノを作るだけではモノづくりのビジネスは完成しない。どうお届けするか? どう触ってもらうか? そしてどうご家庭で楽しんでいただくか? ソニー社内のエキスパートたちが一丸となって、toioという新しいビジネスのために追い込みをかけているところだ」(田中氏)。
ここまで田中氏のお話を基に、toioの特長や同プロジェクトの取り組みについて紹介してきたが、2017年9月5~29日に開催予定の「ITmedia Virtual EXPO 2017」の【メカ設計 EXPO 2017 秋】ではさらに詳しい話を視聴することができる。田中氏のインタビュー映像「エンジニアたちの放課後活動から生まれたソニー『toio』開発秘話」では、革新的な製品開発を行うためのヒントや、新製品開発に挑戦するエンジニアに向けたエールも収録されているので、ぜひご覧いただきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
特集(メカ設計)
「メカ設計」をメインテーマに、モノづくり関連セミナー/ワークショップのレポートや開発者インタビューなどを多数掲載。現場課題の解決や、さらなる成長に向けた第一歩を踏み出すためのヒントを提示します。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー