IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質(1)
組み込みソフトウェアの「品質」とは何か――品質の始まりからその実態まで(5/7 ページ)
2.1 品質計測、ここから全てが始まる
品質活動は品質計測(*1)から始まる。昔、トム・デマルコが「計測できないものは制御できない」と言った(*2)が、計測することでその実態が分かり、目標も生まれ、制御する動機にもなる。品質計測から品質活動が始まるのである。
(*1)「計測」と「測定」。測定は道具などを使って量を数値化することで、計測は量を把握することである。つまり測定は計測の1つである。ここでは意味が広い計測を使っている。この中には品質測定も含まれることに注意。
(*2) その後、デマルコは「計測できないものは制御できない」は、ある状況下では違うと言っている。これは100万ドルのコストを使って5000万ドル以上の価値を作るときのソフトウェア開発では、計測と制御よりももっと重要なものがあると言っている。この考えも品質活動の指針として重要である。コストを意識したチマチマとした品質活動だけでは語れないものがある。
しかしソフトウェアの品質を計測するのは難しい。ソフトウェアがモノとコトの両面を持ち、品物と違い、つかみどころのない、ふわふわとしたものであり、それを定量的に測定するのは難しい。この品質を計測するのは、闇夜の中をライトなしで歩くようなものである。
品質計測はまずソフトウェアそのものの計測から始まる。ソフトウェアをモノとして捉え、ソフトウェアのいろいろなサイズ、例えば、プログラム行数やコンポーネント数(関数やサブルーティンの個数)、関数当たりの閉路の個数(サイクロマティック数)などを測定する。ここまではツールがあれば面倒でもなく、簡単である。
次にソフトウェアをコト(サービス)として捉え、機能数やサービス数、機能に関係する要素数などを何らかの方法で計測する。このように書くことは簡単であるが、コトを計測するだけでも既に難しいのが分かるだろう。
このようにソフトウェアをモノやコトとして捉え、それぞれを計測するのは、いわば、量を計測したことになる。一方、品質計測は質(性質)を計測する必要がある。品質の定義によれば、「品物の性質が要求を満足している程度」を計測しなければいけない。こんな雲をつかようなものを計測できないので、他の簡単に計測できるもので代替するしかない。例えば規模当たりのバグ(*)件数を計測して、これから、機能に対する要求の満足を推し量る。その程度しかできない。
(*) バグとは、正確な物言いでなく、ジャーゴン(非公式な仲間内の専門用語)である。観測結果が望ましくない状況になることを障害と定義されている。また、欠陥が障害の原因として定義されている。バグは障害の意味でも、欠陥の意味でも使われることがあり、バグの意味は文脈で判断するしかない。
このように品質計測は計測コストや実現可能性を考えると結局、代替計測しかできないのだが、この代替計測が後々の問題になる。代替になっていないのである。まるで失恋の回数で年齢を推測するようなものである。
また直接計測した1次計測だけでは力不足で、1次計測値を分析して2次計測値を出す必要もある。面倒である。後の回で、この品質計測をコストを意識した開発現場目線で眺めてみることにする。
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IoT時代の組み込み系ソフトウェア品質
組み込みソフトウェアにおける「品質」とは、一体、何者であろうか。多用されている言葉であるがその実態はようとしてしれない。この連載ではIoT時代の組み込み系ソフトウェアの品質」をテーマに開発現場の目線で見ていく。出演者は情報系に籍を置く大学1年生の紅美 香美(くみ こうみ)と品質 寛容(しなしち ひろい)。
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