大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ADIが中国の電力配送会社と共同研究、その背景と狙い(1/2 ページ)
エレクトロニクス業界の2016年12月にM&Aのような大きなニュースはなかったが、ADIが中国の電力配送会社と共同研究を開始すると発表した。中堅イメージのあるADIの将来を見据えた取り組みの狙いとは。
静かだったエレクトロニクス業界の2016年末
エレクトロニクス業界の2016年12月にはあまり大きなニュースがなかった。
産業界全体へと視野を広げれば、ノルウェーのSmåkraftとNGK(Norsk Grønnkraft)という2つの水力発電会社が合併、ドイツのLindeが米Prazairを買収(どちらも産業用ガスの大手)、中国のCGN(General Nuclear Power Company)がアイルランドの風力発電会社であるGaelectricを買収といった話題もあったが、ちょっと本稿には無縁の話である。
そこで少々小粒ではあるが、2016年12月1日にAnalog Devices(以下、ADI)より発表されたニュース(Analog Devices and China Electric Power Research Institute Collaborate to Improve Reliability of Smart Substations)をご紹介したい。
半導体メーカーと電力配送会社
ニュースの骨子は、ADIが中国のCEPRI(China Electric Power Research Institute:中国电力科学研究院)と共同研究を行うというものだ。具体的な内容、あるいは資金提供の条件などについて発表文中では一切触れられていないが、ADIとCEPRIの共同チームは研究所とフィールドリサーチの両方でクロスファンクションのチームを構成し、現在のスマートグリッドの中核部であるスマートサブステーションの信頼性を向上させるのがその目的としている。
本稿をお読みの読者はADIのことは良くご存じかと思われる。IC Insightのデータによれば、2015年のアナログ半導体メーカーでは4位につけているが、半導体メーカー全体では21位だ(EE Times Japan:2015年半導体メーカー売上高ランキング)。半導体メーカー全体の順位はIHSのデータなので、両者を見比べてみると微妙に合ってない部分があるのだが、大きくは違わない。
同社の得意分野は通信関係や測定、電力マネジメント、MEMSといったあたりで、電源系そのもの(いわゆるパワー半導体)はほとんど扱っていない。手掛ける製品は民生用に使われることもあるが、主としては産業向けで、特に高信頼性、あるいは高耐久性が求められるような分野でのシェアは非常に高い。ただ、こうした分野はコンスタントに需要がある一方で、急激に需要が伸びるといった事も起きにくい。
同社の売り上げ規模は「堅実ではあるが、M&Aのターゲットにされやすい規模」という言い方も可能であり、そうしたこともあって2016年7月には2015年のアナログ半導体ランキングで8位だったLinear Technologyを買収して売り上げと企業価値の向上を図るという動きを見せて業界を驚かせている(EE Times Japan:ADIがLinear Technologyを148億ドルで買収)。この買収で同社はLinear Technologyの電源系製品ポートフォリオを入手しており、いろいろな意味でうまく補完しあえる形になった(EE Times Japan:衝撃の「ADIのリニア買収」背景と今後)。
ただそうしたM&Aとは別に、新しいマーケットに向けた取り組みも積極的に行っており、その1つがスマートグリッドである。こちらは競合が多いこともあり、製品展開や開発環境の提供などは一通り済んでいるものの、その先の一手で悩んでいる感がある。
一方、CEPRIは中国のSGSS(State Grid Corporation of China:国家電網公司)配下の研究所である。SGSSは規模として、世界最大の電力配送会社である。もともとは国家電力公司という、発電と配電を一手に担う会社だったが、発送分離(発電と送電を分離)によって2002年に生まれた形だ。
ただCEPRI自身は1951年に設立されており、現在はSGSSの配下でさまざまな研究を行っている。このCEPRIがOSI Softと共同で出した2016年6月のリリースがこちらである。
そのCEPRIはSGSSが将来利用するであろう、次世代のスマートグリッドの運用や通信基盤の開発を行う「China Smart Grid Substation Operations and Communication Project」に携わっているが、このプロジェクトの基盤ソフトウェアとしてOSI SoftのPI System(Plant Information System)を利用する事を明らかにしている。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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