沖縄モノづくり新時代(7)
イルカ、クラゲ……美ら海水族館の話? いえ、ロボットの名前です――「沖縄海洋ロボコン2016」レポート(1/4 ページ)
エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄。第7回では、いつもとは少し視点を変えて海中のロボット競技「沖縄海洋ロボコン」の模様をお届けする。
「第2回 沖縄海洋ロボットコンペティション(沖縄海洋ロボコン)」が2016年11月18~20日の日程で開催された(※1)。競技会場は、那覇市中心部の国際通りから車で10分ほどの場所にある「波の上うみそら公園」。夏の時期には海水浴を楽しむ観光客でごったがえすが、さすがに11月ともなれば、観光客はまばらだ。時折小雨のちらつく曇天の下、数多くの競技関係者が集まった(図1)。
海洋ロボコンというとあまり聞き慣れない競技だが、それもそのはず。「水中でのロボットコンテストは幾つか開催されているが、“海”を舞台にしたロボットコンテストは世界でも珍しい」(主催者)という。
陸上から海中のロボコンを遠隔操作する「ROV(Remotely Operated Vehicle)部門」、ロボットが自律的に動きゴールを目指す「AUV(Autonomous Underwater Vehicle)部門」、新技術やアイデアの内容を競う「フリースタイル部門」の3部門に分かれて実施される。今回は、九州・沖縄地域の大学や職業能力開発大学校を中心に、合計11チームが参加した。
いかんせん「海中」のロボット競技なので、陸上からはロボットが動いている様子がほとんど分からない……という取材者泣かせのイベントだったが、できる限りの写真と詳細レポートで、各部門を勝ち上がったロボットの特徴やイベントの雰囲気をお伝えしたい。
主催者によれば、2017年には第3回を開催するとのこと。興味のある企業や大学の皆さんは、本稿で雰囲気をつかんでいただき、参加を検討してはいかがだろうか。
※1: 主催は、沖縄海洋ロボットコンペティション実行委員会、琉球大学地域連携推進機構
「海水」「潮」「波」――海ならではの課題にどう挑む!?
海洋ロボコンの競技内容や結果を紹介する前に押さえておきたいのが、陸上のロボコンと海洋ロボコンの違いだ。
モーターを制御して操縦者の意図通りにロボットを動かしたり、ロボットの状態を各種センサーで監視し、その情報を基に動きを制御したりするといった点は、陸上のロボットと何ら変わらない。ただ、海中という環境がロボット開発や操作を一気に難しくする(図2)。
まず考えなければならないのが、「防水性」や「気密性」の確保である。海水がわずかでもロボット内部に入り込み、回路基板や電源に触れてしまうと、すぐに故障してしまうからだ。
「真水なら回路基板がぬれても復活する可能性があるが、海水だと回路がショートして一気にダメになってしまう。真水と海水の違いは大きい」(主催者)という(図3)。実際に今回の競技でも、筐体が破損して海水が内部に入り込んでしまい、ロボットが動かなくなってしまったチームもあった。
海中ではロボットの周囲の環境が刻々と変化
次に、潮の満ち引きで生まれる潮や波によって、ロボットの周囲の環境が刻々と変化することも、陸上とは大きく異なる。
陸上から海中のロボットを人が操縦する「ROV部門」では、制御信号をロボットへ送るのにケーブルを使っているチームが多く見られたが、このケーブルがくせ者だ(図4)。潮や波の力でケーブルが引っ張られると、ケーブルにつながったロボットの動きに影響を与えてしまう。推進力の小さなモーターを使っていると極端な場合、潮や波の力がモーターの推進力に打ち勝ってしまい、前に進むどころか潮や波に流されてしまうことになりかねない。そのため、浮き輪を付けるといった対策が必要になる。
一方、人が操縦せずに自律的に動いてゴールを目指す「AUV部門」に参加するロボットは、潮や波の影響を受けたときにも安定状態を保ちつつ、狙った地点へ推進させる制御技術が重要になる。
「重力と浮力のバランスをうまく取ってロボットの姿勢を安定させた上で、潮や波がある環境で、意図した通りに動かす。海洋ロボットに求められる動作だが、これがなかなか難しい」(主催者)という。
この他、海洋ロボットでは、海中を撮影するカメラを内蔵するケースが多い。海中の様子や目標となるブイをカメラで見つつ、目的地まで操縦するためだ(図5)。ただ、沖縄の海といえども、雨が降った後などは海中の透明度が極端に悪くなる。ロボットを作り込む技術とは別の観点ではあるものの、競技に勝つためには操縦スキルや運用スキルも大切になるとのことだ。
潜航/浮上を繰り返しゴールまでの時間を競う
ここで、競技ルールを簡単に説明しておこう。筆者は今回初めて海洋ロボコンを取材したのだが、正直なところ競技ルールが難しく感じた。陸上からはロボットが動いている様子が分かりにくいため、どうしても競技ルールと実際の状況を対応させにくい(図6)。基本的には、規定通りに潜航または浮上しつつコースを進み、ゴールするまでの時間を競う。
具体的な決勝トーナメントのルールは以下の通り。
ROV部門:
10m離して複数設置されたブイを目印に蛇行するように進み、ゴールまでの時間を競う。ブイに到着するまでは潜航状態で進み、ブイに到着したら浮上するというように潜航と浮上を繰り返す必要がある(潜航と浮上のタイミングは規定されている)。
AUV部門:
10m離して並べられたブイの間を進み、スタート地点から数十m離れた中継ブイに到着したら、そこから反転してゴールブイまで進むというコース。途中、潜航と浮上航行を繰り返す必要がある(潜航と浮上のタイミングは規定されている)。
競技は、「プレゼンテーション」と「実機競技」の総合点で勝敗が決まる。プレゼンテーションの配分は20点、実機競技の配分は70点。残り10点は、「着水時の動作」や「潜水が可能かどうか」「航行開始時の動作」「面白い動き」といったように海洋ロボットならではの観点で特別点として与えられる。
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