SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016 講演レポート
国内ベンチャーが目指す「スーパーカブ」のようなロケット開発(3/3 ページ)
小さな荷物を宇宙に届けるロケット打ち上げサービス
インターステラテクノロジズが手掛けるプロダクトは、観測用ロケットと超小型人工衛星用ロケットである。観測用ロケットは最高高度約120km(宇宙空間)まで打ち上げて、パラシュートで地上に落下させるタイプ。こちらは2016年度中に第1号機を打ち上げる計画だという。そして、超小型人工衛星用ロケットについては基礎開発に着手しており、初号機を2020年ごろに打ち上げたい考えだとしている。
超小型人工衛星用ロケットがもたらすメリット
H-IIAロケットやイプシロンロケットは全長20~50数m程度あり、運べる荷物の量(ペイロード)も、H-IIAで10トン、イプシロンで1.2トンと十分な容量を確保している。しかし、打ち上げ費用はH-IIAで100億円、イプシロンで40億円といわれており、超小型人工衛星などを運ぶ際に掛かる輸送コストが非常に高額となる。これに対し、インターステラテクノロジズのロケットは小型であるためペイロードの面で1桁劣るが、「その分、費用の面でも1桁小さく打ち上げできる。今まではどんなに小さな荷物でも大きなロケットしか選択肢がなかったが、われわれは将来的に、小さな荷物を専用で運ぶロケット打ち上げサービスを提供する考えだ」と稲川氏は述べる。
また現状、“相乗り”という形でメインとなる人工衛星とともに、複数の人工衛星を宇宙まで運んでいるが、これだとメインの人工衛星の打ち上げが大前提であるため時期が選べなかったり、行き先に当たる軌道を自由に選べなかったりと、デメリットが多くあった。これに対して、インターステラテクノロジズのロケット打ち上げサービスでは、1回の打ち上げコストが安いだけでなく、1社独占で打ち上げできるため打ち上げ時期を選択でき、希望する軌道へピンポイントに打ち上げることが可能となる。「手軽に低コストで、ロケットを打ち上げることができれば、超小型人工衛星を開発するベンチャー企業もよりチャレンジングな取り組みが行えるようになるだろう」(稲川氏)。
観測用ロケットの初号機は最終調整段階に!
一方、2016年度の初号機打ち上げを予定している観測用ロケットは全長10m程度、総重量1t弱で、「MOMO」と名付けられている。一般的に日本のロケット(液体ロケット)は推進剤に液体水素を利用するケースが多いが、MOMOはエタノールと液体酸素が用いられている。「2つの燃料、エタノールと液体酸素をロケットエンジンに入れて燃やす。原理は非常にシンプルだが、打ち上げのためには非常に高度なノウハウが必要となる。約3000℃の炎が出るため、燃焼と同時に冷却についても考えなければならない。周りに悪影響を及ぼさずに安定した燃焼を継続できるかが重要だが、これが非常に難しい。現在は開発のめどもつき、今まさに観測用ロケットのエンジン開発の最終調整を行っているところだ」(稲川氏)。
また、資金調達も民間企業ならではの取り組みをしている。まず、クラウドファンディングによる資金調達だ。2カ月間実施して2270万円の資金調達に成功したという。さらに、ロケットの外装面のスペースを広告枠として提供している。協賛企業のDMM.comのロゴを機体に印字して打ち上げる予定だ。また、「過去に実施してきた打ち上げ試験でもグリコから依頼があり『ポッキー』柄のロケットを打ち上げたこともある(2013年)。イベントやプロモーション目的でのロケット利用は民間企業だからこそできることだ」と稲川氏。
インターステラテクノロジズが目指すのは、誰でも気軽に利用できるロケットの打ち上げサービスだ。安価な部品で必要十分な機能を搭載したロケットを大量生産することで徹底的な低コスト化を目指すとしている。「SpaceXが取り組む再使用打ち上げ可能なロケットの方が打ち上げ費用を抑えられるのでは? と思われるかもしれないが、ロケット開発では検査・点検に多くのコストが掛かる。機体を再利用できるようになってもコストを大幅に下げることは難しいだろう。それよりも1回切りの使い捨てのアプローチの方が効く。ロケットといえども1つの工業製品だと捉え、大量生産してコストを徹底的に抑えることで、強みを発揮していきたい」(稲川氏)。
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