CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き(4)
デスクトップ仮想化「導入までの流れとポイント」【後編】(1/3 ページ)
設計・解析の現場でも、デスクトップ仮想化の一方式であるVDIに対する関心が高まっている。連載「CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き」では、VDIの基礎解説や導入メリット、運用ポイントなどを分かりやすく解説していく。第4回は前回の続きとして、実装方針の策定と検討の最終確認作業となる導入前検証について取り上げる。
はじめに
前回お届けした【前編】では、導入前検討での3つのポイントのうち2つを紹介した。今回は残りの1つとなる“実装方針の策定”を紹介する。さらに、検討の最終確認作業となる“導入前検証”についても説明しよう。
3つ目のポイント:設計環境への導入では一番重要! 実装方針を決めよう
3つ目のポイントは“実装方針の策定”だ。設計環境ではGPUやCPUを酷使する重たいアプリケーション群を、ストレスなく動作させることが求められる。このため、(1)GPU実装方式、(2)デスクトップ仮想化実装方式の2つのステップで実装方針を策定する。
(1)GPU実装方式の検討:主流の実装方式は3つ
a.パススルー:GPUを1台の仮想マシンで占有する方式
b.vGPU:GPUを複数の仮想マシンで共有する方法
c.物理実装:仮想化を使わず、ワークステーションに搭載したGPU(*1)やCPUに内蔵されたGPU(*2)を占有利用する方式
*1:設計環境の共有利用を目的とし、ワークステーションを集積して利用する場合。設計環境におけるデスクトップ仮想化導入の過渡期に行われることがある。
*2:近年ではデスクトップ仮想化向けの高集積型ブレードサーバ(4.3Uで180ユーザーをホスト)が販売され、本方式の主流となっている。
GPUパワーと運用性を両立する場合はa.の「パススルー」を検討する。この方式はGPUを占有利用するため、デスクトップ仮想化環境に移行した際のパフォーマンスの予測が比較的容易である。
GPUに対する費用対効果を優先するのであればb.の「vGPU」を検討する。この方式はGPUを共有利用する仮想マシンの台数によって実際に利用可能なGPUパワーが決まる。表1を参照し、現在利用中のGPUと実際に利用可能なGPUを比較することが、机上検討の早道だ。実機でのパフォーマンス確認は次の作業である導入前検証で行う。
既存ワークステーションを利用し、手っ取り早くデスクトップ仮想化に取り組むのであればc.の「物理実装」が良い選択肢となる。この方式はワークステーションをかき集めてデスクトップ仮想化ミドルウェアで統合するだけで実現が可能だ。ワークステーションに内蔵されたGPUを占有利用する。このため、搭載するGPUパワーがそのまま利用できる長所があるものの、データセンターの場所を取る、管理性が悪いなどの短所を同時に持つ。
CPUにGPUを内蔵した高集積型ブレードサーバであれば、コンパクトな導入が可能であるが、ハイエンドCADなどの重たいアプリケーションを稼働させるためには荷が重い。2D CADによる設計、3D CADの参照といった低~中負荷向きである。
(2)デスクトップ仮想化実装方式の検討
連載第1回「デスクトップ仮想化とは?」で、デスクトップ仮想化の3つの実現方式について紹介した。設計環境に導入する場合は、GPU実装方式の制約からVDI(Virtual Desktop Infrastructure)もしくは物理実装となる。
- パススルーおよびvGPUの場合はVDI:
仮想基盤上にクライアントOSが稼働する仮想マシンを配置し、利用者ごとに割り当てる方式。複数の利用者で同一OS/アプリケーション環境を割り当てる共有型と、利用者ごとに独立したOS/アプリケーション環境を実現する個別型の2つの運用形態を持つ - 物理実装:
本方式も共有型、個別型両方の運用形態を持つ
パススルーおよびvGPU共に取り得るデスクトップ仮想化実装方式はVDIとなる。前回2つ目のポイントとして紹介した“グルーピング”が成功していれば、管理性に優れる共有型での運用が可能だ。利用者ごとの独自性や自由度の確保が優先事項であれば個別型となるものの、トラブルシュートやデスクトップの維持管理といった運用面の課題を生むことに十分留意されたい。1つのデスクトップ仮想化システムでの両運用形態の混在は可能だが、総所有コストの削減やセキュリティガバナンス確保の観点からも極力共有型での運用を勧める。
物理実装は、ワークステーションの集合体であるため、仮想化による簡便なデスクトップ環境の生成/更新といった恩恵にあずかることができない。管理のためにはPCの資産管理系ソフトウェアを利用することになる。このため、共有型、個別型どちらでも運用性に大きな差異はないものの、前述の通り設計環境の共有利用を目的としているのであれば、共有型で運用する必要がある。
(1)(2)の2つのステップで実装方針を仮策定するとともに、机上レベルでハードウェアのサイジングを行う。これらの机上検討の実業務環境への適合を確認する作業が、次の“導入前検証”である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
CAD、CAE環境をVDIへ移行するための手引き
設計・解析の現場でも、デスクトップ仮想化の一方式であるVDIに対する関心が高まっている。連載「CAD/CAE環境をVDIへ移行するための 手引き」では、VDIの基礎解説や導入メリット、運用ポイントなどを分かりやすく解説していく。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[デスクトップ仮想化][VDI][CAD][CAE][導入][運用][移行]
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー