大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
MIPS Openの終焉、好対照のRISC-V(2/3 ページ)
好対照なRISC-V
そのMIPS Openの終焉と好対照をなしているのがRISC-V。こちらの記事にもちょっと書かせていただいたが、とにかく参加企業の熱意がすごい。米国企業だけでなく、台湾やロシア、もちろん韓国/中国の企業も取り組んでいるし、シンガポールのNUS(シンガポール国立大学)もRISC-V Foundationに加盟しているなど、非常に広範な地域にわたってエコシステムが立ち上がろうとしている。そんな訳で前途は洋々(とか書くとそんなことはない! とRISC-V Foundation CEOのCalista Redmond氏に怒られてしまいそうだが)なRISC-Vであるが、トランプ政権における中国への禁輸というか、Huaweiへの締め付け(この話はこちらの記事でまとめさせていただいた)は対岸の火事とは映らなかったようだ。最終的には解除されたものの、一時期はArmがHuaweiとの取引を全面的に中断する、なんて騒ぎになったのは、コアの一部にアメリカで開発されたものが入っている可能性があるから(Armはテキサス州オースチンにも開発拠点を構えている)という理由であった。
これは、単にArmだけの問題でもないし、トランプ政権だけの問題でもない。もともとRISC-Vの命令セットはRISC-V FoundationにContributeされており、しかもRISC-V Foundationは非営利組織で、かつRISC-Vの命令セットを無償で公開しているから、「仮に輸出制限が掛かったとしてもわれわれには影響ない」(Redmond氏)という話だった。ただ、「米国の非営利組織が、他国が不当な利益を得る手助けをしているのはまかりならん」という無茶なロジックが今後成立しないという保証はどこにもないし、さらに言えばこれは米国だけの問題ではない。どこの国に拠点を置いても、こうした問題が出てくる可能性がある。厄介なのは、選挙などで政権が変わった瞬間、いきなり言ってることが変わる、という実例は枚挙にいとまがない。なので「今」は大丈夫でもこの先どうなるか分からない、という事になる。
それもあって、11月末にRISC-V Foundationは拠点をスイスに移動することを決める。これに関してプレスリリースそのものは出ていないが、こちらのページの下の方にある“Future Transition”に、
Switzerland incorporation alleviates geo-political uncertainty and reduces the likelihood of competing RISC-V standards
というメッセージが2019年11月末に追加された。要するに地政学的リスクを最小限にするために、永世中立をうたうスイスに法人を設立、ここを新しい拠点に切り替えるという話である。あくまで「最小限」であって、ゼロにはならない(理論上は、スイスが突然政策を切り替える可能性もゼロではない)が、現状では一番妥当な選択ということだろう。
新しいCPUの命令セットなど政治から一番遠い所に居そうなものだが、実際にはここまで考えないといけない、というのが昨今の状況を表している気がする。
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