大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ファーウェイ、生き残るための“次善の策”(1/2 ページ)
エレクトロニクス/組み込み業界の動向をウオッチする連載。今回は、2019年5月の業界動向の振り返りとして、2018年末から話題となっているファーウェイを巡る話を紹介する。
今月はファーウェイ(華為技術、Huawei)の話をしたいと思う。
ファーウェイを巡る話は、端末側については既に多くの記事が出ており、これらをお読みになった方も多いと思う。大本というか、発端になったのはおそらく2018年12月ごろに話題になった、「ファーウェイの機器に『余計なもの』が入っている」という報道だと思われる。これに先んじて2018年10月には、米Bloombergが中国で生産されたSupermicroのマザーボードにバックドア用のマイクロチップが埋め込まれていたと報道されており、当初はファーウェイの報道もこれに続くものかと思われていた。ただ2018年12月には孟晩舟CFOが逮捕されるなど、いきなり状況は激化しており、2019年5月15日には米トランプ大統領が大統領令13873に署名。これによりファーウェイとその子会社は米国関連企業との取引が一切不可能になってしまった。
この影響についても、やはり多くの記事が出ている。西田宗千佳氏の記事が筆者の考えているものに一番近いと思うし、その5Gのインフラ周りについてはタイムリーな座談会もある。要するにファーウェイを痛めつけたところ、結果として結構な返り討ちを食らう羽目になっているという話だが、そのあたりは座談会記事にお任せするとして、ではファーウェイはどういう手が取れるのか? という話を少しご紹介したいと思う。
ファーウェイが用意する“プランB”とは?
既に今回の騒ぎは、単なる企業に対する制裁のレベルを超えて米国と中国の貿易戦争の域に達しており、既にファーウェイ単体でどうこうできる話ではなくなりつつある。もちろん2018年のZTEの時の様に、制裁金などで落ち着く可能性もないとは言えないし、それが恐らくファーウェイにとっては一番無難なプラン(プランA)だと思うが、そうならない可能性ももちろんある。それに備えて次善の策としてプランBを用意する、というのは軍出身の任正非氏(ファーウェイ創業者)にはごく自然な選択肢だろう(別に人民解放軍に限った話ではなく、どこの軍隊出身でもそういう選択肢を必ず用意すると思う)。
さて、ではファーウェイのプランBとは何か? といえば、このまま米国の制裁が続く状態でも現在のビジネスを継続するために必要な「モノ」をファーウェイ自身で賄うことである。そう考えたときに、どんな「モノ」が必要か。同社はスマートフォンだけでなく基地局のインフラのビジネスもかなり大きい(というか、基地局インフラの方が下手をするとビジネスとしては大きいだろう)訳で、まずこれを何とかする必要がある。具体的に言えば、基地局で利用するプロセッサを何とかしなければならない。これまではそれこそIntelのXeonをベースに構築されてきたが、大統領令のおかげでXeonは使えなくなってしまったし、もちろんだからといってAMDのEPYCという訳にもいかない。
同社は2019年のCESで、ArmのNeoverse N1を利用したKunpeng 920を発表したが、残念ながらこれに利用するProcessor IPを含む全てのIPが現在利用できなくなっている。ArmはライセンスそのものをSuspend(これの正確な意味をCOMPUTEXの際にArmのVPに確認したのだが、あまりに政治的過ぎるとして答えてもらえなかった)しており、仮にファーウェイが契約の問題をぶっちぎっても、TSMCが製造を拒否するだろう。なぜかといえば、Neoverseで利用されているArmのPOP IPやPhysical IPは、TSMCがArmとFoundry License契約を結んだ上で製造受託を行っており、Armとの契約がSuspendされた顧客に対して、POP IPやPhysical IPを利用したチップの製造は不可能と思われるからだ。TSMCはファーウェイからの受託そのものを拒否するつもりはない(大統領令13873の解釈にもよるが、TSMCは米国製の半導体製造装置を利用してファーウェイ向けのチップを製造すること自体は、大統領令に反しないとしている)訳で、要するにArmのIPを使わずにサーバ向けプロセッサを作る必要がある。
まずプロセッサコアをどうするか? 可能性としてはMIPSおよびRISC-Vがある。MIPSに関しては既にLoongsonシリーズがある、という話は以前こちらでご紹介した通りだ。Loongsonはファーウェイとは直接の関わり合いはないが、なにしろもともとはCAS(中国科学院)傘下のICTが始めたものだから、不可能という訳ではない。おまけにMIPSそのものがMIPS Open Initiativeとしてオープン化されてしまったから、これに準拠する形でCPUコア作り上げる事はファーウェイ(というか、その傘下のHiSilicon)の技術力からすればそう難しい事ではないだろう。極端な話、Loongsonを買収してしまってもよい。別にLoognsonを買収しなくても可能(何しろアーキテクチャの仕様書は既に公開されている)だが、実装にはそれなりの時間が必要になる。現状Loongsonの龍芯3A3000/3B3000シリーズは28nm FD-SOIでの設計になっているから、これを例えばTSMCの7nmに持ち込めばコア数を相当増やしつつ、若干の動作周波数向上も可能だろう。これに要する時間は1年ではちょっと厳しいだろうが、2年は掛からないと思われる。後述のRISC-Vベースでもそうだが、スクラッチからCPUを構築するのは(特にサーバ向けの場合)、平均4~5年ほど必要になる。それまでの間のつなぎ、としてLoongsonの設計を利用するのはかなり可能性が高いと思われる。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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