大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
ファーウェイ、生き残るための“次善の策”(2/2 ページ)
もう一つの可能性「RISC-V」
可能性のもう一つはRISC-Vである。性能とか将来性でいえばこちらの方が可能性は高いのだが、いかんせん現状RISC-Vはコントローラ向けとかに広く使われている段階で、スマートフォンのようなアプリケーションプロセッサですらこれからであり、サーバ向けはさらにその先となる。その意味では、MIPSベースよりもさらに時間を要する。まずはクライアント向けという感じだろうか。
余談ながら、サーバには不要なもののクライアント向けにはGPUコアが必要である。これについては、Imagination Technologiesが中国政府系投資ファンドであるCanyon Bridgeの子会社であるCBFI Investment Limitedに買収されており、会社としては引き続き英国にあるものの、そういう意味では中国からのリクエストは通りやすいし、大統領令にも影響されない(Armと異なり米国の開発拠点を持たないので、大統領令に該当する製品が存在しない)から、PowerVRベースのGPUの入手は容易だろう。
話を戻すと、その他のさまざまなIPに関していえば、同社は既に経験を積んでいる。もともと2014年にHiSiliconはCortex-A57を32コア集積したサーバ向けチップを試作しているが、この際にI/O側は28nmで製造されており、これはHiSiliconが自前で製造したものである(CPU Chipは16nmで、CoWoSを利用したマルチチップ構成)。この後も同社はさまざまなサーバ向けチップを手掛けており、その意味では周辺回路そのものの構築にはあまり心配は要らない。
もちろん基地局を構築するにはサーバ用CPUだけあっても駄目で、ネットワーク関連コンポーネント(100G Etherに対応するPHYやSwitch、Acceleratorなど)も当然必要になるが、こちらはむしろハードウェアというよりもソフトウェア側の問題の方が大きいだろう。例えばファーウェイはOPNFV Verificationを最小に取得したベンダーの1社であるが、このVerificationのターゲットとなるハードウェアが利用できなくなる(というか、新しいハードウェアにOPNFVを自前で移植しないといけない)といった作業が発生するからだ。OPNFVだけでなく、さまざまなソフトウェアが当然対象になるし、ドライバとかミドルウェアの用意も必要だろう。もっと言えば仮想化ソフトの移植が最初の難関であり、このあたりが(バージョンがやや古いとはいえ)一応存在するMIPSアーキテクチャの方が、短期的にはRISC-Vよりはサーバ向けには適していると筆者は考える。長期的に見れば当然RISC-Vもサーバ用途を目指しており、これに向けてソフトウェアの充実を図ろうとしている最中である。なので、ソフトウェアの準備ができ次第、MIPSからRISC-Vにトランジションしていくというシナリオが当然考えられる。
ちなみにクライアント向けであるが、こちらはAndroidをベースにした独自OSは比較的簡単に準備できる。Googleはファーウェイ向けAndroidのライセンスを停止したが、これはGMS(Google Mobile Service)のライセンスであって、そもそもAndroidそのものはOpen Source Projectなのでファーウェイは引き続き問題なく利用できる。ただし、GoogleのPlay StoreとかGmail/Google Map/Google Chrome/etc...のGoogleが提供するアプリケーション、セキュリティパッチなどは一切提供されなくなるので、こうしたものを全て自前で提供していく必要がある。ただ、そうしたことが現実問題として不可能か? というとそうでもなく、実際に中国のOnePlusが自社製品に提供しているOxygenOSは、Open Source版のAndroidをベースに、自社で必要なコンポーネントを全て提供するという形でリリースされている。ファーウェイに同じことができないとは思えない。
ということで、一見割と何とかなりそう(もちろん今すぐは無理だが、それに備えてファーウェイは半年分くらいの在庫を既に抱え込んでいるそうで、それで時間を稼ぎつつその間にMIPSあたりをベースに代替ソリューションを構築する)に見えるプランBだが、実は1つだけ致命的な問題がある。
Interconnectがない?
ここまで言及してこなかった話であるが、根本的な問題として、ArmからのLicenseがSuspendされた結果として、恐らくInterconnect IPが利用不能になっている。SoCにおけるInterconnectの重要性は、ちょうどタイムリーな記事が上がっていたので繰り返さない。皮肉なのはこの記事の著者であるKurt Shuler氏が所属するArteris IPは、その顧客としてHuawei/HiSiliconをラインアップしているのだが、そのArteris IPもまたアメリカの会社であり、当然大統領令の対象になる。Arteris IPが使えず、(ArmのライセンスがSuspendされているから)標準的なAXI/ACEとかAHB/APBすら使えないとなると、同社がこれまで自社で開発してきた周辺回路のIPとかもそのままでは利用できない事になる。HiSiliconはまず自社でInterconnect IPを開発し、次いでさまざまなIPをそのInterconnectにあわせて修正して、初めてSoCの開発が始められる、というちょっと悲惨な事になりかねない。Huawei/HiSiliconがこのあたりまで想定してプランBを用意していた(つまり代替用の独自Interconnectを開発していた)とかいう事でもない限り、開発はかなり大変なものになるだろう。
ただ個人的な観測で言えば、ファーウェイは逆境に異様に強い会社であり、今回の騒ぎで大幅に売り上げを減らし、規模も小さくなるかもしれないが、それでも生き残る方にカシオミニを賭けてもいい。そして生き残ったファーウェイは、それこそ米国のコントロールを一切受けない、非常にタフな会社になるだろう。このあたりは倒産寸前まで行ったZTEとちょっと違うシナリオになると思われる。そういう意味では、今後のファーウェイの動向は真剣に注目に値するだろう。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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